見出し画像

新型コロナウイルスに関する動向と予測

【新型コロナウイルス感染者数推移と今後の予測】
上記のグラフは各国の新型コロナウイルス感染者数推移です(The Financial Times)。★印がつけられているのが、全国的なロックダウンが行われた日です。ロックダウンの効果が出て感染者数が抑制されると、その効果は2~3週間後にチャートに反映されます。ロックダウン(都市封鎖)してもそれ以前の感染者数は変わらないので、効果が出るまでに最短で20日間必要になります。これで、今後2~3週間の状況をほぼ正確に予測できます。ただ、いったん終息したかのように見えても、インフルエンザのようにまた流行する恐れもあります。現時点で予測が可能なのは直近2~3週間にとどまるかと思われます。

【経済損失】
各機関が見積もっている経済損失に関する記事を紹介します。

世界経済、500兆円超失う IMFマイナス3%成長予測
新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済が縮小の危機にある。移動制限などに伴う経済損失は500兆円を超す可能性もある。国際通貨基金(IMF)は14日公表した世界経済見通しで、2020年の世界経済の成長率予測をマイナス3.0%へ下げた。各国は800兆円超の財政出動で応戦するが、感染を早期に封じ込められるかは予断を許さない。感染抑制に力を尽くしつつ、将来の経済回復へ確かな手を打てるか。成否はここ数カ月…
出所:日本経済新聞

アジア開発銀行、新型コロナウイルスによる世界経済損失は最大4.1兆ドルと発表
アジア開発銀行(ADB)は4月3日、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大が与える世界全体の経済損失を最大4兆1,000億ドルと予測し、世界全体のGDPを最大4.8%押し下げるとの試算を発表した。世界全体の経済損失を最大3,470億ドル、GDP比で最大0.4%と予測した3月6日付の発表(2020年3月18日記事参照)から1カ月あまりで大きく下方修正した。
ADBは大幅な下方修正の理由について、世界各国が出入国規制や都市封鎖(ロックダウン)といった新型コロナウイルスの徹底的な封じ込め政策を採用することによって世界経済に大きな影響が生じているとした。ただし、試算にあたって感染拡大による海外送金の途絶や緊急医療コストなどの要素は考慮していないとした。
ADBは、影響を各国・地域別に試算した結果、米国は最大1兆1,502億ドル(GDP比5.6%)の経済損失になると試算した。そのほか、ドイツ(2,236億ドル、同5.7%)、英国(1,722億ドル、同6.0%)、タイ(234億ドル、同4.6%)、インドネシア(99億ドル、同1.0%)、シンガポール(95億ドル、同2.6%)、ベトナム(72億ドル、同2.9%)、インド(136億ドル、同0.5%)、などと試算した。日本については最大2,708億ドルの経済損失(GDP比5.5%)のGDP押し下げになるとした。
出所:Jetro

今後の感染拡大ペースや終息時期も不透明なため、世界経済・日本経済の見通しを複数のシナリオで提示する。本予測は、一定の前提に基づき試算したものであるが、日々状況は変化しており、今後の世界の感染拡大の深刻度や期間、各国の政策対応とその効果、金融市場の動向等により試算結果も変わるため、幅をもってみる必要がある。
シナリオ①:経済活動抑制のピークアウトが6月末の場合
— 20年の世界経済成長率はコロナ危機前の前年比+2.7%から+0.5%へ下方修正
— 米国▲0.4%、欧州▲1.9%、中国+2.3%、経済損失は世界全体で200兆円(GDP比2.2%)
シナリオ②:経済活動抑制のピークアウトが12月末の場合
— 20年の世界経済成長率は前年比▲0.5%へ下方修正(※09年以来のマイナス成長)
— 米国▲1.7%、欧州▲3.3%、中国+0.4%、経済損失は世界全体で320兆円(GDP比3.4%)
日本のGDP成長率は、19年度、20年度ともにマイナス成長を見込む。上記シナリオ①では、19年度が前年比▲0.3%、20年度が同▲0.5%であるが、シナリオ②では、20年度が同▲1.7%までマイナス幅が拡大すると予測する。経済損失はシナリオ①で▲10兆円(GDP比1.7%)、シナリオ②で▲16兆円(同2.9%)となる。GDPギャップは一時的に▲20兆円(潜在GDP比4%)程度まで拡大する見通し。
出所:三菱総合研究所

