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「死にたい」と叫んだ娘と小さな私の神さま①

卒園の迫った3月上旬、私はいつものように鼻歌まじりで保育園のゲートを通り年長さんの教室をチラ、と見た。中庭で他のクラスの先生と話し込んでいた担任の先生と目が合った。

「〇〇さーん!」

と、いつものように娘を呼ぶべく教室内へ顔を向けるのかと思いきや、隣の先生と一瞬顔を見合わせたあと、私のところへ駆け寄り「お母さんすみません、ちょっと」と私を中庭の端へと連れていく。

(誰かと喧嘩したのか……)

まあそんなこともあるよな、などとのんきに構えつつ先生の次の言葉を待っていた私の耳には

「〇〇さんがさっき、『死にたい』と連呼して大泣きしてしまって……」

という予想もしていなかったものが飛び込んできた。

その日の風は特に強いと感じなかったが、その一瞬だけ、冷たく強い風が私の髪の毛を乱れさせ、パサパサに乾いた針のような毛先が顔面に次々と突き刺さった。



娘はHSP気質でとにかく繊細な子だ。1歳になった頃から本当によく2歳年上の兄や私たち両親や近所の友だちを観察しているなと感じていた。記憶力も、私が言う言葉を把握する能力も高いと感じていた。息子が周りをほとんど見ずに、人の話も聞かずに突っ走る性格だからなおさらその対照的さが私の目には際立って映った。

大きな物音や、乱暴な言動をする友だちが苦手であることはでも、年長になってから問題として浮上した。恥ずかしながらとても我慢強い性格であることを見逃し、保育園に行きたくないと言うことなく、毎日通ってくれている彼女に甘え切っていた。

だからある日の保育園の帰宅の車内で突然大声で泣き出し、パニックになってしまった娘に、私はただただ茫然と、あっけにとられるしか成す術がなかった。
よくよく話を聞けば、クラスでも一番活発でやんちゃな男児と一か月同じ班でいたのだが、その日はこらえきれなかったらしい。

「もう限界!もう限界!!〇〇君には限界!!」

と泣き叫びしばらく止まらなかった。

先生に相談したところ、席替えをすることで丸くおさまったのだが、親としては反省するとともに重苦しいものが胸に残った。それは、私も同じように周りを気にしすぎる(おそらくHSP)気質であるため、娘が今後小学校、中学校、高校と続く集団生活で、さらに言えば社会へ出てからもずっと「生きづらさ」を抱えて生きていくのではないかと、容易に予想できてしまうからだ。

そしてその私のネガティブな予想は、席替えをし、問題が表面上解決したその日から、顕在化し始めることになってしまった。




続く

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