パンデミックとコメディ

小さい頃から、お笑いというものが理解できなかった。怒鳴る人がいて、しばしば暴力が登場し、自分には理解できないタイミングでみんな笑ってる。理解できないということに少しコンプレックスもあったし、とにかく怒鳴る大人が苦手なのでテレビでそれが映ると部屋から退散することが多かった。一人暮らしを始めてから本当に縁が無くなった。

それがここ最近、人生初めてお笑い、というかコメディにはまり始めている。自分でも衝撃の変化。人はいくつになっても変わるってなんか嬉しい。

私がはまっているのは所謂アメリカン・コメディ。トレバーノアという南アフリカ出身NYC在住のコメディアンが毎日ひたすら時事問題についてコメディをする「The Daily Show (デイリーショー)」というもの。現在は「The Daily Social Distancing Show」と題名を一時的に変え、本人の自宅から配信されている。

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海外に出て、日本のお笑いと海外のコメディは根本的に異質なものだと学んだ。(海外と一括りに言っても国によって全く違うらしい。まだ未知の世界なので私はよくわかりません。いつか興味が出るといいな。)アメリカのコメディの中でも私が好きになってきたのは、色んな世間の話題を拾ってきて、それに対し痛烈な皮肉を飛ばし、笑いを誘うというもの。デイリーショーもまさにそれです。

コロナの影響で日々、色んなストレスにまみれて暮らしている。小さなことが積み重なって怒り、不安、悲しみで吹き飛ばされそうになる時がある。その主な理由が今住んでいるこのアメリカで起きている色んな政治的な動きや特定の影響力のある人物の発言、色んな州で起きている社会運動などなど。自分では何も変えられないのに、自分に直接影響を与える可能性が多いにあるものたち。もう、ストレスでしかない。

家に閉じこもり鬱々としていたって、その感情を向ける矛先がないからたまる一方。発散したくて掃除したり料理したりしたって、限界がある。そんな時、ストレスの元凶に対して小気味好いツッコミやジョークで揚げ足を取ったり批判したりしてくれるトレバーを見るのが楽しみになった。コメディなので必ず笑えるシーンがあって、あっはっはって笑っているうちにショーが終わり、気がつくと少しすっきりしている。

世の中には、「笑うしかない」出来事が起きる。コロナの時代はそれの連続だ。怒ったって泣いたって地団駄踏んだって、感染は止まらないし愚かで恐ろしい国の元首は愚かで恐ろしい政策や発言を続ける。好きなお店が潰れていく。明日は私も失業するかもしれない。なら、もう笑うしかないじゃない。

そんな時、コメディは多いに笑いに役立つと気がついた(遅まきながら)。幸せじゃない時にもちゃんと笑える、そして笑っていると少しだけど気分が上向きになる。筋肉運動から脳へご機嫌を連鎖反応させる。初めての体験。

「もう嫌だこんな生活ー!このやろー!」の気持ちを、それをネタにして笑わせてくれるコメディって素晴らしい。痛烈な皮肉が気持ちいい。言葉にならなかった遣る瀬無い思いが、ちゃんと形を与えられた瞬間の小気味良さ。

コメディ、いいじゃん。何これサイコーじゃん。

自粛生活が続いて無精髭生やしたトレバーのデイリーショー、スウェットでリビングから配信しててもそのセンスは全く錆びついてない。これからも私の怒り悲しみの発散の場として多いに活躍してくれ。期待してる。




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