【勝手におすすめ本⑤】コードネーム付新曲視唱

私の独断と好みで選ぶ音楽書を、勝手に紹介するシリーズの第5回。

本、というより課題集ですが、
さまざまな音楽能力の底上げをしてくれる教本、
「コードネーム付新曲視唱」です!

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【糀場富美子・藤原豊・渡辺寛 共著『コードネーム付 新曲視唱』;音楽之友社】



数年前に、某音楽大学の付属高校に臨時で教えに行ったのですが、
そこの高校で1年生の時に使う課題集だということで紹介された本です。

ここの高校は2年生から和声の授業があるのですが、その前にコードネームを覚え、全専攻の方がコードを弾きながら歌うのが課題になっており、その方針に感激して私もレッスンで生徒にすすめるようになりました。今、ウチにレッスンに来ている生徒の半分はこの教本を使っています。


特におすすめは、

・コードネームを勉強したいが、何からやったらいいかわからない人
・和音の勉強を紙の上でしかしてこなかった人
・視唱が苦手で、和声や調性を感じながら歌う練習がしたい人
・伴奏付けが苦手な人

などなど

実用的で、音楽を勉強する上でも、演奏、譜読みの時にも大いに役立ってくれること間違いなし!です。


以下、私の勝手なおすすめポイントをまとめてみます。

①和声感、調性感を育む

よく試験にあるような新曲視唱は、楽器の助けなしに自分の声だけで歌うものです。なので、市販の視唱課題も単旋律のみの課題のものが多く出ています。

しかし、実際にソルフェージュで大事なのは、

・自分の声だけで歌う
・ピアノなどの楽器、他の声に合わせて歌う

ことの2つどちらも!です。

なので、偏らずに訓練したいし、
自分だけでアカペラで歌う際にも、頭の中では和声なり他の音がなってるような状態を作りたいもの。その「和声感」「調性感」を育むためにも、コードを弾きながら歌う体験をたくさん重ねることが必要だと思います。

生徒にやらせてみて思うのは、他の音に「合わせる」という体験が今まで乏しかったことがよくわかることです。
案外、意識しないと自分の声、ピッチのことばかり考えていることが多いです。自分で弾いている和音の中の音を歌っている、という感覚を体感すると、普段から他を聴く耳ができ、自分の立場、他の音との関係・距離がわかってくると感じています。

②和音の種類を「手」で「耳」で覚える

和声に入る前にコードネームをまず習得してしまう、というのが非常にいいことだな、と思った最大の理由は、和音の種類(○三和音、○七の和音など)を弾くことを積み重ねて叩き込んでしまえることです。

何度も書いていますが、和声をやりたい、勉強したい、となったら、和音の種類、度数は瞬時に出てくるレベルには達していてほしいです。
「属七の和音は、長三和音に短3度だから・・、えっと長三和音はまず長3度+短3度で・・」といちいち考えていたら何にもなりません。

長三和音とは、短三和音とは、属七とは、減七とは・・
全て「手の形」と「響き」を覚えてしまうことが、習得の近道です。
ピアノが苦手な方でも、コードは少し訓練するだけでメキメキと上達します。
最初は難しかったら、ルート音と歌だけから始めて、そのうち、コードのみ→コードと歌、と段階を踏むと良いと思います。

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(前掲書;p10。一番最初のページです。Ⅰ、Ⅳ、Ⅴのみの基本からスタート。)

ちなみに、私はレッスンの時は、この本を使いながら補助的に、私が鳴らした単音を聴き、それを根音にして長三和音や属七、減七等を弾いてもらったり、私が鳴らしたコードを、コードネームで答えてもらったり、などもしています。とにかくたくさん和音を聴く、触れる機会を作っています。


なお、こちらの新曲視唱の本は、調号が3つまでしか出てこないので、時々市販のポピュラーやミュージカルの譜面で調号の多いコード譜をはさむこともあります。

➂伴奏付け、コード付けの前に

この本がだいぶ慣れてきた人は、今度はコードのついていない視唱の本、また童謡や小規模なポピュラーの曲などの旋律にコードを付ける練習を並行しています。

コード付きの視唱で身に付くもう一つ良いところは、この旋律に合う和音、すなわちどれが和音構成音でどれが非和声音なのか、というのを経験に基づいて見つけられる、という点です。

特にこの本は、和音の種類別に段階を経てコードの種類を増やしている一方で、
旋律も、最初は2度、3度音程から始まり、経過音や刺繍音、倚音などの非和声音を学びながら、音程が広くなっていき、進めていくに従って歌の難易度が上がるとともに旋律も多様化します。

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レッスンでもコード付き視唱から始めた人は、随分スムーズに和音をつけられるようになっています。

そして、何より、和音を、伴奏を付けるのが楽しそう!
そうなんです、コードってとっても楽しいのです。(^^♪
ピアノを弾く人はもちろん、普段旋律楽器や声楽をやっていてピアノを弾かない人も、「和音を感じて歌う」体験をたくさん重ねてみてくださいね。



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なお、ある程度の知識がある方に向けて書いていますので、これじゃついていけない、という方は、ぜひ個別レッスンに!その人にあったレベルで解説します。(対面、オンラインどちらもあり)
レッスンご希望の方はrie3_e_mail@nethome.ne.jpまで。

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