西原真奈美詩集『迎え火』を読んで


西原真奈美詩集『迎え火』書影

赤を纏う。
情熱、覚悟、光、炎……。
そんな風に表現されるかもしれない。
栞を書かれた峯澤典子氏は「受け入れる」とも表現した。
西原真奈美詩集『迎え火』は、美しいと呼ぶには艱難が滲み,痛々しいと呼ぶには凛としている。
静かだが、静寂なわけではない。
ひそやかな息遣いや、希望のような光のゆらぎが、生きる意志を語りかけてくるように、読み手である私へ届けられた。
娘や父母という近しい存在ーー家族へ捧げられた詩集のようにも思う。
どの詩も完成されていて印象的な詩を挙げようとするとかえって迷ってしまうのだが、
「光源」「夏の氷室」「背中」「いつか砕けるものとして」など多くあり、そのうちの「背中」について触れてみたい。
「背中」散文詩の形を取り、日記のように始まる。がん告知からの“母”の闘病の日々が描かれていく。“娘”として支えても、見ていることの辛さ、看病・介護していても残ってしまう後悔。看取りまでの時間を経験した方が読む時、きっとこの細やかな心と同期して、さまざまな記憶や想いがオーバーラップしたのちに、想いを昇華していけるような、そんな気がする作品だった。
オラシオン、とは祈りという意味であることがあとがきにあった。その絵を纏う赤い詩集は、浄化の炎のようにも思えた。

原島里枝

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