水たまり


                  

空は今日も高かった 風は季節を運んできて涙腺を撫でる 口腔内、微かに残る渋味に宥め言い聞かせる

(間断なく続く車道の往来を 眺め歩い
 ていくうちに 私を齧っていく 世界
(剥がれた爪、胸腺の奥を毟られ、リン
 パ液は流れて河となる
(細胞の抵抗値は尸の数で数えられる

霊柩車が走り出して行った 道は淡い灰色の残り香がする
手の届かない青色は足元に深く、地球の裏側を見せている
水の匂い、土の匂い、数時間前の名残にアメンボがすいすい笑う

運ばれてきた表情が風に持って行かれ 車道で幾往復かする白色の紙片は 見えない君とのやり取りを轍として受け止める 綺麗ではないですか 縒れてしまった紙と言うのは

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第三詩集『耳に緩む水』の収録した作品。
今度第四詩集『常夜灯』が出ます。7/18発行、予約受付中です。
よろしくお願いします。


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