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未来のためにできること

 アニメ『鉄腕アトム』で育った科学の子の私は科学が未来を作ると信じていたから、70年の大阪万博のテーマ「進歩と調和」やその科学志向の未来論にワクワクしたものだ。公害や自動車事故、今なら熱中症だと思われる日射病が多発していても、ベトナム戦争の混沌が伝えられていても未来は明るいものだった。64年の東京オリンピックでわくわくし、新幹線が開業し、高度経済成長の勢いも続いていて、アポロ11号の月面着陸もインパクトが強くワクワク感をあと推ししてくれた。
 ところが、大阪万博が終わるや中東戦争がありオイルショックで世の中が騒然とし、その未来感があっという間に消滅したのをはっきり覚えている。時代精神というものがあるならば、10歳の私でも、その時代精神に大いに酔っていたと思う。
 そして、気づけば齢を重ねた自分がいて、現在の時代精神は泥沼で足掻いているように見える。国内外の政治や経済、そして人心…どれを見ても、旧態依然とした大人たちが時代精神を泥沼化しようとしているように見える。彼らは泥沼でしか生きてはゆけぬ人たちなのだろう。
 ただ、自由闊達に生きることだけは、誰の手にも委ねてはいないから、時代精神が泥沼で足掻いていても、大丈夫だという自信はある。まるで、中島みゆきさんの『宙船』の一節のようだ。「その船を漕いでゆけ おまえの手で漕いでゆけ おまえが消えて喜ぶ者に おまえのオールをまかせるな」
 私が未来のためにできることは私自身が自由闊達に生きることでしかないだろうが、その姿を見て誰かが時代精神の泥沼から抜け出すキッカケを得られればと願うばかりである。そして、そこから、未来を描くアイデアのカケラが浮かび上がればと願う。未来のためにできることは、大言壮語な格好良さより、意外とこの手にあるのかもしれない。中嶋雷太 #未来のためにできること

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