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【映画】《後編》『君に届け』〜人はなぜ風早春馬君に魅了されるのか

映画『君に届け』のレビュー《後編》です。

《前編》では、主に春馬君の楽しみ方(?)について書いています。
よろしかったらどうぞ。

この後編では、主に作品そのもの、描かれる人物像について書いていきたいと思います。

ケータイ禁止とハッピーエンドの安心感

『君に届け』で、気持ちが届かなくて困ってる人は、爽子と風早君だけではありません。
このストーリーは、とにかく思いが届かない人たちのお話なのです。

爽子・やのちん・ちず、ちずと真田兄弟、爽子とお父さん、くるみと風早君‥とにかく、高校生というのは、思いを届けるのが下手なのか?(解釈あってる???)

という、届かない思いだらけの物語。
爽子は、自分の事なんか誰にも理解されないと思い込んでいるけど、実は爽子の存在によって、周りが少しずつ変わっていきます。
みんな、ちゃんと思いを伝えようというマインドになっていく。

そして、届いていなかった思いが、ひとつひとつ届いていきながら、話が展開していきます。
ひとつ届くたびに、観てる方もホッとしてハッピーな気持ちになる。なんていいお話なんだ!

しかし、まさかの爽子本人は、まったくそんな事はわかっていなくて、自分自身も「伝えられない地獄」に陥って、ベソベソします。
自信がないと思いは伝えられない。だけど、伝えない事で相手を余計に傷つけてしまうジレンマ。

そのじれったい感じに一役買っているのが、
ケータイでコミュニケーションするシーンがほとんど出てこないという事かと思います。
爽子がケータイを持っていない設定なのか?という気もしますが、基本的なコミュニケーションツールは、なんと21世紀、平成の世に、直筆お手紙とFace to Face。
もう、今の時代背景だったら、ちょっと無理な設定ですが、まだこの当時ならありだったのか。。。

というわけで、みんな、面と向かって喧嘩したり、思いを伝え合ったりします。
そして、だからこそ、分かり合える。
というのが、おそらく映画版『君に届け』という作品の影のコンセプトなんじゃないかなと。そう考えると、この、演出上ケータイ禁止ルールは、すごく効果的だし、2021年から観たら、新鮮に映ります。

テキストでやりとりしないので、何かあれば結局は、直接話すんだろな、直接話せばきっと解決するだろな、と思って観てると、なんかどこか安心感があるものです。
原作を知らなくても、はじめから、この物語はハッピーエンドで終わる!と、予感させてくれる。ハッピーエンド好きとしては、安心して観られるのは、大変ありがたいかぎり。
間違いなく、幸せな気持ちになりたい時にぴったりな、癒しの映画です。

他にもいる「爽やかさん」たち

思いを届けられないで困ってる人が、爽子と風早君だけでないのと同様に、この作品の中で、爽やかなのも風早君だけではありません。

見た目の爽やかさでは劣るものの、真田君もなかなか爽やかだと思います。
丸刈り野球部はかなり昭和なキャラだけど、ちづに一筋なところも、迷える爽子にバシッとアドバイスするところも、スポーツマンらしくて、爽やか男子です。
エンドロールでは、ハートブレイクのちづを優しく支える様子も映し出されます。
この2人、絶対上手くいくよね。
お似合いのカップルです。

単細胞で、熱いハートの持ち主のちづは、本来は不良っぽい役なのでしょうが、蓮佛美沙子さんが演じた事で、原作よりはるかに魅力的なキャラになっています。
茶髪で、乱暴な言葉遣いではあるものの、どこか品があって、筋が通っていて、熱血漢で、ある意味で、爽やかさんです。
やのちんと2人で、爽子を「ピュアホワイト」とからかうシーンがありますが、ピュアさならちづも負けない気がします。
そのあたりの雰囲気は、蓮佛美沙子さんだから成せる技なんだろうなと思います。

実は、原作の漫画では、映画だと描ききれていない部分が沢山あるのですが、爽子ももっと潔くて、ある意味爽やかキャラの面もあったりします。
爽子が風早君からうけた影響については、原作の方がより細かく丁寧に描いていまして、本来であれば、そこがこの作品のキモなのですが、残念ながら、そのあたりの描き方は、映画では若干雑になっています。
まあ、2時間にするなら、そうなるよね、と納得するしかないですが、ちょっともったいないなぁと。

映画では、爽子の「貞子」的な面が演出上、面白おかしく強調されていますが、漫画の方が、より爽子の可愛らしさ、純粋さが強調されていて、個人的には原作を読んで、かなり爽子ファンになりました。
将来女の子が産まれたら、爽子って名前つけたいくらいです。
って、もう無理だけど(笑

なぜ人は風早春馬君に魅了されるのか

『君に届け』を勧めてくれた友人に、「観たよー」と報告しました。

友人は、春馬君の作品を、すべてではないけどたくさん観ていて、中でも風早君役の春馬君が1番好きだといいます。
透明感と、さらっとした、演技しているように見えない自然な演技がたまらないのだそうです。

