作詞家大塚利恵の『ことばのドリル』vol.26♫紙の上から踊り出すことば
Vol.25のドリルはいかがでしたか?
「タンタ タタータタ タタタタ タッタ」のリズムで文章を作ってみましょう。
前の2つのドリルに比べると、一見長くて大変そうですが、声に出して繰り返し読んでみると意外とすぐ覚えられると思います。
‘読む’というと、一生懸命文字を追う感じがしてしまうかもしれませんが、覚えてしまったら文字を見ずに、感覚で掴んでみて下さい。
「どんな スクープも 眉唾 だった」
「こんな ステージで 踊りた かった」
「そんな カレー蕎麦 誰がつ くった?」
「あんな 非常識 驚き だった」
「どんな 不条理も 許せな かった」
「みんな 自由さえ 忘れて いった」
「ハンド クリームが 切れてし まった」
「今夜 スコーピオ 見えるよ きっと」
「金魚 欲しい人 あげるよ もっと」
「ちゃんと しようとか 無理がた たった(祟った)」
「凛と ビロードの ドレスで 舞った」
「ビンタ 鼓動すら 火花が 散った」
「ミント スウィーツに 爽やか ちょっと」
「なんか スタートが 遅すぎ ちゃった」
まず、リズムのどこか一箇所に当てはまることばを見つけ、それを軸に文章を作ってゆくとやりやすいですよ。
例えば、「タタータタ」の所に「ステージで」を乗せ、それから前後をイメージしてゆく、というように。
そして、声に出した時に心地よく、繰り返したくなるかどうか。
リズミカルで心地よければ、リズムの切れ目と文節は必ずしも合っていなくても大丈夫です。
例えば、「そんな カレー蕎麦 誰がつ くった?」
「作った」の途中で切れていますが、「く」にアクセントが付く方が自然で心地が良いと思います。
声に出した時噛んでしまったり、リズムに乗りにくい場合などは、どこを磨けば良くなるか考えてみましょう。語順を入れ替えたり、一字変えるだけでもグンと良くなったりします。
リズムに乗せられてことばを発想していると、ことばが踊り出すような感じがしませんか。
ことばって、紙の上や画面上にあっても、本当はそこに収まり切らないもの。
特に歌詞なんて、そもそも耳で聞くものですよね。
歌詞カードとか、テレビやカラオケで歌詞のテロップを見たりもしますが、それは二次的なもの。
作詞している時、「書かないと忘れちゃうから書き留めてるだけ」と思ってね、とよく生徒さんに伝えています。
紙の上に、上から下に、という発想に縛られないようにするためです。
歌詞、小説、脚本、ブログ…どんな表現でも、ことばは生命のように、紙や画面から飛び出して動き出すものだという認識が、私たちのことばを生き生きさせてくれるように思います。
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《ことばのドリルVol.26》
「みみみみみみ…」「てててててて…」「ドドドドドド…」など、
何か一つの文字を連呼してみて下さい。
一番あなたっぽいのはどの文字でしたか?
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2016年にメルマガで連載したものにちょこっと加筆しています。全100回。 作詞の勉強をしたい方はもちろん、自分の言葉を磨きたいすべての方に。 長年作詞を指導してきたノウハウを目一杯詰め込みました。 最初は易しめですが、じわじわ効いてきます。 エッセイを読むだけでもヒントを得てもらえるように書いていますが、実際トライしてもらうと、さらに言葉の感覚が大きく変わっていくのを実感してもらえるはず。 大塚利恵の作詞レッスンでは、ドリルへのアドバイスも行っていますので、ぜひ。
ありがとうございます!