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南仏ホームステイとポルトガル一人旅~プロローグ編~

2000年に一年間のパリ留学を終えて帰国した私は、その後日本で全くフランス語に関わらない暮らしをしていた。
高給取りではなかったが、当時実家暮らしをしていたので金銭的に余裕があった。平日のアフターファイブは買い物やグルメ、週末は映画鑑賞や旅行と忙しくしていた。
フランス留学のことなど忘れて、日本での生活を思いっきり楽しんでいた。
帰国から3年たったころには、簡単なフランス語会話すらおぼつかなくなっていた。
このままじゃいけない、あんなに忘れがたい貴重な経験をしながら得たフランス語なのに。
そう思った私は仕事を辞め、もう一度フランスに短期留学することを思いついた。

憧れのニースでホームステイ

前回のパリ留学では寮に滞在していた。今回はホームステイがしてみたい。
とは言えパリ留学で知り合った友人たちは、ホストファミリーと頻繁に会話をしたり、絆を深めたりしている様子があまりなかった。(もちろん例外はあると思うが)
パリのように地価の高い大都市では、あいている部屋を有効活用するために留学生を受け入れることが多いようだ。つまり空き部屋を賃貸に出すようなビジネスライクな感覚だ。ホストファミリーと会話することでフランス語力の向上を図りたいなら、地方都市の方がいいかもしれない。

留学中に何度も旅して、あこがれの地となった南仏はどうだろう。アクセスのいいニースを拠点にすれば、日帰りで南仏の観光スポットをいくつも回ることができる。
こうして、私はニースでホームステイすることを決めた。
航空券のストップオーバーを利用して、別の国も旅したい。
ヨーロッパの西の果て、あこがれの地ポルトガルに行ってみよう。
こうしてポルトガル一人旅をニース留学にドッキングさせるという計画を立て始めた。

愛読書は「深夜特急」

沢木耕太郎さんの「深夜特急」という紀行小説をご存じだろうか。バックパッカーたちのバイブルとよばれている小説だ。
主人公は26歳の時、インドのデリーからロンドンまで乗り合いバスで行くという酔狂な旅に出る。バックパック一つを道連れに、なけなしのお金をかき集めて。
バックパッカーという言葉もこの小説で初めて知った。当時高校生だった私は、こんな旅があるのだとすっかり魅了された。香辛料の香りが漂う街を歩き、街の喧騒を聞きながら、作者と一緒に旅をしているようだった。
香港の市場の熱気に圧倒され、デリーの人の多い混沌とした様子に戸惑った。「深夜特急」は私の愛読書となった。
この小説の中で、主人公が旅の終わりを決意するのがポルトガルの西の果て、サグレスという町だった。小説の中で主人公が素晴らしいホテルに泊まり、夢のような気分を味わうのも印象的だった。あまりなじみのないポルトガルとはどのような国だろう。いつか行ってみたい、そう思うようになった。

ニースのマダムに学ぶフランス語と家庭料理

宿と航空券は自分で手配し、ホームステイ先は留学エージェントで紹介してもらうことにした。
送ってもらった資料の中に「ニースのマダムに学ぶフランス語と家庭料理」
という面白そうなタイトルを見つけた。フランス語と料理をいっぺんに学べるなんてお得だ。私はこの家庭を紹介してもらおうと決めた。
事前にもらった情報は家の住所、電話番号、世帯主の職業、そしてプール付きだということだけだった。情報量の少なさに多少の不安を感じながらも、初の一人旅&留学という冒険にワクワクしながら出発した。





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