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テレパシー

ある時私たちはタウリとエネルギーによるコミュニケーションのことについて聞いた。

「私たちの星では、言葉より感じたエネルギーの方に重きを置きます。言葉がエネルギーと違うときは嘘をついたということですから、お互いに見逃したりしません。嘘は本人にとっても、周囲にとってもよくないからです。嘘ではなく、迷いの時点で気がつきます」

「前にも聞いたと思うのですが、エネルギーがわかるのであれば、言葉を使う必要性はあるのでしょうか? テレパシーと私たちが呼ぶようなコミュニケーションができるのに、言葉を使うのはどうしてなのでしょう?」

「思考のプロセスは本人しかわからないのです。私たちは全体の存在というものを個人という存在にするために、全体から便宜上分断するシステムを内蔵しています。隔離するシステムのひとつが思考というプロセッサーです。これは全体のプロセスを刺激として取り込んだ後に思念というフィルターに通して分解するのです。そのフィルターは集団の中で作られた通念がもとになっています。この通念が地球と私たちの星で大きく違っています。しかし、通念を作り支え、維持するのも個々の思念です。クリエイティブな個人が新しい思念を持って生きると、通念は少しずつ変化します。システムは個人が個人であることに寄与しますが、システムの構成員である個人はシステムがシステムとして働くことに貢献します。どんなフィルターを持っていてどのように選択を行ったのか、何がその動機となっているのかということを述べるためにあるのが言語であるという認識なのです」

「エネルギーはどの時点で出るものなのでしょうか」

「エネルギーは選択を行うと出ます。選択肢が選択されていない時点ではすべての選択肢は実行可能なポテンシャルを持ち続けます。ポテンシャルがフォーカスを与えられると、エネルギーが方向を得て発せられます。そのエネルギーの中に迷いがあれば迷いが含まれ、自分や他者を欺こうとするものであれば欺きが含まれます。意図のエネルギーは必ず感覚的な違和感となって周囲に伝播していきます」

「相手が嘘をついた時、実際にはどのように注意するのですか?」

「そうですね、まずは出されたエネルギーを自分にそのまま当てて、出した人に返します。また、私たちの星では相手の発したエネルギーの違和感すべてに反応するサインがあります。「ンナッ」という音を発して、強く一度瞬きをし、首を振る、両手をバスケットボールを持つような形にして振る、自分の肩をすくめる、相手の体をチョンと触れるなどです。これらのサインはその部位が動かない人、手のない人、声が出ない人、耳の聞こえない人、目の見えない人など相手の状態によって変えますが、エネルギーを「トン」とそのまま返すだけでもたいてい伝わります。そのあと、あなたの選択に違和感を感じたけれど何があなたの中で起こったのか説明してもらえますか?と対話を始めます」

「地球人でも赤ん坊とならエネルギーでコミュニケーションが取れるとおっしゃっていましたが、大人たちも訓練などでその能力を取り戻すことは可能だと思いますか?」

「実際には失ったわけではありません。地球人が昔のある時点で通念として作り上げた、無視する、麻痺させるという方法が間違っているのではありません。意識体のエネルギーはフォーカスすることで方向性を得たり凝縮を始めたりしますから、エネルギーにフォーカスしないことでそれらをなかったことにしようという考えから、無視し、麻痺させることを選択したり、嘘をついて感じたことや事実と違うものを選択するという考え方を持つのは自然な流れだろうとも考えています。ただ、水が高い所から低い所へ流れる物理法則と同じように、一度感じてしまった感覚や感情も、どんなに無視しても事実として残ります。もっともらしい説明をして納得しようとしても、感じてしまったという事実を消し去ることはできません。だから、地球人がやっているのは感じてしまったことを何か別の目的のためになかったことにするという、水を低い所から高い所へ持ち上げるためのポンプを作るような新しい能力です。でも、ポンプそのものも、水が低い所から高い所へは流れないからこそ、その存在の意義を与えられていると、私たちは考えています。感じてしまった何かがあるからこそ、無視するとか説得して納得する必要がある、ということです。その能力を十分に使いこなし、世界平和へ向かわせる力としたいのであれば、あなたたちが問わなければならないのは、目的です」

「目的ですか」

「そうです。極端なことを言えば、平和や幸せを目的としているのに、そのための暴力や戦争や死刑や隔離や妨害という方法が通ってしまうのは、目的がそのための手段にこだわってそれを押し通すことに変わってしまっているのに気がつかないからだと思います。本来の目的から離れてしまったことに気付いてもらうことが大切だと思います」

「本来の目的に戻ればテレパシーのようなコミュニケーションが可能になるということでしょうか」

「端的にいえばそういうことになると思います。手段にこだわらなくてよくなると、不安が減りますし、自信を持って感じたことをもとに選択することができるようになります。そうなればエネルギーもよどみなく流れるので受信もしやすいものになります」

「なるほど」

続く

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