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砂の中のキリン
春の短編ファンタジーをどうぞ。
さっそく、ご感想をいただきました。
短編なんで、読み終わりました。
— ひーろん🗿3月17〜23日バートックギャラリー少女オセロ2020参加 (@lYdvcZuATdjkGBA) March 20, 2020
キリンの話凄い良かったです。お兄ちゃんが掴みかけたキリンの角、キリンの角なのに、棒だと思ったから棒になった!って言うシーン!
これって自分の中では"夢と希望"ってものに変換されて映りました。
夢や希望って誰かに語るとそれが大きければ大きいほど、なぜかバ
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砂の中のキリン
「奈々葉、どこ行くの?」
リビングから母さんが顔をだす。
「さん、ぽ」
スニーカーのひもをきゅっと結んで、あたしは外に飛びだした。
ふわりと、やわらかな風が体をつつみこむ、春。
そう、春なんだ。
向かいの塀から枝を伸ばす桜が、花をほころばせている。
この春、中学を卒業した。
学区で偏差値2番目の県立に合格。
女の子にしてみればまあまあ優秀で、母さんはお赤飯をたいた。
──たかしの時なんか、お母さんいっつもちっちゃくなってたわよ。
そのうっぷんが、たっぷりはらせたわ。
うっぷんね。まあいいけど。
勉強するのはそんなに嫌いじゃない。
でもへんに期待されてるから、この次はいい大学って言われそう。
で、大人になったらいい会社に入っていい結婚をして、いい母親、いいおばあちゃん。
で、しまいにはいい仏さん?
あーあ。
あたし、きっとこのままいい子ちゃんで生きてくんだ。
あたしの人生、たいしたもんじゃない。
*
もともと行くあてなんかなかったし、小さい頃歩きなれてた小学校の通学路をなんとなく選んでいくと、砂山のところに出た。
砂山。
まだあったんだ。
小学校に通うとちゅうの川辺の空き地に、以前から大きな砂山があった。
よくここで、道草くったっけ。
畑の横の小道だから、車もあまりこない。
あたりには、誰もいなかった──。
こんなもんだったっけ?
砂山は今でもあたしの背丈より大きかった。
でもあの頃は、本物の山のようにどっしりとして、小さなあたしを圧倒するように目の前に立ちはだかっていた。
砂山に足をかけてみる。
ちっちゃかった頃みたいに。
登ってみようかな。
砂がくずれて、足がずるずるとおっこちそうになる。
それをこらえて、ぐっと砂の中に足をふみいれる。
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