選べない不自由が、選ばない贅沢に変わる瞬間

「IJIRO」の話はおいておいて、ちょっと寄り道。

髪が染められないから気後れしていた時期があった。

わたしはアトピー性皮膚炎を幼児期から持っていて、それは進退を繰り返しながらいまも塗り薬と飲み薬を併用して過ごしている。
どちらも処方された薬であって、塗り薬は「ネリゾナ軟膏0.1%」だし、飲み薬は「アレジオン20mg」を一日~一日半の頻度で飲んでいる。

さて、このアトピー性皮膚炎を発症してから今日まで、何が一番不便であったかというと。
当時の流行にのれなかった」ことと、「それにのれない自分が嫌い」であったことだ。

中学校までは親に養ってもらっているという感覚が強いから、自我が確立した子供でも大人しく過ごしていたひとも、高校にはいるとそれまでより縛りがゆるくなっているからある程度の自由を獲得できる。
それこそ、髪を染めてみたりいまのスマホ、当時は今でいうガラケーを持ちはじめている。16才になればアルバイトもできるから、おこづかいと稼いだお金でよりお金を使うことができる。

そのなかでは流行に乗り遅れまいと周りにせっつかれるように、せっせと買う行為があったと思う。
だけども、そこでわたしは選択できた自由から選択しない不自由をもっていたのだ。
先述したアトピー性皮膚炎という病気が厄介なのは、皮膚に症状が出ているのはからだの一部分なんだけれども、それが収まるまでに長い期間を要することだ。

例えば、いま実際に私の体に症状がでているんだけれども、その場所は足の裏、土踏まずから親指にかけての側面を引っ掻いて皮が剥けてうっかりすると痒い。
なにか夢中になっているときは気にならないのに、リラックスしているときなんかはむずむずしてくるからかいてしまう。

皮膚の細胞が交代するまでには28日間くらいかかると言われているんだけど、掻いて傷になったらまず傷として処理されて、それから皮膚の修復にはいる。しかも修復中に痒くなるときがあって、そこで掻いたら一から傷の処理からのやり直し。だから遅いのだ。

そうなると、からだをいじるという行為が怖くてできなくなる。
だから高校のとき、当時の流行としてルーズソックスとガングロとか、茶髪はもちろんピアスをするために耳たぶに穴を開けるということもあった。
でも、そこではわたしがとった行動は「なにもしないし、それはできない」という選択をし続けて、いまも髪を染める行為はしていない。

一度それをしてしまって、もしからだが異常だと気がつけば痒みがすごいし、それを修復するのに時間がかかるし、良いことが何もない。

つまり、流行にのるメリットよりもからだを守るために地味でいるデメリットを受け入れていまに至るのだ。

染色材を選ぶ自由から、スキンケアを選ぶ自由をとる

髪も染めないでピアスように穴を開けないで、自分をうまく見せる…うまくみせるは変な表現なので、飾れる自分とでも書いておきます。
いかに飾れるようにできるかは、友人と遊ぶのに必要な部分ではあります。一点だけでもブレスレットなどで自分を引き立てるものを持っていれば品よく自分を見せられる。

過度な演出よりも、最近はさりげなさが自分のなかではおしゃれの基準になってきている。
じゃあどうしよっかなーと3~4年くらいまえに始めたのが、髪を染めない代わりに「椿油で髪を保護する」ようになったことだ。
使う椿油は黒ばら本舗さんの椿油・72ml なんだけども、価格は店にいくと900円くらいで買えて、ショートカットの長さで半年はもつ。一回につかう量は5円玉くらいしかつかわないけど、伸びがいいので充分です。

髪を染める手間とお金より、変にいじらないで保護するだけでもいいかな、という感じ。
先日、祖母にも「あんたの髪は黒々としてていいねぇ。椿油は黒い髪をより黒くする作用でもあんのかね」みたいなことも言っていたので。

頭皮も肌だし、スキンケアに余念がないねと言われればそれはそうなんだけど、逆に黒い髪はそんなに魅力ないかね?と聞きたくなる。日本にいればみんな基本は黒髪だし、アジア、アフリカも黒髪だけど欧米は金髪が多い。
だから、金髪の方がこっちに来れば目立つし、わたしたちが向こうにいけば目立つ。
掘りの浅い平たい顔でも、それは民族の違いであって掘りの深い欧米人のそれは特徴として捉えられる。

ありのままであるように生きるのが贅沢である。

ひとに良く見せようと思うから愚行に走るのであって、そうでなければそのままのわたしでよいのだ。
このことに気づくまでにずいぶん時間がかかった。
髪にかんしてはこれからも染めようとは思わないだろう。髪型を変えることに抵抗はないけど染めることにかんしては一切手をつけない。

「染めない贅沢」をわたしは手にいれて、身軽であることに気づいたのだから。

今回はこの辺で。

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