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ビーチ・カントリー・マン・ダイアリー(23):「海と戯(たわむ)れる」

 湘南・片瀬海岸近くに引越し約7カ月が経ち、ようやく新居、そしてこの海辺の町に慣れてきたところです。
 桜が開花する3月下旬ごろまでは、時にUGGを履いて浜辺でカフェをするだけでしたが、4月に入りたまに夏日が訪れると、海で遊びたくなってきました。
 湘南の海(片瀬東浜、片瀬西浜や鵠沼海岸など)には、真冬でもサーファーたちが果敢に波乗りを楽しむ姿がありましつが、極端に寒さを嫌う私はただただ「偉いなぁ」と小さな感嘆符を寒空に浮かべているだけでした。初日の出の早朝も、何十人かのサーファーが海に出ていたのは驚きでした。
 そんな根性のない私ですが、海水温が20度近くになってくると、ビーサンを履いて浜辺を散歩し始め、江の島と陸地が繋がるトンボロが現れると、じゃばじゃばと裸足で砂浜を歩き出しました。5月の連休に入るころからは、Tシャツと半パンとビーサンが日常の服装となります。朝夕が寒いと、Tシャツの上にパーカーを羽織りますけれど。
 気持ち良い初夏の風が吹き出す5月の連休明けになると、冬眠からようやく目を覚ました熊のような私は、海で遊ぶことをあれこれ考え、すぐに行動に移しました。
 先ずは湘南ビーチランというイベントで砂浜を5キロ走りました。「5キロぐらいなら何てことはないだろう」とたかを括っていたのですが、スタートからゴールまで、ずっと砂浜の上を走るその辛さと言えば、もう大変でした。一歩一歩が砂に沈みこむわけですから、死ぬ思いでした。もちろん、ハァハァ言いながらも完走だけはしましたが、良い経験になりました。
 そして、数十年ぶりに再開したのが、サーフィンとボディーボードです。かつての勘はまだまだ戻りませんし、肉体を動かす神経系統がまったく繋がっておらず初心者マークですが、それでも海と戯れるのは楽しいものです。自宅から徒歩数分で片瀬海岸の浜辺なので、初心者マークを心に掲げながら、楽しむことを第一に掲げています。
 こうして海と戯れだすと、冬場には見るだけの海だったのが、戯れるための海へとすっかり変貌します。6月21日の夏至まではまだ日にちはあるのにもかかわらず、すでに全身日焼けして真っ黒になり、髪の毛は塩漬けでボサボサとなり、全身海の潮でコーティングされ…という日常が始まりました。7月1日の海開きがやってきて9月1日まで海水浴シーズンで浜辺は賑やかになり、その後は閑散とするでしょうが、私の海との戯れはまだまだ続き、最高気温が20度を切り始める10月下旬まで続くのだろうと思います。そして、11月から翌年の4月末までの6カ月は冬眠生活のはずです。
 暑くて強い太陽光を浴びる半年と寒風吹き荒ぶ半年。極端な二つの季節感ですが、一年の半分は海と戯れ、残り半年は海を見つめるのが、ビーチ・カントリー・マンの生活の基調になるのでしょうね。陽と陰。光と陰。明と暗…。見事に二つに分かれた季節感です。
 人それぞれに、自分が住んでいる環境は異なり、その環境ごとに季節の変化に合った生活のリズムがあるはずですから、一年という時間を生きる基調もそれぞれ異なるはずで、その異なりの面白さこそが地方色で、旅をするとその地方色を楽しむ私がいます。
 私が生まれ育った京都市内は山に囲まれた盆地で、夏は蒸し暑く冬は底冷えのする季節感激しい土地だったのですが、はっきりとした四季があり、明治生まれの祖母にとっては二十四節句を感じとっていた節があります。海と言えば琵琶湖だった京都の庶民の生活のリズムはそれなりに面白いものだと思います。
 昨年秋にビーチ・カントリー・マンになった私は、ようやくこの湘南・片瀬海岸のリズムに生活を寄り添えるようになったようです。ただ、海と戯れるのには、体力がっ!中嶋雷太

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