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作詞家大塚利恵の『ことばのドリル』vol.41♫サウンドからことばを探す

Vol.40のドリルはいかがでしたか?

‘さ’‘し’‘す’‘せ’‘そ’を頭文字に、5行の作品を作って下さい。
テーマは「寂しさ」

「寂しさ」はサ行。「切なさ」も、英語の「sad」「sorrow」もサ行ですね。
寒い さわやか すがすがしい 清涼感 涼しい スーッとする 鈴なども。
「シーっ!お静かに」と、鎮める時も。

サ行の音は、温度で言えば“冷”の方なのでしょう。
言葉の意味とサウンドは、結構リンクしているものだと思いませんか。

メロディに歌詞をのせる時、「ここは絶対サ行だな」というように、そこの音に合いそうな母音や子音を発見することがあります。
そうなったら、ことばの意味は後回し。
自分のボキャブラリーの中から、必要なことばが音に導かれて引き出されるような感じで、ことばを探ります。

作詞でない表現でも、何か行き詰った時や上手くことばにならない時は、描きたい感情やイメージをじっくり感じて、サウンドからことばを探してみるのも良いと思います。
パレットからピンときた絵の具を筆にとり、真っ白なキャンバスにパッと描き入れるような、そんな感覚。
こういう感情を描くならこの色、というような意味づけは無しです。
感情を味わい、浸りながら、直感的に選んだ色をまずは描き入れてみる。
なんでもかんでも理屈や意味から入るのではなく、そういう子供のようなやり方も時にはリフレッシュになると思います。


今回は多めに例を書いてみます。

さかあがりできなかった
しずかな公園にひとりぼっち
スコール!
せなかに雨を受け止めて
そのまま、あの日から僕はうずくまったまま

殺風景な心の奥に
染み込んでゆく空虚な時間
スッと背を伸ばし目を見開く
精一杯のオトナの美学
空への階段を登ってゆく 粛々と

サンダル片方だけ
シンデレラの夢を見た
少しずつ醒めてゆく
世界がため息で満たされて

それでもどれだけ笑えるか

五月雨嫌い
潮風嫌い
素直になれない
性格が嫌い
そんなこと言えない自分が嫌い

去り際のあなたは
信じられないほど美しく
素敵な映画のエンドロールみたいに
セピア色に染まっていった

即興の詩が浮かんでは消えた

さびれた街の端っこで
深呼吸も知らずに暮らしてる

好きな歌なんかありません
背もたれもない椅子に日がな一日
それでも夕暮れの唇から漏れる、このメロディーは何だろう

サーカスの夢の跡
死んだら人はどこへゆくの?
スコップで土を掘り返し
せっかくの服を汚しながら
そんなこといつまで繰り返すの?

札幌の雪の夜
シーンという音が在ることを知った

透き通った冷気が肺の中いっぱいに
先月の紅葉の記憶さえ凍らせる
そばにいて欲しかった、君に…

さよならの響きを
しみじみと噛み締めて
好きだったよ
精一杯言葉を探しながら泣いた
それ以上も以下も見つからなくて泣いた

探し物はなんだっけ
知らない人に聞いてもわかるもんか
すごく大事なものだったような
洗濯物が飛んで行っただけだったような
そびえ立つ高層ビルの向こうの空だったような


ところで、「寂しさ」と「切なさ」は何が違うのでしょうか?
「虚しさ」「悲しさ」「侘しさ」との違いは?
はっきりとした線引きはあるのでしょうか。

「寂しさ」などのテーマがある場合、「寂しさ」の類語や、近い感情のことばとの違いを一度考えてみるのはとても有意義です。
辞書で引くだけでなく、自分なりに定義してみると良いでしょう。
自分で定義することで深く落とし込むことができ、表現がより的確になるはずです。

その感情は、本当に「寂しさ」というカテゴリーがふさわしいのかどうか。
書きながら、自分に問いかけ続けてみてください。
2つ以上の感情が混ざっている場合もあると思います。もちろんそれでも構いません。
私が書いた例も、きっと「寂しさ」100%だけではありません。
ただ、テーマは「寂しさ」なので、寂しさがメインになるようにしましょう。

できた作品は、声に出して読んで味わってみてください。
寂しさ100%かもしれないし、寂しさと切なさが半々かもしれない。
寂しさなのに、どこか温かい表現になっているかも。
寂しくても希望を感じる場合もあるでしょう。

できるだけ沢山作ってみてくださいね。


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《ことばのドリルVol.41》

‘た’‘ち’‘つ’‘て’‘と’を頭文字に、5行の作品を作って下さい。(濁点を付けてもOK)

テーマは「元気が良い感じで」

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2016年にメルマガで連載したものに加筆しています。全100回。
作詞の勉強をしたい方はもちろん、自分の言葉を磨きたいすべての方に。
長年作詞を指導してきたノウハウを目一杯詰め込みました。
最初は易しめですが、じわじわ効いてきます。
解説を読むだけでもヒントを得てもらえるように書いていますが、実際トライしてもらうと、さらに言葉の感覚が大きく変わっていくのを実感してもらえるはず。
もっと深く学びたい方は、大塚利恵の作詞レッスンへぜひお越しください。
初心者〜プロの方まで、無料カウンセリングも行っています。

ありがとうございます!