いつの間にか遠くまで来ていた。
プロ野球。2月のキャンプを球春到来と表現し始めて随分と経つ。
そして今年、まだ3月だがWBCの生んだ熱は球春を超えて真夏のようにすら感じられた。余韻がまだ残るほどに。
好調な打線に、流れを渡さない投手陣、少々不調なメンバーすらご愛嬌と言わんばかりの強さを見せつけ、準々決勝でイタリアを破ってベスト4。日本を離れアメリカでメキシコとの準決勝、涙涙の大逆転勝利。
俄然熱を帯びるファンの空気感がテレビを通じて伝わるアメリカとの大一番、先制されて落ち込みかけたムードを切り裂く村上選手貫禄の大ホームラン。ヌートバー選手、意地の勝ち越し打点。岡本選手中押しホームラン。最後は日本が誇る超主人公大谷翔平選手の奪三振で締めくくるという、フィクションでも描かないような味の濃いリアル、サクセスストーリーがそこにあった。
ありがとう侍ジャパン、ありがとう野球。正直ちょっと泣いた。
しかし、しかしだ。個人的にはそんな世間の高まりを、少し物悲しい心持ちで追っていたのだ。理由はたった一つ。
同世代、侍ジャパンメンバー0人。
ここで指す同世代と言うのは私と全く同じ学年の昭和63年、64年、さらには平成元年と跨ぐややこしい世代のこと。
激闘の夏だった2006年を皮切りに野球ファン以外にも広く認知されている(と、個人的に信じていたい)面々だ。
元号跨ぐだけでややこしいのに「ハンカチ世代」「佑ちゃん世代」「マー君世代」「プラチナ世代」「88年組」「88年会」と、世代呼称何個あるんだっつーの。とぼやいてしまう程度には粒揃い。
同じ年に生まれたことだけで少し誇れるようなありがたさを感じつつも、よくもまぁここまでクセの強いメンツが並んだもんだと驚き超えて感心してしまう。
と、ちょっと素敵世代アピールしたところで話を戻す。
同世代、侍ジャパンメンバー0人。
何度書いても少しの寂しさと悔しさが入り混じる。
わかっている。前回、前々回のWBCや日米野球の選抜には中心選手として招集されていたハンカチ世代の面々も来年度は35歳、言うなればベテラン選手。
WBCに合わせて調整を行えば、シーズンを戦うためのプランは狂うだろうし、そもそもの話だがそれを補える若さも失いつつある。坂本や柳田は実際コンディションが上がらないことで辞退したわけだし。
既にMLB・NPB合わせても同世代の現役は20人を下回った。考えたくはないがあと5年もすれば1人残らず引退してしまっている可能性だってある。我々の世代はついにその域に踏み込んでいくのだ。栄枯盛衰と言うべきか、盛者必衰と言うべきか。
2006年の暑くて、熱くて、一瞬で過ぎ去った夏が忘れられない。燻る夏を抱えて、燃え上がる夏を羨んだ。
同じ時間を過ごして、燃え尽きることなく次のステージへ進んだやつらが眩しかった。見上げた瞬間、燻ったまま閉じていく道だけが残って、やりきれなくて、どうしようもなかった。
灼けた砂と汗と血の味は悔しさと一緒に遠い記憶になっていくけど、プロでまだやっている彼らをみるとどこか力が湧くような気がする。
まるで蟲毒のように才能と努力が鎬を削り、その上澄みが生んできた熱が消えるまでを見守っていくのだ。
さぁ、2023年のシーズンが始まった。同世代の星の一人、田中将大が昨日一番乗りで勝ち星を挙げた。
今年もカープを応援しながら、各地に散った星を見つけては思いを馳せるのでしょう。
頑張れハンカチ世代、頑張れ秋山と會澤。あ、あとマエケン。
私も負けずに私の道で頑張りたい。
…………出来る範囲で。
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