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微生物ってなんですか?【コラム】
プロフィールにもある通り僕は微生物が好きです。
なので今日は微生物について基本的なことを少し語ります。
とは言ってもウルトラ・ハイパー・ジョウホウ・カ・シャカイなので、正直あまり僕が新しく語ることはありません。
次のリンクのページを見れば十分です。
http://www.microbial-ecology.jp/or/microbial.html
ですが、まあ、それだけじゃ味気なので、僕の所感やら思い入れやら無駄なたとえ話を入れつつ、語りたいと思います。
・じゃあとりあえず基本的なところから。
微生物の定義は「肉眼で見えない生物」です。
人が肉眼で見える大きさの限界は100μmです(μm=1/1000mm)。
これ以下の大きさの生物であれば基本的にすべて微生物です。
今騒がれているコロナウィルス、腸管出血性大腸菌O-157、ヨーグルトに入っている乳酸菌、お酒に使われる酵母、その辺のカビ。これらの生き物は目に見えない大きさなので微生物とされます。
『目に見えない、と言ってもカビが生えているのが目に見えるではないか』という指摘もあるのですが、それはカビの塊を目にしているだけです。
細菌も同様に培養すると人の目に見えるくらいの塊になります。
これらはコロニーと呼ばれます。
まとめると、目に見えないぐらいの大きさの細胞だけで生きていける生物を微生物と呼ぶ、と言えそうです。
・その情報って役に立つのん?
立ちませんよ(笑)。
というのは冗談です。
私たちの周りには大量の微生物が存在しているのにもかかわらず、目に見えないことがほとんどです(みたい方は顕微鏡を使うといいです)。
つまり極めてリスクを判定しづらいのです。
ですので、生活していると、目に見えない微生物たちとたくさん触れ合う機会があります。
身に覚えがない方も、実はたくさんの原核生物たちと触れ合っています。
ヨーグルトや納豆は言わずもがな。
台所の流しにもドアノブにも。
それどころかそもそも僕らの身体は割に菌まみれです。
よく皮膚の常在菌としてあげられるのは表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)ですか、それ以外にもたくさんの(本当にたくさんの)微生物が僕らにくっついています。腸内には訳1kgぐらいの菌たちがいるし、口内に住みついて虫歯の原因になるのもStreptococcus mutansという菌が原因です。
目に見えない生物なので極めてリスクの判定がしづらいと思います。
それに加えて微生物は水平伝播を起こし遺伝子をシャッフルしています。
水平伝播というのは、ちょっと聞き慣れないかもしれません。
これは親から子へ遺伝子が受け渡されているのに対して、個体間や他の生物間で遺伝子を受け渡すことをいいます。
この水平伝播が微生物のような簡単な生物間ではとても起こりやすいのです。
その結果、同じ系統の細菌でも強力な病原性を持つものもいれば、まったく病原性を持たないものもいる、という状態がおこります。
ちなみに先ほどの虫歯菌のStreptococcus mutansの仲間(Streptococcus thermophilus)はヨーグルトを作る時にフツーに使われています。Streptococcus属は乳酸菌の一種です。
そんなわけで、微生物の世界はかなり複雑で一概にリスクを判定できません。
そのため全く無警戒ではいけませんが、恐れすぎも良くないです。
菌ではありませんが、今回のコロナ禍でも、パンデミック(病原体の予想を超えた感染数の増加)の他にインフォデミック(大量の(デマなどの)情報が氾濫し、現実社会に影響を及ぼす現象)が問題となりました。
目に見えないものに対して、何が危なくて何が安全かを判断するにはしっかり勉強することが大切です。
・たとえば
たとえばあなたに甥っ子がいたとします。
いないですか?
います(笑)。
で、ある日あなたは甥っ子の面倒を見なければならなくなります。
適当に外で遊ばせておけば満足するだろうとあなたは考え、近くの公園に甥っ子を連れて行くことにしました。
あなたは面倒くさがりなんですね。
甥っ子はやんちゃ盛りなので、公園の砂場で転がりまわり、飼っている犬にじゃれつき、おまけにトイレに行っても水を流し忘れたりします。
そして家に連れて帰ると、手を洗わずに台所へ向かいます。
そしておやつのせんべいを洗っていない手で食べようとします。
そしたらあなたはなんていうでしょうか?
多分『汚いから手を洗っておいで』というと思います。
でもその男の子は遊びたい盛りで、最近少しだけ反抗期です。
何にでもちょっとだけ反発します(根はいい子なのでちょっとだけです)。
その子は言います。
『なんで手を洗わないといけないの?』。
あなたは言うでしょう。
『ばい菌がついているからだよ。汚れた手でご飯食べたら、ばい菌もお腹に入って、お腹痛くなっちゃうんだよ』。
その男の子はこういいます。
『ばい菌ってなに?』
ここで、『ばい菌とは、カビと菌を語源にした俗称で微生物の中でも特に有害なものを指すことが多い。微生物とは目に見えない生物の総称であり真菌、細菌、古細菌またウィルスも含まれることがある。それらの違いは細胞小器官の核の違いであり・・・』などと言える方はこの記事にお求めのものはないと思います。
是非この男の子と学問の深淵について語り合ってください。
ですが、多くのかたは『わるい菌のこと!!』とか『ググって!!』とか『とにかくいう事聞いて!!』とかの返事をしてしまうのではないでしょうか?
・どうしたらいいんでしょうか?
ググるのは悪くない選択ですが、ネットの情報は意外と不確かなものも多いです(ブーメランですね)。
ですので、お勧めは入門書を一冊読んでおくことです。
専門書でも一般書でもテレビでもなく、入門書がいいです。
なぜかというと、専門書だと内容が難しすぎて読みきれず挫折するし、一般書だとわかりやすさの代償に厳密性を大幅に犠牲にしなければならないからです。
微生物の入門書でおすすめは次の本です。
『微生物学』堀越弘毅 著
ひとつ基本的な知識を網羅している入門書を読んでおくと、自分の行動に自信がつくし、いうことにも説得力が増します。
きっと甥っ子にもこう言えることでしょう。
『ごちゃごちゃ言ってねえで、いいから手を洗え!!』
・冗談はさておき
実はさっきの例で言いたかったのは、小さい子にどう注意するかよりも、本当に気をつけるべきは何かを『自分がきっちり把握すること』が大事ですよ、ということでした。
つまり、ばい菌と呼ばれるものが何者で、どんな悪さをするのか、あるいはしないのかを知っておくのが大事なんです。
上で挙げた例の『手洗いうがい』は病気の予防にとても効果的です。
ですが、それが何から身を守っているのかは把握する必要があります。
もちろん基礎的な知識が簡単なものとは限りません。
同じ系統の細菌でも病原性があったりなかったりと、ややこしいでしょ?
だからこそ、基礎知識を押さえておくことが、今回のインフォデミックのような二次被害を防ぐことになると思います。
そんなこんなで、終わりにしたいと思います。
反抗期の甥っ子にはとにかく圧倒的知識差で勝てるようになりましょう。
ではまた。
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