やるべき時はやれるオタク 令和の高倉健 ~「ダンダダン」龍幸伸~
昭和と令和、二人の高倉健
いきなりですが、昭和の男前と言えば、何と言っても映画俳優の高倉健でしょう。代表作は「幸せの黄色いハンカチ」「ブラック・レイン」「四十七人の刺客」他多数(私が観たことのあるものだけ挙げています)。無口で重厚な硬派。「自分、不器用ですから。」という台詞は今でもよく引用されています。(この台詞があったのは映画ではなくCMらしいです)
しかし時代は変わりました。令和の現代、「男は黙って」という考えは好まれず、言葉を尽くして自分の気持ちを表すことが求められます。
そんな現代において、昭和の銀幕から令和のデジタル漫画へと媒体を変えて、再び「高倉健」が活躍しているのをご存知でしょうか。
少年ジャンプ+で連載中の漫画、「ダンダダン」に登場する、「オカルン」こと高倉健のことです。
令和の高倉健はオカルトマニア
高倉健はオカルトマニアの高校2年生。霊能力者の血を引く超能力者、綾瀬モモと行った肝試しで妖怪「ターボババア」に憑依され、妖怪の姿に変身し高速移動できる能力を身に付けます。
この日を境にモモと高倉は、街にはびこる妖怪と、地球侵略を狙う異星人の両方を相手にした戦いに身を投じます。自分の好きなオカルトが実在したわけですが喜んでいられません。日々命がけです。
今まではひ弱で友達もいなかった高倉ですが、自分の運命を受け入れ、「自分が強くならないと綾瀬さんを守れない」と密かに特訓します。
令和の高倉健も拳で語る
数々の戦いを経て強い信頼関係が芽生え、ギャルのモモとオタクの高倉、まさかの両想いかというところで、高倉に手強い恋敵が登場します。
その男の名は円城寺仁(通称:ジジ)。明るいスポーツマンタイプで長身の美男子。しかもモモの幼馴染。もともと引っ込み思案だった高倉の劣等感が炸裂します。
社交的なジジは高倉にも気さくに接した為、高倉もしだいに打ち解け、男友達ができたと喜びます。そのジジも実は、生贄として幼い命を断たれた少年の怨霊「邪視」に憑りつかれていました。
狂暴な邪視の霊を祓おうと奮闘するモモ達。しかし、邪視が怨霊になるに至った不幸な運命に同情したジジは、「生きていた時にできなかった分まで存分に遊ばせてやりたい」と、祓わずに自分の身体にとどめておいて欲しいと申し出ます。
それはとても思いやりがありますが、邪視の恐ろしさを無視した甘い考えでもあります。高倉はジジの身勝手さに腹を立てると同時に感動して、自分が邪視(が憑依したジジ)を抑え込んで言うことをきくように仕向けようと、一度は敗れた敵に再び戦いを挑みます。
ふだんは頼りなくてもやる時はやるのが令和流
漫画の面白さや迫力を文章だけで説明することは不可能なので、ぜひ手に取って読んでいただきたいです。
漫画の紹介が長くなりましたが、今回伝えたかったのはこの漫画に登場する「高倉健」が実に、今の時代に合った魅力にあふれているということです。
前述したとおり高倉健はもともと、ひ弱でマニアックで友達のいない、教室では自席で独り過ごしているような少年でした。
戦いを経て成長し、クラスでも多少は存在感が出てきましたが、相変わらずスイッチが入るとわけのわからないことを夢中で延々としゃべり続けますし、同級生相手にも敬語で、時々ひとりで気持ちをこじらせています。
ですがそれでも良いのです。見た目は地味で、変わった趣味があり、人に話しかけるのは苦手ですが、それも個性なので無理に変えなければいけないものではありません。
完全無欠の英雄でもスターでもないけど、身近な人たちを守る為にやるべき時はやれる。これが令和流の「高倉健」の魅力であり、多様性の社会を生きる人たちの手本にもなると思っています。