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壮年のすべて。#20240304

 真冬のピークが去った。天気予報士がテレビで言っているかは知らない。なぜなら我が家のテレビは先々月に息を引き取った。10年以上は使われていたはずなので大往生だろう。葬儀(家電リサイクル法に基づく店舗への持ち込みとも言う)は身内のみで執り行われる予定だ。
 実家で余っているテレビを貰い受ける予定ではあるが、明らかに部屋のサイズに合わないほど大きく、若干の躊躇を振り払えないまま2月が過ぎ去った。


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 久しぶりに友人と銭湯へ行った。物価高の影響がこんなところにも出ているようで、平民はお湯に浸かるのにも躊躇せんといかんのかと何となく微妙な気持ちになった。
 そして土曜の夜は超満員、安くないお金を払って喧騒に飛び込んだ自分が馬鹿みたいで、少し考えればわかったはずの光景に溜息が出そうになった。裸眼では生活が儘ならないほどの視力でもわかる肌色、知らない人の知らない話、もう平日の夜しか来ないと誓った。じゃんけんで勝ち、珈琲牛乳を奢ってもらったため心は平穏を得たが、負けていたら発狂していたかもしれない。


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 週末、県外に住む友人が帰って来る。一方私といえばすっかり地元で出迎える立場が板に付いてしまった。幼い頃に夢見た、都会で一旗揚げるなんてプランは人生から消え去っている。
 代わりと言ってはなんだが、地元ではほんのりと顔が知られた飲酒おじさんになりつつある。これで良いのかはよくわからない。でも友人が帰って来る時に、安心して連絡できる地元の者という役割があるなら、それも良いのかもしれない。一旦考えるのをやめることとする。


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 別に病んでいるつもりはない。と、自分でも感情に納得しながら書いていたはずの下書きが、見返してみると感覚を大きく下回る落ち込みっぷりで思ったより中身もない。などということがある。数日しか経っていないのに、まるで学生時代の日記を読み返しているような独特の痛みを感じている。
 駄作の烙印を自分で丁寧に捺し、世に出せないと笑い飛ばす姿はあまりにダサく、なんとも自分らしい。
 「Ctrl」+「A」、そして「Delete」を雑に押し、まっさらな画面に再び適当な文字を打ち込んで、然も最初からこれを書く予定でした、という態度で出来上がったものをネットワークの海にそっと流すのだ。この文章がどうなるか、書いている今は知らないが、あと幾らか文字が積み重なったらひとまず何かしらの形でその海を漂うだろう。どこかの浜辺で見かけたらそっと笑ってやってほしい。


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 少し思い付いた計画を、実行に移すチャンスがあるかもしれないとそわそわしている。しかしながらやらなければいけないことも多すぎて、どれから手を付けて良いかもわからず、終いには帰宅しても気持ちの切り替えが出来ず、日常を消費する堂々巡りに陥っている。停滞したら、停滞した環境で適応してしまう自分が嫌いじゃないのが一番の原因だ。
 右の頬を差し出すので、左の頬まで一発入れた挙句、背中にドロップキックしてくれるような、刺激的な人に出会いたい。


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 いい大人になってもまだ、大事なものが増えていくんだなって思うことがある。

 今日はおめでとうを、君たちに。

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