あーなんかわかる気がする。
濃ゆい役が多い春馬君作品の中で、1番演技してないように見える作品かもしれない。
ファンが思う「爽やか好青年イメージ」の三浦春馬とも、いい感じでダブるんだろうな。
三浦春馬という人も、きっと風早君みたいな人に違いない、と。

「演じないように演じている」が故に、「三浦春馬」その人のイメージと重ねる人が多いのは、この役が大成功している証とも言えるのかもしれない。
春馬君の内面から、風早君の部分をうまーく引き出しているのは、監督さんやカメラさんの手腕も大きかったんだろうなと思います。

映画を見終わって『君に届け』の関連情報を検索してみました。すると、映画が作られる前に、漫画のファンの方々が、各所の掲示板で「実写化されるなら理想の配役は?」という話題で盛り上がっていました。

それを観ていると、風早君役には、春馬君の名前がちらちら出ているものの、数としては少ない方で。
単に、その当時、春馬君よりも人気のあった俳優さんの名前が多く出てたに過ぎないのかもしれませんが、もしかすると原作のキャラは、映画の風早君とは違うのかも?

というわけで、原作も読んでみました。

予想通り、原作の風早翔太君は、春馬君の演じた風早春馬君よりも、やや、やんちゃ風味強めなワイルド系元気男子でありながら、爽子に関してはチキンでビビりでして。
映画では、風早春馬君が、爽子の気持ちに思いを馳せて反省する場面がさくっと描かれていますが、漫画の風早翔太君は、とにかく爽子に嫌われたくない、そばにいたい、という自分の気持ち先行なのです。

でも笑うと目が三日月型になるところは同じで、風早翔太君の笑顔にホクロつけたら、ビジュアル的には、風早春馬君の出来上がり(笑)。

私は春馬君贔屓なので、もちろん、風早春馬君推しです。

人気があって明るい性格なのに、調子に乗る事はなく、気遣いの人。
クルミちゃんをふる時も誠実だし、近しい友達とはちゃんと信頼関係が築ける人間力があって、自分の気持ちに正直なところは、風早翔太君と同じなのですが、風早春馬君の方が、言葉遣いが優しめで、元気さよりもふんわりした雰囲気がやや強めな所が、やはり、ね。いいんですよ。はい。

あと、風早春馬君は、気持ち早口なんです。
春馬君、早口の傾向はもともとあるけれど、風早春馬君はかなり早口。
それが、ゆっくり話す爽子との対比で面白いんだけど、映画の最後、爽子が自分の気持ちを話し始めた時、「いいよ、ゆっくりで」と言うセリフがあります。

この「いいよ、ゆっくりで」が、痺れるんです。
その前のシーンで、「自分は爽子の気持ちを考えてあげていただろうか」と反省した風早春馬君なので、すぐにその反省を行動に移したのがこのセリフ。「君のペースに合わせるよ」と言う意味の「いいよ、ゆっくりで」。

全編に渡って早口だったのは、このセリフを生かすためで、このシーン以降のセリフは少ないのですが、早口じゃなくなるんですね。

相変わらず、細かい仕事してます。
そういう仕事が、さりげなくできる大人の役者になってるんですよね。この作品では。

そんなこんなで、身の回りにいて欲しい、けど、絶対現実にはあり得ない突き抜けた「爽やか男子・風早君」は、漫画の風早翔太君に、春馬君が演じる事で醸し出された雰囲気を持って、完成したキャラなんじゃないか、と思います。

でも、これ、話戻るけど、やはり高校1年生の男子の所業じゃないよね(笑

ハタチの春馬君が演じるから、なかなか上手くいかない恋路に焦れて、一喜一憂しながらも、落ち着いてガツガツしない風早春馬君でいられる。

それこそが、人を惹きつけて止まない、風早春馬君の魅力なんだろうと思います。

おわりに

出来上がってみたら、こんなハマり役ほかに思いつかないほど、春馬君の代表作になった『君に届け』。

たぶん春馬君は、この作品できっと周囲の予想以上の仕事をしたんじゃないかと思います。
そう見えるのは、これ以前の作品とも、これ以降の作品とも、役作りの方向性が違っているように思うから。キャラを積み重ねて作るよりは、引き算して余分なものを削ぎ落として、シンプルに魅せる事に徹したが故に、成功している気がするのです。
そういう演じ方の引き出しも持っていたのか、と思うと、春馬君の作品の中では、非常に貴重な1本だと思います。あまり、他では見れないタイプなので。

この作品に、早い段階で引き合わせてくれた友人には、本当に感謝しかありません。

好き過ぎて、文字でどれだけ書こうと、私の好き過ぎる気持ちは届かないだろうと、ずっと書かずに温めてましたが、それじゃ、この作品観た意味ないじゃない!と一念発起して、書いてみました(大袈裟!)
少しでも届いているといいなぁ。

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