World Economy Faces $5 Trillion Hit That’s Like Losing Japan
The coronavirus pandemic is set to rob the global economy of more than $5 trillion of growth over the next two years, greater than the annual output of Japan.
That’s the warning from Wall Street banks as the world plunges into its deepest peacetime recession since the 1930s, after the virus forced governments to demand that businesses close and people stay home.
Although the downturn is predicted to be short-lived, it’ll take time for economies to make up the lost ground. Even with unprecedented levels of monetary and fiscal stimulus, gross domestic product is unlikely to return to its pre-crisis trend until at least 2022.
That’s a similar timescale to the aftermath of the global financial crisis just over a decade ago, though the recovery could yet prove even more sluggish than economists are predicting.
JPMorgan Chase & Co. economists put the lost output at $5.5 trillion or almost 8% of GDP through the end of next year. The cost to developed economies alone will be similar to those witnessed in the recessions of 2008-2009 and 1974-1975.
Morgan Stanley says that despite an aggressive policy response, it’ll be the third quarter of 2021 before GDP in developed markets returns to pre-virus levels. Deutsche Bank AG says the “lingering cost and scarring effect” will leave the U.S. and European Union economies alone $1 trillion below pre-virus expectations by the end of 2021.
出所:Bloomberg

【ワクチン・特効薬開発状況、供給時期】
収束にはワクチンの開発・実用化・大量供給の時期が大きく影響すると言われています。研究機関・医薬品メーカーの動向を新聞記事やリリース等から紹介します。

新型コロナワクチン、9月にも実用化 英研究チーム
英オックスフォード大学の研究チームは、新型コロナウイルスへの感染を抑えるワクチンを、早ければ9月にも実用化すると明らかにした。候補となるワクチンは4月中に臨床試験を始める予定としている。
11日付の英タイムズが伝えた。研究チームを率いるサラ・ギルバート教授は「8割の確率で新型コロナに効く」と語った。世界保健機関(WHO)は2月時点で、ワクチン準備までに最大18カ月程度かかるとの見通しを示していた。
ギルバート教授らのワクチンが早期に実用化できれば、世界中で広がる新型コロナの感染を食い止める効果が期待できそうだ。各国の厳しい外出制限で停止状態にある経済活動も、平常時への復帰が大幅に早まる可能性があるとされている。
新型コロナのワクチンを巡っては研究機関や製薬会社が開発を競っている。米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は2021年の早い時期に供給する見通しを示している。日米の主要7カ国(G7)はワクチン開発を共同支援することで合意している。
出所:日本経済新聞

コロナワクチン 開発加速 J&J、来年初めにも提供
新型コロナウイルスの感染問題が深刻化する中、これまで5年以上かかるとされた予防ワクチン開発の壁を破ろうと企業が動き出した。米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は30日、ウイルスの遺伝子情報を使った短期製造が可能なワクチンを開発したと発表した。臨床試験(治験)を9月までに始める。米モデルナや日本のアンジェスも類似の技術で短期の開発を急ぐ。実用化には課題もあるが、競争が病気予防のビジネスを一変…
出所:日本経済新聞

コロナワクチン・治療薬開発へ協定 大阪府市や阪大
アンジェスのワクチン治験、7月に前倒し
大阪府と大阪市は14日、新型コロナウイルスのワクチンや治療薬の開発を急ぐため、大阪大や府立病院機構などと連携して臨床試験(治験)や研究を行う協定を結んだ。大阪大発のバイオ企業「アンジェス」が開発に取り組むワクチンの治験は、当初予定から2カ月早め、7月に開始する。
吉村洋文知事は「(ワクチンは)9月に実用化を図りたい」と述べ、年内に10万~20万人への投与を目指す考えを明らかにした。
他に協定を結んだのは、府立大と市立大を運営する公立大学法人と大阪市民病院機構。各機関で取り組む研究を情報共有するほか、開発手続きの効率化や、国の財政支援を府や市が求める。吉村氏は「大阪の医学を結集して世界的に求められるワクチン開発に取り組みたい」と述べた。
ワクチンの治験は、まず感染者との接触が多い医療従事者向けに投与する。アンジェスは当初、9月の治験開始を予定していたが、協定により7月から大阪市大で治験を始めることが可能になった。研究に関わる大阪大大学院の森下竜一教授は「府内の医学機関と連携し、国内初のワクチン開発を目指す」と述べた。
出所:日本経済新聞

