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ふと思い出した、伝え下手な夫の話。

息子ふたり、3歳児と0歳児の頬肉は、立派なものです。
角度によっては、クレヨンしんちゃんのようなフォルム。
ムチムチ、すべすべ。

「たまらんね、ほっぺた。」
そう私が言うと、
「それに引き換え俺は…」と夫。

「10年くらい前の自分は、今の自分がこんなに、頬肉がこそげていることを、想像すらできなかったな。」

たしかに。
結婚したばかりの頃の夫は、身長180ないのに体重が90キロに届いてしまう寸前でした。

夜な夜な、オンラインゲームをしながら、日本酒とスナック菓子のコンボを、寝る直前まで。
寝ているときのイビキも特大で、しかも時々止まります。
私は気が気ではなく、寝付けなさのあまり、一時期耳栓を使っていました。

晩ご飯も晩ご飯で、しっかりと食べていました。

一度、救急車を呼んだこともあります。
食後、お腹が痛いとトイレにこもり、しばらくしても出てこないので様子を見に行くと、ドアを開けたところで倒れ込み、脂汗をかいて、会話もろくにできないほどだったのです。

運ばれているときに何を食べたか尋ねられ、私が「晩ご飯はクリームシチューと、ご飯と…」と説明していると、
「その前に、サンマの刺身も食べました」と夫。

し、知らなかった。
私が帰宅する前にも食べてたの!?
しかも今、さっきまでより、平然と喋った…?

「もしかしてお腹、平気になってきた?」と訊くと、うなずく夫。
救急隊員さんに「一番痛かったときが10だとしたら、今どのくらいですか?」と訊かれ、「1か2ですかね」と答える始末。

赤信号の交差点をぶっちぎって行く救急車の中で、みるみる血の気が戻ってくるその顔を見て、気まずくなってきました。

「サンマの刺身を食べたとなると、アニサキスなども心配ですから、一応きちんと調べましょう」と言われ、救急搬入口から病院へ。

色々調べていただいた挙げ句、先生からは、
「胃の内容物が多すぎてよく分かりませんね。おそらく食べ過ぎでしょう」との診断。

お察しいただけますでしょうか、私の脱力感。

ただ、私も甘くて、「自分も、朝なかなか起きられない、だらしないところがあるからなぁ」と、夫の食べ過ぎや飲み過ぎに苦言を呈することができずにいました。

一時期、さすがにまずいと思ったのか、ジョギングをしていたこともあります。
中学のときバスケ部だったそうで、運動は嫌いではないとのこと。

ある日、帰宅すると夫の姿がありません。
部屋の電気はついていて、スマホも財布もあるけれど、本人がいない。

事件?誘拐?なにごと?
110番すべきか、少し自力で探してからのほうがいいのか、混乱していると、汗だくの夫が何食わぬ顔で帰宅。

「走ってきたー」

「いきなりいないからびっくりしたよ。私にメールくれるなり、メモを残すなりしてくれないと、何かあったのかと思っちゃうじゃん」

すると夫。

「え?メモ残してたよ?」と、パソコンのマウスをシャシャっと動かし、「ほら」

Googleマップをスクショしてペイントに貼り付け、走るつもりのルートに色を付けたものが画面に表示されました。

そんなもん、わかるかーい!

時間が経ってモニターが真っ暗になっていたので、パソコンの電源がついていることにも気付きませんでしたし、そこにそんなメッセージを残しているとも思いませんでした。

そんな手の込んだことをしなくても、
「何時くらいまで走ってくる」とメールをくれれば済むでしょ、と言うと、
「ほほう、なるほど」と夫。

伝え方、下手っぴかーい!

お察しいただけますでしょうか、私の脱力感。
(2回目)

そして、ジョギングの成果は特に見えず。
と言うより、成果が出るまで継続できず。

そんな夫も今は、その頃より10キロ痩せました。
19時以降は何も食べませんし、21時台に長男と一緒に床についてくれます。
暖かい時期は自転車で、保育園への送迎をしてくれます。
長男との生活で、悪習慣とキッパリおサラバでき、それでも標準よりは少し太めですが、印象が随分変わりました。

それで、冒頭のような会話になったわけです。
10年前、夫も私も想像できませんでした。
子どもたちの頬肉を可愛い可愛いと言っていることも、そう言っている夫の頬肉が激減していることも。

伝え下手っぷりは、今でもたまに発揮してくれますが、大抵笑って済ませてしまうくらいには、私も慣れっこになってしまいました。

語彙の少ない3歳児と、ちょっと天然な39歳児のコミュニケーション。
じれったくも面白い、変な親子です。
(自分のことを完全に棚に上げている)

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