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「天使のたまご」解釈1回目

ちょっと前に見た「天使のたまご」が頭にこびりついて離れなくて。考えを整理したくて、見て考えたことをメモしました。
でも結局なにもわからなくて、最後の方は「わからん」が乱舞してます。
がっつりネタバレしてるので未視聴の方は注意。




とりあえず気になったところをつらつらと
(とても長い)


「魚が出たの」
「魚?」
「魚なんていないのに。追いかけても、どこにいないのに」
この会話は結構重要なんじゃないかな。わかんないけど妙に心に残る。 少年よりも、銛の男たちよりも、もしかしたら魚たちよりも、少女はこの世界を理解している気がする。
すごく、銛の男たちを憐んでいる、この世界の仕組みを憐んでいるように感じる台詞。

あの古代魚の影はまさに幻影で、本体はもしかしたら少女なんじゃないか。

それはそれとして、少年が少女の怯えを理解して、マントの中に少女を匿ってくれる図があったかくて好き。少女が密着具合に気まずくなってたら安心させるように肩を抱くのも、少女が微笑んでそれを受け入れるのも好き。かわいい。
なんでこの路線のままいかないの。

その前の、「少女が少年に水を差し出す→少年が要らないと断る→少女ムッとする」からの「雨降りの中ついてくる少年を少女が振り返る→雨よけにしていいと少年がマントを広げる→少女、いらないわとプイッとする」の仕返しの流れもめっちゃかわいい。
なんでこの路線のままいかないの……。

少年、親鳥についていく雛みたいだね。

そういえば少女と少年はどこまでも違う。
肌の色は真逆だし、少女は水を飲むし眠るのに、少年は何も口にせず眠りもしない。少女は壊れやすいたまごを抱えていて、少年は壊すための銃を担いでいる。 なんだろうこの対比は。

ていうか本当に「少年」なの?青年では? ……まあいいか。

「獣が石になるくらい遠い昔」って表現すき。

「僕たちはいなくなった誰かの記憶なんじゃないか」 「僕たちはどこにもいないんじゃないか」 に対する少女の「ここにいるよ」。少年を慰めたい一心で言ったよねきっと。

でも。

「たまごの中には天使がいるの。私が暖めて孵すの」
「知っていたよ。きっとそうだと思っていたよ」
彼は多分、「そうでなければいいのに」と思いながら一緒に居たんじゃないかな。 たまごが割れていたことに気づいた時、少女は悲鳴を上げて泣いたけど、少年は少女から天使の話を聞いた時、天使の化石を見た時に、同じように慟哭したかったのかもしれない。
天使の化石を見た時の「そんなまさか……」とありありと顔に書いてある表情が忘れられない。

そのあとは少女の語る「天使」をしきりに否定しているのも引っかかる。「聞こえる。小さな呼吸の音」「それは君の胸の音だよ」……
始めから「割らないと中身はわからない」と言ってたまごを割ることを示唆していたし、割れないというのならとたまごを放棄してほしがってたような気もするし。
少年自身、自分は手を下さず、少女自身にたまごと決別してほしかったんじゃないか。
(「たまごに何もしないで」に、多分何かしてしまうから何も答えないの、不器用で誠実やな〜と思う。いい人。)
(少年は少女の別側面でもあるような気がする。成長を望むもう1人の自分みたいな)

たまごを割る前。少女をベッドに横たえてからしばらく、じっと黙って考えて、考えた末に彼はたまごを割った。 少女が悲しむのを知っていたから、何も言わず出て行った。
「どこかへ行ってしまうの?」と寂しそうに惜しむように聞かれて、きっと少年も一緒に居たいと思っていたのに。

少女の悲鳴も。
単に「たまごが割れてしまった絶望」だけではないんだろうなと思う。 「たまごが割れたこと」「少年がいなくなってしまったこと」「どちらにももうきっと二度と出会えないだろうこと」……そういう絶望に対する悲鳴だったんじゃないかな。
少年が留まってくれていれば多分あんなに取り乱さなかったんじゃないか。 寝床を飛び出して追いかけて、もし少年に追いつけていても責めたりせずに「一緒にいて」とお願いしたんじゃないか。
……夢見過ぎかな。

「あなたはだあれ?」 「きみはだれだい?」
このやりとり。すき。
この台詞を聞いたとき、この2人は人物ではなく概念なんだなと唐突に納得した。何の概念かはわからないけど、名前を持って確立した個ではない、定義されたモノではない感じがした。
お互いに全てに忘れ去られたモノ、みたいな。

たまごの中身は結局明かされない。 でも多分、生まれてはいけないモノ。この世界の法に触れるモノなんじゃないか。

映画冒頭に映る、たまごの中で眠る鳥の瞼はわずかに動く。夢を見ている。
鳥は古代の生き物の最新の進化の形。古代魚は古代の生き物が進化せずに残っているもの。 もし少女が魚で、たまごは元々鳥で、魚の子として鳥が生まれてくることを望んでいるとしたら、これまでの進化を全て否定することになるんじゃないか。……まとまらない。

もしくは。何も入ってなかったんじゃないか。
とにかく、残されたものは何もなかったんだと思う。少女は多分、それも理解して悲鳴を上げた。



少年=鳥説

「あなたはだあれ?」と呼びかけられるのは。まずは鳥、そして少年。
少年って鳥なのでは??

