【第3話シナリオ】 「おかえりなさい」 仕事から帰宅してきた慎二に声をかける。 慎二は目も合わさず、私の横を素通りしていった。 (不機嫌アピール今日も続行中……っと) この間私が言い返したことが余程気に入らなかったのだろう。 あれから一週間が経つ今も、慎二からの無視は続いていた。 徹底して、私の存在をないものかのように振る舞っている。 一応主婦の身であるから、慎二の分の食事も用意しているが、それにも一切手をつけない。 慎二にとっては、それが私への罰のつもりなのだろう
【第2話シナリオ】 「おい、俺の飯は?」 それがお腹の中の子を失って悲しむ妻に向けて、実家から帰って来た夫が発した第一声となった。 私を心配する素振りすら見せず、食事の準備ができていないダイニングを見て眉根を寄せた慎二。 そして“俺の飯”ときたものだ。 「何で用意してないんだよ。帰るって連絡は入れてただろ」 ―――ねえ慎二。 私、もうあなたの言いなりにはならないって決めてるの。 私は慎二を見つめながら口を開いた。 「帰る直前……ほんの20分前に連絡がきたところで
【あらすじ】 【登場人物】 ◯西宮 若菜〈にしみや わかな〉 主人公・30歳 気が弱く、自分の意見を口に出せない性格。 27歳で慎二と結婚。 結婚後は慎二からモラハラを受け、義母や義妹からも辛く当たられていた。 念願の子どもを流産してしまったショックで、自分がこれまで記憶喪失だったことを思い出す。 記憶を取り戻し、本来の“強い自分”を取り戻す。 ◯記憶喪失について 22歳〜25歳まで看護師として働いていた。 25歳の冬に両親との旅行帰りに事故に遭い、自分だけ生き残る。
切れ長の目元、スっと通った高い鼻、形のいい唇。 どこか人形じみた美貌は、近寄りがたい冷たさをはらんでいて。周りが騒ぐのも頷ける。 そんな人が、今なんて言った? 「……あの、もう一度お願いしてもいいですか?」 耳に入った言葉が信じられなくて、思わずもう一度聞き直す。 早川社長は表情を変えずに再び言った。 「俺と結婚して欲しい、と言った」 聞き間違いじゃなかった。 結婚? 誰と誰が? ……私と早川社長が? 隣の高峰さんを見ても、既に承知のことだったのか驚く様子はない
「……アレは、一体何だったんだろ……」 昨日に起きたことを思い返しては首を捻る。 私はそればかりを繰り返していた。 だって可愛いポメラニアンと一緒に寝たと思ったら、起きた時には全裸の男がいた、なんて。 そんなの誰が想像できるっていうんだ。 それに見間違えでなければ、目の前であのポメラニアンが人間に変化していたような……? 何なら、見覚えのある人だったような……? いやいやいや、やっぱり見間違いだよね。 だって、犬が人になるなんてそんなの非現実的すぎる。 それに、あんな
【あらすじ】 【登場人物】 宮内 音〈みやうち おと〉 主人公・28歳 早川 律〈はやかわ りつ〉 ヒーロー・32歳 荒井 太晴〈あらい たいせい〉 ヒール男・30歳 倉谷レナ〈くらたに れな〉 ヒール女・23歳 【第1話シナリオ】 「俺と結婚してくれないか」 目の前に座る彼は、そう真剣な表情をして私に告げる。 噂通りの、芸能人顔負けなくらい端正な容姿。 まるで全てのものを持ち合わせているような人。 “冷徹社長” 住む世界が違うと思っていた人と、どうしてこ