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【ミュージカル】こんな時こそ王道中の王道 『SINGIN’ IN THE RAIN 』

ミュージカルを観て、こんなにスッキリとした気持ちになったのは、いったいいつ以来でしょうか。
ああ、ほんとに楽しかった。
ただ、ただ楽しかった。というわけで、楽しかった〜♪という事だけを、つらつら書いてみたいと思います。

実は『笑う男』に行く予定でした

休演引き当て率の高さは相変わらずで、観劇できた公演も、後に休演を余儀なくされたりして、もう、なんだかドキドキしすぎて、レビューを書く手が止まっておりました。

また、休演とは比べものにならならない、衝撃的出来事もあり、ミュージカルの借りはミュージカルで返す主義(?)の私も、流石に落ち込んだりもしておりました。

今年に入ってから、見る予定だった、あるいは見た公演の休演は100%です。
いや、昨年末10月以後で言うと、2公演を除き、全て。。。

そんな中、今週は、「笑う男」を楽しみにしておりました。
ちょっと、気持ちが暗めの昨今のムードにぴったりな作品と、勝手に思いまして。
また、先日、ワイルド•ホーンの新作『北斗の拳』を観に行き、やはりワイルド•ホーンの魅力を再確認したので、思わず勢いで『笑う男』を取ったのですが。。。

残念ながら、私の持っていたチケットは、休演になりました。
初日の幕が上がらないって。。
宝塚も止まり、帝劇も止まり、数日後、日生劇場も止まり、日比谷界隈で生きてるのクリエだけ?という、ミュージカルファンにとっては、呆然とする状況です。

そんな中、ふと、目に飛び込んできたのが、黄色いポスター。

そう、この公演も、実は、元々行く予定で、でも一旦は幻になってしまったやつでした。まさかね、またご縁があるとは!と思いつつ、出来心でサイトを開いたら、まだ買える!

「笑う男」のためになんとか作り出した時間を無駄にする手はない。
ミュージカルの借りはミュージカルで返す!

リセールチケットで、水かぶり席が4枚組で出てたけど、ひとりで4枚もいらないので諦め、大人しくS席をとりました。
そして、祈る(笑)
アダム、頑張って!

魅力その1:誰もが聞き覚えのある曲

もう、兎にも角にも、このミュージカルの魅力は、レミゼなどと同じく、

シンギーン インザ レイン♪

というあの曲をはじめ、どっかで聞いたことあるよねーという曲のオンパレードだと言うことです。
たぶん、人間なら、一度は、雨の日に水溜りをバチャバチャ踏みながら、『シンギーン♪』ってやった事あるばす。
ママに後から怒られるかもしれないけど、ま、やってる時は楽しいから、そんな事気にしない。
傘もくるくる回しちゃう♪

人間の動物的本能に訴えかけるレベルで、なんだか無性に愉快になるあの曲。

こちらは、オープニング当初のオリジナル音源です。
声が、若い!とか言いません。
20年前だもんね、とか言いません。

雨の日にうっかり聞いて、雨の中で踊っちゃったよ、というクレームももちろん受け付けません(笑
それくらい、音楽の持つ力って、ほんとにすごいなと思わせてくれるパワフルなミュージカルソングだと思います。

実は、この作品の楽曲は、ミュージカル用に作られたのではなく、元々存在していたポピュラーソングを転用しているものがほとんど。
アバの楽曲で有名になった『マンマ•ミーア』スタイルのミュージカルなのです。
なるほど、だから耳に残りやすいのかもしれませんね。

魅力その2:何もかもが「ほどよい」作品

「作品」には、色んな特徴があって、コメディとか、ヒューマンドラマとか、ラブロマンスとか、なんとなくジャンルも分かれるものですが、この作品には、それがありません。

いい意味でありません。

ほどよくコメディ、ほどよくラブロマンス、ほどよく成功物語、ほどよく勧善懲悪、ほどよくジェットコースターのような展開、そしてハッピーエンド。
ヒール役もいるのだけど、憎みきれない描かれ方だし、基本はみんな陽気でいい人たちばかり。

これをですね。
「中途半端」にならずに、「ほどよく」エンターテイメントにまとめているところが、この作品の真骨頂だと思います。

脚本も演出も、なにより陽気なドンを演じるアダム•クーパーの、「ほどよいチャラさ」も、ほんとにいいバランス感覚だなぁと思います。

1950年代に、映画版が制作されて、その後あちこちで舞台化されながら、今の形に落ち着いたのが20年前。
ステージに豪快に雨を降らすという難題を実現できるまでに、いったいどれだけのご苦労があったのか、年月の重みを感じずにはいられません。
それにしても、トーキー映画が作られはじめた頃のストーリーなのに、全然古臭くない。
それどころか、万人受けする珠玉のエンターテイメントに仕立ててあるのは、元々の作品や楽曲の良さに胡座をかかず、作品としての落とし所をちゃんと「ほどよい」ところに見極めてこそ、なんだろうな。。。

魅力その3:とにかく歌って踊ります

王道ミュージカルといえばですね。
歌って踊ります。

ここ大事なのでもう一度言います。

歌って踊ります!

