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ストーリーに全然触れない、風立ちぬの感想

久しぶりに手嶌葵さんの「さよならの夏」(コクリコ坂から主題歌)を聴いて、「そういえば風立ちぬもよかったよな……もう一回観たいな……」と思っていたところに、たまたまツイッターで「今日の金曜ロードショーは風立ちぬだってよ!」とのつぶやきを見まして。
これは運命!とワクワクしながら、だいぶ久しぶりに金ロー観ました。

うん、すごく、よかったです(小並感)
記憶通りのよさでした。

風立ちぬといえば、NHKのプロフェッショナルだったかな……、映画製作中の宮崎監督の言葉がすごく心に残ってるんです。

序盤の大震災のシーンを担当した原画さんにダメ出ししていた言葉なんですけど、「人って大事なものは両手で持つんだよ」って言葉で。
風呂敷包みを片手でぶら下げて避難する、モブ女性に対してのダメ出しでした。

その言葉でね、ジブリ作品のプロ意識の高さをほんの少し味わったんです。すげー世界だって。
(同時に宮崎監督の「めんどくせーな」連呼も非常に心に刺さりました)

その他にも、もう言葉で説明されなくてもものすごいシーンいっぱいあって、「すげぇ……すげぇ……」って呟きながら観てました。
地震で町や線路が波打つシーンとか。道を俯瞰して空は一切見えないのに真夏の日中だとわかる光の加減とか。通り雨が急に激しさを増す様子とか……。

ほぼ全編にわたってですけど、画面内に本当に風が吹いてるのがまずすごいですよね。特に二郎が風にさらわれるパラソルを押さえつけるシーンとか好きです、風圧が絶妙にリアルで。
ジブリキャラといえば感情が高ぶるとぶわっと髪が風でなびきますけど、今作ではその手法は使われてなかった気がするな……心象よりも状況をあらわす風として徹底されてたのかもしれない……。

あとね、アップで喋るキャラクターのシーンですけど、動いてるの口だけじゃないのがびっくりしました。

普通、日本の今のアニメって、口や目など動かす必要のあるパーツだけ別で描いて、それ以外の動かない顔の輪郭なんかは止め絵一枚で処理しちゃうんですけど、多分あれ、動画一枚ごとに全部描き起こしてるなって、ちょっとゾクゾクしました。
(きちんと確認したのはテスト飛行時の二郎のシーンのみ。特別な演出だったのかもしれない)

とにかく、「これを人間が一枚一枚描いてるのか……」「そこまで見る人いないよ何そのこだわり……」って興奮しっぱなしで観てました。いやぁアニメ映画疲れる……。


それから、せっかくなのでちょっとだけお話のことも。

作品全体を通して雰囲気はごくごく静かですけど、飛行機づくりの夢でキラキラしたと思ったら震災に見舞われたり、飛行機が上手く飛ばなくて避暑地に行って落ち込んだり、そこで恋をしてちょっと元気になったり……ストーリーの細やかな起伏がちゃんとありますよね。

ジブリの作品、特にとなりのトトロとか千と千尋の神隠しとかそうなんですけど、わかりやすい山場やテンションの上がる熱い場面は無くて、そのくせ見終わった後は苦しいくらいの寂寥感に襲われるので、繰り返し見る気は起きないという意味であんまり好きじゃなかったんですが。
でも今回風立ちぬを改めて観て、なんか、ああこういうのもいいなって思えました。

っていうかジブリで熱いシーンってそもそもあまり無いかも……。ラピュタと紅の豚くらいかしら……。

あとそう、伏線とかとも無縁なのかなって勝手に思っていましたが、帽子を捕まえる演出が逆転したり、カプローニと最後に会話する場所が初めて出会った場所で、その時と同じように言って帰ってくる飛行機について話していたり、二郎の機構や機械に対する「美しい」と菜穂子に対する「綺麗」が使い分けられていたり(これはオタクの勝手な憶測)……

画作りだけじゃなくて、お話もきちんとしてるんだなぁ……流石だなジブリ……お子ちゃまだから知らなかったよ……。


あ!
あとこれは書いときたい!
黒川さんいい人すぎて大好き!!

公開当時は友人数人と映画館に見に行って、そのときは本庄イケメンで満場一致だったんですけど、今見たら黒川さんだわ……いや~~~~黒川さんだわ……!!

最初ちょっと嫌な奴に見せかけて、ぜんぜんいい人なの隠れてないですよね。ちゃんと仕事ぶり見て感心してくれてんだ……。
あと歩くたびにピョンピョン跳ねる髪が可愛い。歩幅ちいちゃいのも。

ずーっと二郎の上司でいるのも、10年以上たっても同じ職を続けてる、飛行機への情熱を燃やし続けている熱い人なんだってわかってすごく素敵。

あと奥さんが美人で気立てがいいという風に表現されてるのも嬉しい。他人の結婚の仲人で泣いてくれるのも堪らない。

いや~~~~~…………黒川さんだろ……。

何だこのオチは……。


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