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「デコン」のすゝめ──安川康介著『科学的根拠に基づく最高の勉強法』を読む

RightDesignInc.のnoteでは、弊社が携わってきたプロジェクトに限らず、社内の文化もご紹介していきます。今回はRightDesignInc.のインプット文化の一つである「課題書籍」の感想をどう共有しているのかご紹介。職種の異なる全社員が読んだ感想をピックアップしながら、社内でどのような話題が生まれたか、議論の様子を公開していきます。

「課題書籍」の文化とは

そもそも、「課題書籍」とは、弊社クリエイティブディレクター兼CEOの小川貴之により指定された本です。弊社の社内には小川が所持するデザインに関連するものを中心に多数の書籍が置かれています。そんな小川が2週間に一度指定した本を社員が読み、印象に残った文章と共に感想を共有しています。

RightDesignInc.内の本棚の一部

「課題書籍」の文化の目的は、社内の共通言語を増やすことです。RightDesignInc.には、グラフィックデザイナー、WEBデザイナー、インテリアデザイナー、UI/UXデザイナー、プランナーなど、多岐にわたる専門家が集まっています。そのため、デザインという共通の基盤がありながらも、実際の現場で使われる言葉や価値観、知識や事例は各自の専門領域によって異なることがあります。そこで、全員が同じ本を読んで同じ知識と事例を学び、共有する場を設けることで、社員間の共通言語を増やし、日々の業務でのコミュニケーションを円滑にしています。

課題書籍に限らず、RightDesignInc.のさまざまなインプット文化についてはこちらの記事をご覧ください。

5月上旬の課題書籍|「科学的根拠に基づく最高の勉強法」の内容

今回紹介する課題書籍は、安川康介著『科学的根拠に基づく最高の勉強法』です。社内での感想共有の様子を紹介する前に、内容を概説します。

この本は、著者のアメリカでの医師国家試験取得のための勉強経験をもとに、学習の効率と成果を最大化するための科学的に裏付けられた方法を紹介する一冊です。実験・研究結果をもとに、実際の学習に応用できるアプローチを説明しています。

具体的には、記憶の定着を図るための学習技術として、「反復学習」と「アクティブリコール」が紹介されています。反復学習とは、エビングハウスの忘却曲線を根拠として時間を置いて繰り返し学習することで記憶を強化するもの。アクティブリコールについては、学んだ内容を積極的に思い出すことで記憶が強化されることが明らかにされています。ここでは、単に情報を読むだけでなく、自分で説明したり、テスト形式で思い出したりすることも推奨されています。

さらに、モチベーションの維持に関する心理的なアプローチも本書の重要な部分です。目標設定の方法や達成感を得るためのテクニック、自己効力感を高めるための具体的な方法が詳細に説明されています。

では、この本について、社内ではどのような感想や議論が生まれたか、以下でお話しします。

「デコン」という勉強法の提案

感想スライド 一部抜粋

今回の感想共有で最も多く言及されたトピックは、アクティブリコールでした。学習内容の言語化によって効率的なインプットが期待されることが日々の学習に生かせると感じた社員が多く、印象に残ったようです。

あるメンバーからは、「アクティブリコールとは新しい知識を自分のボキャブラリーの範囲で解釈し直すことだと思いました。自分の言葉で言い直すことで、自分の中に落とし込める。その方が記憶が定着しやすいし、他の事例に応用しやすいですよね」という感想があがりました。小川が「それってまさに『デコン』だよね」と応答すると、議論が始まりました。

デコンとは「デコンストラクション(deconstruction)」の略語で、デザインの要素を分解し、その各部分を個別に分析・評価することです。例えばグラフィックデザインでは、文字や画像の内容・配置、色彩の使用などの分析がデコンと言えます。

一つ、デコンの例をあげます。
オーストラリアのデジタル・ヘルスケア企業Compoundのブランディングです。

・ロゴはゴシックなデザインのワードマークと8bit調で描かれたアイコン。
この本来的には相反してる表現の2つを無理やり合体することにより、古い/新しい、ゴシック/デジタルなど真逆の性質のものを併せ持っていることを表現している。
・アイコンのデザインがかなり良い。ワードマークとアイコンで無理やり合体させられていた相反する要素がキレイに一つになったような印象。デジタルとアナログの合体。本来、"デジタル"のみでアイコンを作る場合はピクセルの大きさに変化は出ない。しかし、このアイコンのデザインは印刷時の網点のように、濃淡でピクセルの大きさに変化が出ている。その表現のおかげで全体としてデジタルで精緻な印象を作りながら、アナログのような温かみも同時に表現できている。
・ヘルスケアのブランドとして、先進的でありながら対人コミュニケーションにあるような人肌感を演出できていて、すごく新しくてブランドにとって最適な表現である。
・モバイルのサイトもデジタルな印象でありながらアナログな印象を持っている。レイアウトの余白感であったり、全体に真っ白/真っ黒を使用していない感じであったり。デジタルと網点のちょうど中間的な表現の写真もそれを伝えるのに貢献している。

弊社デザイナーによるデコンの例
参考:オーストラリアのデジタル・ヘルスケア企業Compound


実は、これは弊社のまた別の文化「Daily Input」からの抜粋です。

「Daily Input」とは、コミュニケーションアプリSlackに「Daily Input」チャンネルを作成し、全員がその日に学んだことを感想と共に共有する取り組みです。

内容は最新のブランドデザインやLPのデコンから、読んだ本や記事の内容、聞いたラジオの内容までさまざまです。自分が強化したい分野や直近の案件に関わる内容など多岐にわたります。

ただ、「Daily Input」においてデコンを行っているのは主にデザイナーで、プランナーやビジネスプロデューサー、すなわちノンデザイナーたちはデコンへの馴染みが全くなかったのです。

だからこの感想をあげた社員にとっては、デコン、つまり「デザインを要素分解してその効果や機能を言語化する」ことが新鮮だったのでしょう。

しかし、デコンはビジュアル的なデザインを扱う者だけのものではありません。企画やコピーなどのデコンもまた、考えの引き出しを増やす策として有用です。

「最強の勉強法」を探し続ける

今回の課題書籍の感想共有は、デコンの議論を中心としてこれからの個々の勉強法を考え直す機会となりました。本記事で取り上げた話題は議論の一部で、勉強法の定着・習慣化の方法を勧めあったり、自己効力感や意欲を高める方法について考えたりと、書籍をきっかけにしながらさまざまなトピックについて議論が広がりました。

次回は「『変化を嫌う人』を動かす—魅力的な提案が受け入れられない4つの理由」を読みます。こちらの感想共有の様子も後日掲載しますので、ぜひご覧ください。

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