この作品、とにかく、踊るんです。
アダム•クーパー、アラフィフの。。。とか言いませんけど、出ずっぱりで踊ります。
タップも、シアターダンスも何回も見せ場があります。
もう、なんなら、起きてる時は、常に踊ってる、くらいのイメージです(どんな人だよ笑)

言うまでもなく、この方、元はれっきとしたバレエダンサーです。
往年のダンサー然とした雰囲気ではなく、長年身体に染み付いた、「ちょいチャラ男」のイケメン俳優ちっくな、ゆる〜い雰囲気で踊ります。

手抜き、なのかもしれない。
でも、そのゆるさが、また役の雰囲気にピッタリです。上手いから、踊れるからと、ガチガチに踊らないで「ほどよく」力を抜いて踊るというアートで魅せています。

もちろん、ゆるく踊って成立するのは、ガチで踊れる人だからこそです。
誤魔化してゆるくしか踊れない人のそれとはまったく別世界の表現だと思います。

そして、さらに歌います。
ドンという役は、もう、なんなら、ずっと歌ってるか、キャシーとキスしてるかどっちかです笑

アダム•クーパーは、もともとは、バレエダンサーです。あっ、さっきも書きましたね。
陽気なイケメン俳優役ですから、めちゃめちゃ歌が上手い設定ではないけど、20年の歳月をかけて自分のモノにしてきた役ならではの味のある歌でした。

ミュージカル音楽好きとしては、やはり私の知ってる「Singin’ in the Rain」は、アダム•クーパーの声です。
オリジナル版の映画の音源より、圧倒的に耳に触れきた回数が多いんだろうなぁと改めて思いました。

とにかくですね。
ミュージカルは、歌ってなんぼ、踊ってなんぼです。
アンサンブルさんたちも、ものすごい早替えオンパレードで、じゃんじゃん踊るし、歌います。
これほどまでに、ダンスにありとあらゆる表現をさせるミュージカルは、昨今ではなかなか作られないのではないかと思います。

とにかく、歌もダンスも、つまりにつまった作品なのです。

魅力その4:ミュージカル好きならここを見よう!

ポスターにもあるように、14トンもの雨が、たった数分で舞台上に降るこの作品。
雨は奈落に溜まるので、オケピは舞台後方に設えられていますが、だとすると、えっと、えっと、気になるのが。。。

Overtureはどうなる?問題

あ、気になりませんか?そうですか。
Overture好きの私としては、真っ先に気になりました。
だって、客席の電気を落として、指揮者が挨拶して、拍手してOvertureが始まって、というのが王道じゃないですか。
でも、指揮者見えない。オケがスタンバイしてる様子が全くわからないのです。

えー?!?!

でも、予習済み音源には、Overtureが確かに存在するのです。
生オケでない公演でだけやるのか?とか、色々妄想が膨らみましたが、ありました!
ステキな演出と共に、Overtureもちゃんと演奏されました。そうきたか!
私の好きなOvertureに、また新たな作品がひとつ追加になりました。

このOvertureは、ぜひ、劇場で!

それから、うっとりと見惚れてしまったのが、女性アンサンブルのみなさまの腰高なモデルさんばりのキレキレなウォーキング。
みなさん、ガチで踊る方ばかりですから、バリバリの歩くダンサー筋サイボーグな皆様なのですが、とにかくヒールでかっこよく歩かれる。

日本人とは、元々の骨格が違うとはいえ、あの光景は、ジャパンキャストではどう転んでも作り上げられないだろうなと。
立ち居振る舞いのカッコよさ、ハマり具合というのは、やはりダンスや演技など、後から身につけるもの影響も多いでしょう。でもそれだけでなく、西洋の文化の中で育った人たちだから持っている雰囲気みたいなものの影響も少なからずありそうで、やはり海外キャストの作品を楽しむ醍醐味は、これだよな、と改めて思いました。

そして、なんといっても、気になっていたのが、

1幕の終わりで土砂降りになるステージ、2幕までにどうする?

これはほんとに気になっていて。
1幕が終わると、ステージ上に、スタッフが数人現れ、甲子園のグラウンド整備のような、スケートの製氷タイムのような、「フロア元に戻し隊」が作業を始めました。

思わず、ステージ際まで行って、しばらく様子を見る事に。
もう、この際、トイレは我慢です。
これが、見たかったんだもの!

ステージの際まで行って気づいたのですが、水捌けの関係で、ステージが少し斜めなのです。あー、これ役者さん泣かせの床です。
踊りにくいやつだ。

雨に濡れる床部分は、素材が2種類あって、1番メインの部分はおそらく乾きやすい特殊な素材でできている様子ですが、その周辺の石畳風の部分は、凸凹した素材。

どちらも、特に珍しい事はなにひとつなく、普通にタオルやゴムのワイパーで地道に拭いていきます。

最後は手作業で、凸凹の溝の中に水が残らないよう、丁寧にタオルで拭いて仕上げ。

そして、たった数十分で、すっかり元通りに。

お見事でした。

幕間も最高のエンターテイメントをありがとう!

まだまだ上演中

日本では不動の大人気作品、アダム•クーパーの『SINGIN’ IN THE RAIN 』。
ご本人が引退のご意向なのか、これがラストと言われております。
たしかに、あれはなかなか体力勝負な役柄ではあります。

まあ、そんな事を抜きにしても、この鬱陶しい世の中で、ミュージカルで、明るい気持ちになり、免疫アップを目指すなら、こんなにぴったりな作品は他に類を見ないのではないでしょうか。

耳に残る楽しい楽曲の数々、てんこ盛りのダンス、軽妙なストーリー、ポジティブで陽気なキャラクターたち、カラフルな衣装と小道具、そしてあのゲリラ豪雨(笑。

なにをとっても、どこを切り取っても、好きな要素しかない作品でした。
あー楽しかった。

ミュージカルの神様に感謝。

ステージの撮影が許されるのも海外公演の良さ

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