スターウォーズEP6が「ジェダイの復讐」だった頃

わたしがスターウォーズを初めて見たのは中学生の時だった。
スターウォーズが公開されン十年が経ち、『昔の映画』になっていた。ファントム・メナスが公開されるのはまだ先の未来だ。

そんな時期だから、同年代はスターウォーズを知らなかった。「昔すごく流行った映画だ」という大人の言葉が信じられないほど、スターウォーズの話題は世間から消えていた。ある時、学校の図書館にスターウォーズの小説が置かれているのを見つけた。ほこりを被っていて、何年も誰も読んでないと感じた。そこではじめて「昔流行っていた、だから図書館に本がある」と流行を実感した。わたしはそれを夢中で読んでいた。わたしはスターウォーズが好きだった。

わたしは信じられないくらいスターウォーズの虜になっていた。正確に言うと「スターウォーズ エピソード6 ジェダイの復讐」が好きだった。
現在は「ジェダイの帰還」と訳し直されている。原題が「Return of the Jedi」なので「ジェダイの復讐」より「ジェダイの帰還」の方が原題の雰囲気に合っている。そもそも、ジェダイは復讐などしない。

強い力は、心の使い方で善にも悪にもなるというテーマを持った作品だ。「復讐」って、ちょっと的外れな翻訳だ。「ジェダイの帰還」になってよかった、本当によかった。
ジェダイの帰還。ジェダイが帰ってきた。ジェダイは平和の象徴でもある。平和が戻ってきた、ルークが無事に戻ってきた。そしてもう一人、ジェダイに戻った人物がいた。彼がジェダイに戻った。もろもろを込めての「Return of the Jedi」。「ジェダイの帰還」って翻訳した人は天才か。字面だけで泣けてくる。

わたしがエピソード6を愛しているのは、終わり方が好きだからだ。
ここでピーンときた人も多いだろうけど、とりあえず説明させてもらう。スターウォーズエピソード6のエンディングは改変されている。2001年にフォントムメナスが公開された。そこから新三部作が作られる。それとつながりを持たせるためにエピソード6のエンディングは新3部作の映像が挿入され、ダース・ベイダーの霊体が新三部作のアナキンに変更された。

まあ、それはいい。本当はよくないけどそれはいい。わたしは姉に嘆いたのだ。「なぜ変更したのか?オリジナルのが絶対にいい!」のにと。

姉は姉で考察していた。

「霊体が若いアナキンの姿だったのは、『アナキンに戻った』からだ。ダース・ベイダーの時期の彼はアナキンではなくダース・ベイダーだった。ジェダイの心を持っていたのはアナキンの頃であり、若い頃の姿なのだ」

なるほど。ベイダーはダークサイドに堕ちてからベイダーとして生きてきたからアナキンではないのだ。若返ったのではなく「アナキン」の姿に「戻った」のだ。

新三部作の映像の挿入のことも姉は言っていた。

「帝国を倒すために戦ったのはルークたちだけではない。一部の同盟軍だけではない。世界中の人が願って沢山の人達が協力したのだ。あの終わり方だと"ルークたちだけでお祝い"になってしまう。世界中、全宇宙が喜んでいるのだから、あの新規映像の挿入には意味がある」

姉はスターウォーズの大ファンだ。わたしより全然ファンだ。解釈がすごい。「なぜ変更があったのか?」を分析できるファンだ。愛情がある。ただ拒否反応を示すわたしとは格が違う。

わたしがスターウォーズを初めて見たのは中学生の時だった。
映画をあまり見ない子供だった。だからスターウォーズのラストは衝撃的だった。主人公は父親を救うためにずっと戦ってきたのに、父親は最後は死んでしまう。

「父さんを救うんだ」
「もう救ってくれたんだ、ルーク」

もう助からない。死は救いなどではない。その命が、心が救われたのだ。権力も強大な力も敵わない、愛の力が、心の強さが父親を救ったのだ。

全宇宙に平和は訪れたが、ルークは父親を亡くした。全宇宙の喜びの中でルークの心には悲しみが宿る。

ルークの悲しみの中、賑やかで楽しげな音楽を皆が奏でる。皆が祝福をしている。一抹の悲しさを胸にルークはその祭りに混ざる。本当に楽しいお祭り騒ぎなのだ。そのさなかでルークはアナキンの姿に戻った父親の霊体を見つける。父親は微笑んでいた。そしてルークは微笑み返し、また仲間の輪の中に戻っていくのだ。

ああああああああああああっ、めっちゃ良い終わり方ですね!ここね、音楽が明るくて民族的で、「ああ、平和になったんだ!踊っちゃおう!」みたいな音楽なんですね。みんなが純粋にお祝いしてる中で、ルークの切なさの対比が大好きなんです。もうね、こんなに楽しくてこんなに切ない終わり方があるんだ!って中2の私はドキドキして心臓がしめつけられました。

泣きました。嬉しい涙だし、悲しい涙だし、ハッピーエンドなんだよね?って感じられて、私の心にいつまでも突き刺さっています。

さて、今まで話したエピソード6のラストは大まかには変更はありません。ただ、音楽が変わっています。なんか…明るい音楽じゃなくて、荘厳な音楽に変わっています。ちょっと切ない音楽です。変更前は、一緒に戦ってくれたイウォーク族が実際に演奏してくれている曲、っていう演出なんですが、変更後はBGM扱いです。イメージBGM。

変更後は切ないシーンに切ない音楽を持ってきている。この演出!私の心にまったく響かない!大好きな、大好きなラストだっただけに、とてもとてもショックを受けました。いまだに立ち直れていません。

本当に本当に一番好きだった。わたしが見た映画で一番好きなラストだった。
でも監督にとっては違った。違ったから直された。わたしの感動は監督の感動とは違っていた。わたしはターゲット層から外れた。それだけのこと。

私が愛したスターウォーズ エピソード6が「ジェダイの復讐」だった頃、わたしはスターウォーズが大好きだった。そして、それはこれからもずっと心に突き刺さったまま、愛し続ける。



変更後を「特別編」、変更前は「劇場公開版」としてこちらのDVDに両方とも収録されています。どちらかのバージョンしか見たことない人はぜひチェックをしてみてくださ!(サブスクだと基本的に「特別編」です。「劇場公開版」も配信してくれないかな)


100円・500円・1000円からリコテキをサポートできます。漫画創作活動を続けるための資金にさせて頂きます。ありがとうございます!