短いプロットを100本作って(できる限り)公開することに挑戦するーー大塚英志『物語の体操』(朝日文庫2003年)を利用して

これから始めること。それは、タイトルに書いた通りです。短いプロットを少なくとも100本作るという試みである。何の生産性もない。収入にもならない。私はこういう試みの方が燃えてくる。完全な現実逃避。本当、役立たずである。

1 長々とした言い訳

ただ、それだけではない。私は、それなりにインプットを重ねてきたと思う。ただ、そのインプットは、知識レベルに留まっているなという感覚はある。例えて言えば、ある程度きちんと棚に分類されているだけで、死蔵されているようなものだ。

それではどうするか。それらの知識をアウトプットすればいい話である。しかし、ただ闇雲にアウトプットすればいいというわけではない。それならば、ある程度行ってきた。重要なのは、それらの知識をつなぎ合わせて、自分なりに、一つの意味体系を作り上げることだと思う。そうやって、知識をつなぎ合わせるところに、自分の思想が現れるのだと思っているからだ。

物語を作るというのは、溜め込んだ知識を総動員して、一つの体系を作り上げていく営みでもある。現実的にやや即して言えば、難関資格の論述試験などは、このような営みではないだろうか。インプットした知識を総動員して、課題に即した「物語」を記述するのだから。

脇に逸れた。自分の知識を総動員して、一つの物語を作り上げていく営みは、実はほとんどの人が無意識に行っている営みなのだ。ただ、私は、それを怠ってきた。何より、「自然と」一つの物語を生み出してしまう「天才」ではない。だからこそ、短いプロットを少なくとも100本作るという、言うなればリハビリテーションのようなことを始めるのだ。現実に行動する前に。って、いつもの言い訳ですね。

2 どのようにプロットを作るか

私は、かなり方法論にうるさい。様々な文章術や小説の書き方の本を読んできた。しかし、なかなか納得できるものに巡り合わなかった。そこで、これ以上探すのをやめることにした。紆余曲折を経て採用したのが、副題に挙げた、大塚英志『物語の体操』(朝日文庫 2003年)である。

本書は、かなり昔に、ブックオフで110円で入手した。まとめ買いした1冊である。なぜ購入したのかは、よく覚えていない。本書の読後の評価は、置いておこう。本書の特徴は、かなり身も蓋もないということである。なぜならば、本書が目指しているところは、文学史に残るような小説家を生み出すことではないからである。つまり、プロとして生活してはいるが、文学史には見向きもされない「泡沫作家にはなれる」ことを目指しているからだ。

そこに挙げられているレッスンは、ほとんどの指南書にあるような「正統派の」レッスンではない。比較的手軽に実行できるレッスンが並んでいる。小説家を目指す気は(ほとんど)ない私にとっても、実行しやすいレッスンが多いと判断したのだ。本書の副題には、「みるみる小説が書ける6つのレッスン」とある。今回は、そのうち一番最初のレッスンを採用することにした。この後のレッスンは、意外とまどろっこしく、私の性格と今回の狙いには合わないと考えたからだ。

そのやり方は、タロット占いを流用したような方法で、プロットを100本作るという課題である。

3.具体的なやり方

①24枚のカードを用意して、単語を記す。それを裏返しにしてから、6枚引いていく。
②次に、カードを6枚引く。それを、引いた順番に従って「役割」を与える。
③そして最後に、その「役割」に従い、プロットを「1本10分」で作り上げていく。

文章で書き記せば、こんな感じだろうか。つまり、「1本10分」で100本プロットを作るという、小説家養成千本ノックだ。ただ、私自身は、繰り返すが、小説家になろうという気は(ほとんど)ない。それだけに時間を使う気はないので、もう少し緩くやろうと考えている。だから、私は、ダメなんだが。

もう少し、細かくルールを説明しよう。カードには、タロットカードのごとく、上下がある。例えば、引いたカードが「幸運」だったとしよう。上下順当に出たら、そのままこのカードは「幸運」を意味する。しかし、上下逆に出たら、このカードは「幸運」の反対、「不運」を意味することになる。

