見出し画像

作詞家大塚利恵の『ことばのドリル』vol.31♫「オレンジ」で「喜び」を

Vol.30のドリルはいかがでしたか?

「オレンジ」という色のイメージを使って、「喜び」を表現してみて下さい。
短くても長くても構いません。
(例)オレンジジュースで乾杯!

前回と同様、まず「オレンジ」のイメージを書き出してみましょう。
オレンジジュースのように、オレンジということばそのものを使ってもいいのですが、まずはバリエーションを。

《太陽、夕陽、柑橘、人参、紅葉、ハロウィン、キンモクセイ、暖炉》

ビタミンカラーと言われるように、ビビッドなオレンジ色からは一般的に元気で明るい印象を受けます。
でも、夕陽や紅葉の場合は、しみじみとした感じ。
色のトーンや状況、情景によりますね。

そして、「喜び」にも様々な種類、トーンがあります。
意識しなくても、きっと色のトーンと喜びのトーンが、フレーズの中でリンクすると思います。

頭の中全体にオレンジ色を広げ、喜びを感じるシーンを思い浮かべて表現してみて下さい。


~ビビッド・元気系~

■オレンジジュースの笑顔
;オレンジジュースのような笑顔(比喩の種類でいうと直喩)とも言えますが、歌詞では「〜のような」をカットしてズバッと言い切る暗喩、隠喩がよく使われます。直喩より字数が少なくスッキリ伝わり、インパクトも上がります。

太陽を丸かじり
;真夏のはち切れそうなテンションを表す、豪快な表現です。こんな絵があったら面白そうじゃないですか?

■パンプキン・ジャンプ!
;ことばの響きを生かした、造語のようなフレーズです。こういうパターンは、サビのキャッチフレーズや、タイトルとしてもインパクトが出ます。

■BOUNCY! 街中陽気なパレード CRAZY! 弾ける無数の笑顔
;全体にビビッドなオレンジ色の元気さを意識したフレーズですが、オレンジ色の物を表す名詞が出てこないので、はっきりと色のイメージは伝わりにくいかもしれません。なかなか難しいですが、こういうチャレンジも、表現の幅を広げるためにはオススメです。何割くらいの人が「オレンジっぽい」と感じるか、アンケートを取ってみたいものです。
ちなみに、最後にオレンジ色キーワードの「太陽」を使い、「無数の太陽」とすれば、一気にオレンジ寄りになります。

~落ち着いたトーン~

■夕陽に染まる二人の手と手
;夕陽のオレンジ色と、照らされた手のオレンジ色。また、その時の二人の気持ちや感覚も、「温もり」のオレンジ色なのではないでしょうか。

■暖炉の火を見つめる君の、チークにそっとキスをした
;暖炉の火で温められ、頬がチークをのせたように自然にオレンジ色に染まった君。パチパチと燃える火の音、その温かさ、恋する思いの熱。
視覚だけでなく、聴覚や触覚が強調されたフレーズです。
ちなみに、「キスをした」だとキスした側のじんわりとした喜びが伝わりますが、「キスしたい」だったなら、喜びというよりもどかしさが強くなります。


しみじみ、じんわりとした喜びの表現も良いですね。
一つのトーンだけでなく、様々なトーン、シチュエーションで試してみて下さい。


----------------------------------------------------------------------------

《ことばのドリルVol.31》

「白」と「黒」の二色のイメージを使って、自由に一つのフレーズを作ってみて下さい。
短くても長くても構いません。

----------------------------------------------------------------------------

2016年にメルマガで連載したものにちょこっと加筆しています。全100回。 作詞の勉強をしたい方はもちろん、自分の言葉を磨きたいすべての方に。 長年作詞を指導してきたノウハウを目一杯詰め込みました。 最初は易しめですが、じわじわ効いてきます。 エッセイを読むだけでもヒントを得てもらえるように書いていますが、実際トライしてもらうと、さらに言葉の感覚が大きく変わっていくのを実感してもらえるはず。 大塚利恵の作詞レッスンでは、ドリルへのアドバイスも行っていますので、ぜひ。


ありがとうございます!