アンジェス、新型コロナワクチン開発の名称を特許出願
アンジェス(マザーズ、4563)は1日、新型コロナウイルスのワクチン開発に関し、大阪大学と共同で発明の名称「コロナウイルス感染またはコロナウイルス感染に伴う症状の予防または治療ワクチン」を特許庁に出願したと発表した。
アンジェスは大阪大学、タカラバイオ(1部、4974)、ダイセル(1部、4202)とともに新型コロナワクチンの開発に取り組んでいる。
出所:日本経済新聞

新型コロナに貼るワクチン、米ピッツバーグ大学が開発
米ピッツバーグ大学の研究者らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の表面にある突起状のスパイク(S)タンパク質を抗原(攻撃の標的)とし、微細な針を並べた「マイクロニードルパッチ」で投与するワクチン候補を開発し、マウスで抗体価の上昇を確認したと1日に報告した。
研究者らは、SARS-CoV-2との類似性が高い重症急性呼吸器症候群(SARS)と中東呼吸器症候群(MERS)のコロナウイルスに関する研究を行ってきており、免疫反応の誘導において重要なSタンパク質について、豊富な情報を持っている。こうした経験が速やかな新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン候補の開発に結びついた。今回開発したワクチンは、先に臨床試験が開始された、メッセンジャーRNA(mRNA)ベースのワクチンとは異なる。
ワクチンは、多数の微細な針がシート状に並んだマイクロニードルアレイ(MNA)を使ったマイクロニードルパッチで皮膚から投与する。糖とタンパク質からなるMNAは、皮膚に貼ると溶解し、含まれている抗原分子が浸透して、強力な免疫を誘導する。貼り付けても痛みはないという。マイクロニードルパッチのSARS-CoV-2ワクチンをマウスに投与したところ2週間で中和抗体が誘導されたという。
マイクロニードルワクチンは、使い捨て注射器などの滅菌に用いるガンマ線照射を行っても、その効果を維持していた。この特性は、ヒトを対象とする製品化において重要だ。また、Sタンパク質の製造には細胞を用いるため、スケールアップは容易だ。精製とマイクロニードル化も工業規模で行えるうえに、完成品は室温での輸送と保管が可能だという。
現在研究者らは米食品医薬品局(FDA)に臨床試験の開始許可を申請するための準備を進めており、今後数カ月以内に安全性を確かめる第一相の臨床試験を開始できると予想している。臨床試験終了までには通常なら1年以上かかるが、これまでに経験したことのない事態であるため、商品化までの過程が加速される可能性はあると、研究者らは考えている。
出所:日本経済新聞