次に、カードが持つ役割である。それは、引いた順番に、①主人公の現在②主人公の近未来③主人公の過去④主人公の援助者⑤主人公の敵対者⑥物語の結末、となる。

例を挙げてみよう。①意思↓②解放↑③調和↓④幸運↑⑤節度↓⑥誓約↓だったとしよう(↓は、逆向きということを表している)。

すると、過去に「調和を失っていた」主人公は、現在「意思がない」状態だ。近未来に「解放」が起きるが、「幸運」に助けられ、「節度ない」何かに邪魔されて、最終的に「誓約を失う?」ことになる。そういうプロットを、1本10分で、100本作れということだ。

4.実際始めてみて

実はもう、開始している。その感想としては、カードにより「役割」が与えられていても、「1本10分」は至難の業だということだ。物語を書く「天才」というのが、どういう人々なのか痛感せざるを得ないのだ。

具体的に言うと、いくら与えられていても「6つの役割」に、一つの物語を見出すのは困難だということだ。そのうち3つ、多くて4つくらいまでならば、何とかひねり出すことができることもある。しかし、そこから、5つ、6つと「役割」が増えていけばいくほど「矛盾」が露呈してしまうのだ。

少なくとも「プロ」ならば、課題が与えられれば、プロットレベルならば、10分で作ってしまう。「天才」ともなると、そんな小手先のテクニックなしに、湯水のように物語を生み出してしまうのだろう。私が、そのいずれとも、はるかにかけ離れたレベルであることはよく分かった。私は、職業作家にはやはりなれるわけがないことが判明した。

それでは、なぜ今この無意味な営みに取り掛かっているのか。それは、最初に述べたように、今現在の私は、現実逃避したくてうずうずしているのだ。できる限り、現実から遠ざかりたい。それだけである。身も蓋もない、クズな理由である。だから、その後で、長々と言い訳しているのだ。

5.今後の展望

飽きない限りは、100本を目指してプロットを作っていこうと思っている。それくらい、私は、現実を見たくない。ただ、わざわざここで、そのことをお伝えしているということは、作ったプロットを「迷惑を顧みず」公開しようという考えが一応あるということだ。

ただ、プロットを1本作るだけでも、かなり時間を使っているのも事実だ。パソコンを持ち歩いていないので、プロットはノートに書いている。公開するためには、それをパソコンに打ち込まなければいけない。正直、それは、二度手間であり、かなりめんどくさい。そもそも、誰も、そんな「ド素人プロット」を読むことなんぞ望んでいるわけがない。必要性も全くない。むしろ、迷惑であろう。

だから、結論から言うと「適宜」公開していくという形になろう。ただ、結論から言えば、「公開」に踏み切ったということは、自信があるからではなく、「現実逃避」の気持ちが非常に強く働いているからだということは、付け加えておく。私の「現実逃避」に付き合わされるのだから、本当にいい迷惑である。

付録1.一応、他のレッスンも紹介しておく。

■「盗作」する。村上龍氏の小説を読んで、2,000字くらいにプロットとして要約する。次に、このプロットに従って、2000字くらいの物語を「作る」。

これは、村上龍氏の小説を読まなければいけないので、却下。

■与えられたキャラクターに即して、大塚氏が提示した「行為者モデル」に即して、プロットを作る。本書では、大塚英志『黒鷺死体宅配便』のキャラクターを使用することになっている。

これは、課題として与えられた大塚氏のキャラクターに馴染めないので、却下。

■村上龍氏になりきって小説を書く。勝手にまとめると、村上龍『5分後の世界』の世界観を利用して、二次創作を行うことらしい。

これは、同文。

■???。どこにも書いていない。目を皿のようにして読んでみると、④をくり返して行うことで、①~③のように「構造」に従って物語を作るのではなく、自らの「世界観」「主題」を発見しなさい、ということかもしれないし、そうでないかもしれない。

これは、④の延長線上にあるレッスンのようなので、同じ理由から却下。

■つげ義春氏の短編マンガ「退屈な部屋」を読んで、ノベライズ化する。

実は、これが一番興味ある。正直、つげ義春氏の作品にも苦手意識はない。ただ、課題がこの作品でなければいけないのかという「素直ではない」理由から、今回は「保留」。たぶん、この素直さの欠片もないところが、一番ダメなのだろうが。

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