「ノアの方舟伝説」では陸地の存在を知るために鳥を放ったらしい。そしてその3羽目が、陸地を見つけた証左にオリーブの枝を持って帰ってきたらしい。
……少年って忘れ去られた1羽目、2羽目の鳥だったのでは?長いこと彷徨って彷徨って、陸の証拠は持って帰れなかったけど、永い永い時間をかけて、自分のことすらわからなくなるほどの時間をかけてようやく、とにかく必死で戻ってきた鳥なのでは?わからん。

「あなたはだあれ?」って問いかけは放った鳥のことを忘れた人の問いかけなのかもしれない。わからん。

鳥なのだとしたら、天使の化石を見た時は出発地点(方舟の中)で死んでる3羽目を見て「おい3羽目……!!(お前もだめだったのか)」って絶望だったのかもしれない。

もしくは3羽目の鳥とか。
この世界での3羽目は1羽目2羽目と同じく陸地を示すものを持ち帰れなくて、永い永い時が流れて。3羽目自身、目的や自分自身のことを忘れてしまって、鳥を放った主人である少女も鳥を放ったことを忘れてしまって。
唯一心に引っ掛かってた方舟に戻ってみると、主人はもう大地のことは忘れて諦めてしまっていて、孵ることのないたまご(ありもしない希望)を愛でていて、自分の死骸(天使の化石)を見つけた時に3羽目は己の使命とその顛末に思い当たって、現状の絶望を知ったのだ、とか。

でも思い出したからには主人に大地を見つけて欲しくて、現実からの逃避先だったたまごを壊して、次の世代にその目的を託させる……忘れ去られた鳥が主人の新たな希望になる話だったのだ……とか?むむむ…

鳥かもしれないけど、キリストを暗示してそうな銃(十字架)をずっと背負ってるんだよな……。キリストなの?でも魚もキリストの象徴でしょ……少女もキリスト要素持ってない?わからん……。



結局わからない

少女が街を散策しているシーン。建物の中から窓越しに少女を見てる(何者かがいるような)カットが連続するとこ気になる。 少女は観測されていた……?誰に?わからん。視聴者にかな?わからん。

最初の何かを弄んでる手も謎だなあ。ノアの方舟の話がモチーフなら、自分が作り出したものを後悔してる神様かな。こねこねして、最終的に握りつぶすような動きをしてる……。

少年の服装が軍服のようで襟元は全然軍服じゃないのも気になる。あの戦車もなんなんや……一般通過戦車……。

結局わからないことだらけ。でも好き。何度も浸りたい作品。




二者間に愛はあったのだという主張


性的な暗喩がところどころに……というのは確かに。
けど「強姦があったのでは」って言ってる人割といるのはんん〜?という気持ち。

だってその前のやりとりがちゃんとあるやん……。
少女が置いていったたまごをマントから取り出した少年はたまごのこと大事に扱ってたし、「来ちゃダメ」って言う少女はそれでもついてきちゃう少年に思わず笑っちゃうし、銛の男たちから匿うシーンとかちょっと信頼関係でき始めてるし、自分たちは無なんじゃないかと虚しさを吐露する少年に少女は慰めの言葉を掛けるし、たまごを割る前に少年はじっ……と、きっと何時間も彼女とたまごについて考えていたし(多分)。

悲鳴も。
かなり悲痛な叫びだからそうっぽく聞こえるけど、あれは「少年にたまごを割られたから」じゃなくて、「たまごが割れていると気づいて」の悲鳴だと思う。
たまごは彼女にとっての希望、心の支え(でも多分、少女の成長を阻害するまやかしの希望)。
その中身が露見してそれまで縋っていたものの正体に耐えられなくて、そうしてまやかしを拠り所にしていた少女は消えて大人の女性になったのだと思う。

何にせよ、全体的に虚しさからの解放や救済の話だと思うから、そういう方向性の絶望は突っ込んでこないんじゃないかと思う。
僅かな希望と大いなる愛を以てのことだったんだと思うんよ……。



そして「解釈2回目」へ

視聴から数日。こうやってとりあえずメモとして考えを吐き出してもなお膨らむ考察(妄想)……。ヤベェ作品や……。
それらを鎮めるべく、他の方の解釈や考察の助けも借りながら、改めて自分なりの解釈をまとめました。

今回のメモよりしっかりした文章になり、自分なりのはっきりとした答えにたどり着けて大変満足しています。
もしよろしければ、2回目の解釈にもお付き合いください。

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。



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