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最も大切な人を傷つけないための戒めとして 「モラハラ夫と食洗機 ~弁護士が教える15の離婚事例と戦い方~」堀井亜生

「モラハラ夫と食洗機 ~弁護士が教える15の離婚事例と戦い方~」著:堀井亜生 まんが:ゆむい


自分も「モラハラ夫」になりえたのではないか

 タイトルの通り、弁護士である著者が、夫のモラハラに苦しむ妻の依頼を受けて別居・離婚の支援をした15の事例を紹介している本です。多くの事例の中から厳選されただけあってどれも相当ひどいですが生々しいです。

 「モラハラ夫」の特徴は、一見魅力的でそれなりの社会的地位もあり、周囲の人の評価も良い。しかし実は学歴や異性関係などに強いコンプレックスがあり、理に適っていない自分のルールを押し付けて家族を支配する…。

 この本を読んで私は何を思ったか。恥ずべきことですが、一歩間違えれば自分もこうなっていたのではないかと思いました。いや、結婚していないのでモラハラ「夫」にはならなかったけど、ほんの数年前まで、コンプレックスが強くこだわりも強かった私は間違いなく、モラハラの傾向があったのではないかと。

「クズ男」と「モラハラ男」の境界線

 やや乱暴な整理ですが、自信過剰で女性にモテる男は、先日の記事でとりあげた「クズ男」になりうる危険性があり、自信が無くモテてこなかった男は「モラハラ男」になりうるのではないかと。そう思いました。

 この本に出てくる夫婦の傾向として、出会ってから結婚するまでの期間が短かかったというのがあります。表向きは魅力的で、運命を感じて「とんとん拍子に」結婚まで進んだはずが、結婚して一緒に暮らすようになると夫は本性を現し、まったく予想外のことに苦しめられていきます。

 この事例に出てくる男性たちの事情を充分に理解したわけではないのですが、それぞれそれなりの社会的地位や信用を築けているのですから、コンプレックスを克服しようと努力してきたのだと思います。一方で、自分の限界を思い知らされることもあったのではないでしょうか。

 出会ってから結婚までが早かったというのも、妻となる人との心のつながりが充分に築けないまま結婚するに至ったことを強く意識しており、「どうせ相手は表向きのステータスだけを見て自分を選んだのだろう」と思って、自分のコンプレックスに折り合いをつけられないまま夫婦になったのかも知れません。

 最も、男性側も自分の素を見せることができなかったのだから、女性側が「表向きのステータスだけを見て自分を選んだ」のは当然のような気がします。よくSNSやブログでさらされている「婚活で出会ったとんでもない男」は、男性がその「素の部分」を見せた結果なのかもしれません。(むしろその人たちの方がある意味では誠実な気もしますが。)

自分が「モラハラ男」にならない為の戒め

 私自身、専門学校卒なので学歴としては「高卒」であり、学歴コンプレックスは強く感じていました。就職氷河期世代で長い間年収も低かったですし、重度の皮膚病にかかったことがあるので体中に痕が残っています。コンプレックスは相当強かったです。

 婚活を経験したこともありました。コンプレックスが強い一方でプライドは高いというありがちな落とし穴にはまり、1年あまりで精神的にもたなくなって辞めました。

 恐ろしいことですが、うまくいかず結婚できないまま早々に辞めてしまったのがまだ良かったのかも知れません。運が良いのか悪いのかその時に結婚できていたら、私はそのまま円満な家庭を築けたでしょうか。

 具体的な相手もいないまま「もしも」を考えること自体がバカらしいとも思うのですがそれでも、この本に出てくる「モラハラ夫」のようになっていたような気がしてなりません。

モラハラ気質の人を他者が変えることはできるのか

 私はその後、あるきっかけから今いるサロンのオーナーと出会い、承認してもらえたことで自分のコンプレックスと折り合いをつけることができました。

 そうして自分の「モラハラ気質」はしぼんでいったと自覚しているのですが、完全に消えるわけではないと理解しており、二度と膨れ上がらないように日々気を付けています。

 では、もし身近にモラハラ気質の人がいたとして、自分が働きかけることによってその人の「モラハラ」を克服する助けになれるのだろうか。

 もしかしたら成功する場合もあるのかも知れませんが、結局、その人自身が心の整理をつけないと変われないと思います。モラハラは、本来最も大切にしなければいけない身近な人たちを深く傷つけます。とても悲しいことですが、使命感を持つよりも自分の身を守る為に遠ざかった方が良いと思います。

 モラハラ気質の人は自分がモラハラだという自覚が無いそうです。主観的には自分の「正しさ」を主張しているだけなので当然そうなのだと思います。ですがきっと「生き辛い」「苦しい」という自覚はあると思います。

 モラハラ被害者の救済が優先されるのは当然ですが、モラハラ気質の人たちはどうすれば良いのか。身近な人たちが遠ざかっていくたびに孤独を深めて症状が進んでしまうのではないか。

 「自助」を求めるのは非常に困難です。何かこの人たちの助けになるカウンセリング等が広がっていって欲しいと思います。