見出し画像

わたし流の持たない暮らしはデータ化から始まった

【2016年に『シミルボン』で掲載したエッセイです】

断捨離という言葉が定着したかと思えば、今度はミニマリストという言葉を見聞きするようになりました。私自身も“こんまり”さんの「人生がときめく片づけの魔法」に助けてもらい、家の中をすっきりさせた一人。持ちすぎない生活をいまのところ続けています。

仕事柄、知らず知らずのうちに増えていくモノのナンバーワンは雑誌、書籍、資料、紙モノ類です。後で片付けるからちょっとだけここに置いておこう、なんてうっかり床に積んでしまったら最後。崩れるまで重ねてしまうこともしばしばありました。いつかこの映画について書くときにこの資料は必要になるからと、あれもこれも保管していましたが、棚のスペースは限られている、部屋の広さも限られている、でも書類は増え続けていく、一体どうしたらいいのか──たどり着いたのは、紙類のデータ化でした。

最初は勇気が必要です。“こんまり”さん的には、ときめくかときめかないか、自分にとって大切なものかそうではないかで、いるいらないを判断していきますが、他の断捨離本でよくあるのが、1〜2年身につけなかったものは捨てる方式。これを書類に当てはめて考えてみたのです。ほとんどがただ棚にあるだけ、ただ場所をとっているだけでした。もちろんなかには必要なものもありますが、ごくわずかです。というのも、現代はネット社会。ネットで検索すればある程度の情報は手に入るわけですから、当たり前と言えば当たり前です。

というわけで、2年ほど前でしょうか、私の書類断捨離計画はスタート。大量の書類をデータ化するためのスキャナー、裁断機、シュレッダーを初期投資で購入し、自宅で処理できない大判サイズの大切な書類は業者に依頼することに。そうやって今はほぼほぼデータ化、すべてパソコンのなかです。タイトルを検索するとササッと書類が画面に出てくる! めちゃくちゃ便利です。ちなみに、名刺もデータ化しました。データ化した名刺も書類と同様にシュレッダーへ。最初はいただいた名刺なのに申し訳ない……という罪悪感がありましたが、名刺は相手に連絡先を伝えるための手段のひとつであって、連絡したいときにすぐに連絡できないことの方が相手に失礼だ、そう思うようにしています。

書類の片付けをはじめてしばらくした頃に、断捨離やミニマリストをテーマにした映画にも出会いました。フィンランド映画「365日のシンプルライフ」です。これは、失恋をきっかけに「自分にとって本当に必要なモノは何か」を考えた青年の実験生活を記録したドキュメンタリー。ユニークなのは、断捨離とは逆の発想であること。家にあるすべてのものを倉庫に運び、そこから毎日ひとつずつ自分に必要なものを選んでいく方法です。ものすごく究極ですが、一日ひとつしか倉庫から持って帰ってこれないとなると否応なしに自分にとって必要なモノが何であるのかが見えてくる。さらに、モノ見つめ直すと人間関係にも変化が現れる、驚かされました。この映画の公開後にはフィンランドを中心に世界各国で“実験”フォロワーが生まれ、若者の間で一大ムーブメントとなったそうです。

片付けをした前後で大きく違うのは、やはり意識でした。以前は買い物に行くと、必要ではないのに可愛いから買ってしまった、何となく買ってしまった、ストレス発散でつい買ってしまった……その場の感情を優先させていました。でも、今はちゃんと“考える”ようになりました。今日、買わなかったら二度と買えないかもしれないから買っちゃえー! という考えが、買えなかったらそういう運命だったんだ、縁の無いモノだったんだと思うように。中途半端な執着心がなくなりました。

そうやって無駄遣いをしなくなってからは、数は多くなくていいので、美しいモノ、本当のモノを持ちたいと思うようにも。たとえば、イミテーションのパールのネックレスをいくつも買うよりも、一生使えるホンモノ=好きなモノ、というように。この考え方は、実は二十代の頃に読んだ「フランス人の贅沢な節約生活」ですでに知っていたはず、なんです。でも二十代〜三十代はやろうとしても無理でした。モノがあふれてみてようやく気づくことができるわけで、気づくために時間が必要だったと思っています。ですが、決して二十代に読んだことが無駄なわけではなく、この本と出会ったことがきっかけでずっと続けていることがあります。それは花を飾ること。花のある生活をすることです。花の種類によっては1本数百円するものもありますから、もったいないなぁと思ったこともありますが、今日は花を買ったからお菓子は我慢、外食はしないというように、自分のなかで──体重増加につながるお菓子は買わない=節約、心を豊かにしてくれる花代はケチらない=贅沢、というルールを決めたら意外と効果的でした! 今週は濃いピンク色の薔薇の花を一輪。美しいです、可愛いです。そろそろチューリップが店頭に並ぶ季節なので、来週は元気のでる黄色を考えています。

読んでいただき、ありがとうございます!♡(スキ)の色がかわってハートの隣に数字がみえると、読み手にちゃんと文章が届いたんだなと嬉しくなります。次は何を書こうかなと励みになります。みなさんの今日の一日にも嬉しいことがありますように!