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紙をめくるおと
薄いものが剥がれ 動き 畳まれる、おと
手が汗ばむ
紙が波打つ
波打った、紙のわずかな凹凸
呼吸している か み
職場まで電車に揺られる
タブレットがメインで紙は稀
アラート!
紙は紙でなく指でなぞるガラス面
精密機械の音階も、おと
――紙に似たとても違う別の何か
綴る心の体温までは変わらない、のか?
紙のおと、髪を搔き上げるおと、
神へ捧げる祝詞、噛み締めた歯の軋むおと
(いつか 上座に座った目上のひとが
面接の、かみを、捲るおと、
人生の大半を決める、その時に、
耳が聞いているのは、紙をめくるおと
神が仮初にも生業を与えるとき
しじまの掠れが心の底に落ちてくる)
事務的に打ち込み書き込んでいく日々
毎日たくさんの紙を触っているけれど
あの乾いたおとを 聴きたくて
人生の次のページを書きたくて
今も指先は めくる紙を
詩集『耳に緩む水』に収録した「紙をめくるおと」
朗読することも想定して音韻にも気を配りました。
事務員の生活ではありますが、多くの勤め人の生活に近いのではないかと。
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