米Pfizer社、新型コロナのワクチンは2020年4月末、抗ウイルス薬は3Qに臨床試験へ
米Pfizer社は2020年4月9日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止に向けて他社や研究機関と対応を連携している開発プログラムについて、進捗状況を報告した。また、同年3月にドイツBioNTech社と合意後に即時着手したCOVID-19予防ワクチンの共同開発について、正式決定した契約内容を明らかにした。
(1)SARS-CoV-2に有望な抗ウイルス薬候補はプロテアーゼ阻害薬
 Pfizer社は、抗ウイルス薬の候補化合物スクリーニングを行い、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の3C-like(3CL)プロテアーゼを標的とする阻害化合物のリード候補と類縁体を同定した。今後、解析データに基づき前臨床の確証実験を行い、作用特性や静注経路での投与適用性など、必要な検証作業を進める。結果次第では、臨床試験の開始を予想より2カ月から3カ月前倒しして、2020年第3四半期に開始できるように準備を加速する。
(2)COVID-19のmRNAワクチン候補BNT162は2020年4月末に臨床試験開始予定
 Pfizer社がBioNTech社と2020年3月に提携合意したmRNAベースのワクチン候補BNT162の開発プログラムでは、米国と欧州の複数機関を実施施設として両社共同で臨床試験を進める計画で、各国当局からの試験実施承認を経て、早ければ4月末までには開始する。さらに、2020年末までには数百万回分の試験薬を供給できるようにし、そして2021年内には、億単位の投与回数分を確保できる製造規模に拡大し、実用化に向けた準備を加速する。
(3)抗SARS-CoV-2薬候補としてのアジスロマイシンについて情報共有
 Pfizer社では、マクロライド系抗生物質アジスロマイシンをSARS-CoV-2に対する抗ウイルス薬として活用できるかどうか、既に報告されているin vitroデータや臨床データを解析、評価している。それに基づく一定の結論が得られたとして、Clinical Pharmacology and Therapeutics誌に発表することが決まったため、そのオープンアクセスのレビューを通じて情報を共有し、今後のCOVID-19治療研究への活用を促す。
(4)肺炎球菌とSARS-CoV-2の関係性から医療現場でのCOVID-19リスクを実態調査
 Pfizer社は英Liverpool School of Tropical Medicineと協力し、肺炎レンサ球菌とSARS-CoV-2との相互作用の視点から感染リスクや重症化リスクの実態を明らかにするための2本の試験(SAFER、FASTER)を開始した。SAFER試験では、Royal Liverpool Hospitalの最前線で働く医療従事者100人を対象としてSARS-CoV-2の感染率、肺炎球菌のコロニー形成動態を調べる。FASTER試験では、同病院でコロナウイルス感染が疑われる感染症病棟の入院患者400例を登録し、SARS-CoV-2感染に起因する肺炎球菌肺炎の発症リスク、また、SARS-CoV-2と肺炎球菌の双方に同時感染した場合の重症化リスクを解析する。今後数カ月で試験データを公表する。
(5)トファシチニブの肺炎適応可能性を評価中
 Pfizer社が開発したJAK阻害薬「ゼルヤンツ」(トファシチニブ)がSARS-CoV-2感染に伴う間質性肺炎の治療薬になり得るかを評価するため、第2相研究者主導研究としてイタリアUniversita Politecnica delle Marcheで患者登録を開始した。同社資金で行われている目標登録50例の単群前向き非盲検試験で、関節リウマチや潰瘍性大腸炎に対する抗炎症薬として承認されているトファシチニブの肺炎に対する効果を判定する。1日2回2週間の経口投与で、動脈や肺胞内の酸素分圧を指標とした人工呼吸器の必要性を主要評価項目とする。
 トファシチニブの重症肺炎への適応拡大については、Pfizer社は他の研究機関とも協力し、新たな試験計画を協議している。COVID-19に伴う肺胞の炎症に対し、免疫関連炎症反応に関与するサイトカインのシグナル阻害というJAK阻害薬の作用メカニズムが症状緩和に寄与し、結果的に急性呼吸窮迫症候群を回避すると想定している。
出所:日経バイオテク

【収束時期】
新型コロナウイルスはいつまで続くのか、最も気になるところですが、科学的根拠のある予測はできていません。希望的観測は無意味だと思ってください。長期戦になることを覚悟して、最悪のシナリオを想定して体制を整えてください。参考になりそうな記事やコメントを紹介します。

新型コロナは1年で終息するのか 五輪延期でも長期戦に
「新型コロナウイルスはインフルエンザのように暖かくなると消えてしまうウイルスではない。数カ月から半年、あるいは年を越えて闘い続けていかなければいけないと考えている」
 政府の専門家会議メンバーで日本感染症学会の舘田一博理事長は今月9日の会議後の会見でこう述べ、新型コロナウイルスの封じ込めの難しさを強調した。
 同会議の見解にも「国内での流行をいったん抑制できても、しばらくはいつ再流行してもおかしくない状況が続くと見込まれる。世界的な流行が進展していることから、国外から感染が持ち込まれる事例も繰り返されると予想される」との一文が盛り込まれた。
 同じコロナウイルスを原因とする感染症をめぐっては、重症急性呼吸器症候群(SARS)は2002年11月の発生確認から8カ月後に世界保健機関(WHO)が終息宣言。一方、12年9月以降に広まった中東呼吸器症候群(MERS)はいまだに世界的な終息宣言に至っていない。
 舘田氏によると、一般的に風邪の原因となるコロナウイルスは一年中存在する。仮に現在流行の中心である北半球の欧米やアジアなどでおさえ込むことに成功しても、遅れて感染が広がりつつある南半球のアフリカで流行しているものが再び北半球に持ち込まれれば、年間を通して広がり続ける恐れがあるという。
出所:産経新聞

山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信
数年の長期戦になるかも(ハーバード大学の予測)

Kisller et al., Projecting the transmission dynamics of SARS-CoV-2 through the postpandemic period. Scince 4月14日オンライン版の内容説明
・ベータコロナウイルス
新型コロナウイルスの正式名はSARS-CoV-2でベータコロナウイルスの一つです。人間に感染するベータコロナウイルスは他に、SARSの原因ウイルス(SARS-Cov-1)、MERSの原因ウイルス、そして普通感冒の原因ウイルス(HKU1とOC43)の4種類があります。SARSとMARSは、致死率も高く、感染者の同定と隔離により封じ込めることが出来ています。一方、HKU1とOC43は感染しても無症状であったり、軽い風邪の症状のみの場合がほとんどのため、感染者の封じ込めは不可能です。さらにHKU1とOC43に対する抗体は、1年くらいで消失します。また冬になるとウイルスの力が増す特徴があり、HKU1ととOC43による普通感冒は毎冬、流行を繰り返しています。季節性インフルエンザと同じ特徴です。
・新型コロナウイルスの感染パターンの予想
新型コロナウイルスも、感染者の多くは無症候か軽症のため、感染者の同定と隔離による封じ込めは困難と考えられます。今後、どのような感染様式を示すかは、抗体の寿命、季節性の有無、抗体の交差性(HKU1やOC43への抗体がどの程度、新型コロナウイルにも効果があるかで決まります。一番、需要な要素は、抗体の寿命です。もし抗体の寿命が1年程度で、対策を何も取らないと仮定すれば、毎年の大流行を繰り返すと予測されます。抗体の寿命が2年であれば、隔年で大流行します。一方、抗体の寿命が半永久であれば、今年のパンデミックので感染は終息することになりますが、人口の半分以上が感染し、医療は間違いなく崩壊します。
・活動制限はどれくらい続けるべきか(1回のみの対策の場合)
この予測の大前提として、感染拡大は、人口の半分以上が感染し、いわゆる集団免疫の状態になるまで続くと仮定しています。また新型コロナウイルスに対する抗体は半永久的に持続し、一方でHKU1やOC43への抗体では影響を受けないとしています。対策の最大の目的は医療崩壊を起さないことです。アメリカでは人口1万人当たり、重篤患者用のベッドが0.89あると考えられています。したがって、各時点における重篤患者数がこの数字以下にする必要があります。何も対策をしないと、5月くらいにはこの数字が20以上になってしまいます。強力な活動制限を行うと、医療崩壊を防ぐことが出来ます。しかし、活動制限を解除すると、数か月後にはまた大流行が起こり、医療が崩壊すると予測しています。活動制限を継続すると、流行も医療崩壊も抑えることが出来ます。しかし、長期の活動制限は社会や経済の崩壊をもたらします。また人口に占める感染者の割合が増えず集団免疫が成立しません。活動制限を中断すると、すぐに大流行が起こる状態が続くことになります。
・対策を繰り返す場合
医療崩壊を防ぎ、しかも徐々に感染者を増やして集団免疫を成立させるためには、活動制限を断続的に行う必要があります。
図Aは季節性がないと仮定した予測です。数か月の活動制限を、短い間隔で何度も繰り返す必要があると予想されます。人口における感染者数の増加が緩やかで、2022年でも50%、すなわち集団免疫が成立しませんので、それ以降も断続的な対策が必要です。
図Bは季節性があると仮定した場合です。対策の継続期間や、間隔を、少し緩めることが出来ますが、やはり2022年以降も継続が必要である。
図CとDは、医療が整備され、重篤患者用のベッドが2倍になったと仮定した予測である。Cは季節性なし、Dは季節性ありの予想です。対策をかなり緩めることができ、2022年には集団免疫が成立します。重篤化を減らす治療薬や有効なワクチンが完成すると、同様の効果が期待できる。
(コメント)
1年どころか、数年の戦いになるという、厳しい予測です。新型コロナウイルスへの抗体の寿命を半永久と仮定していますが、HKU1やOC43と同様に1年程度で抗体が消失するとすれば、状況はより厳しくなります。医療体制の整備、治療薬やワクチンの開発に全力を尽くすととともに、長期の活動制限を強いられる方に対する経済的支援が必須です。
日本では、これまでのところ、武漢、イタリア、ニューヨークのような爆発的な感染者増大が起こっていません。一方で行動制限は、最も緩い国の一つでもあります。なぜ緩い対策でここまで持ちこたえているのか、現在のところ不明です。日本特有の何かがあるはずです。その何かを明らかにし、予測に組み込むことが、日本での対策を長期視野から決定するために必須と考えられます。
出所:山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

今後は情報のアップデートの他、各業界別・トピック別の動向などもまとめていきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?