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ターミネーターは聖書に始まり聖書に終わる

 ターミネーター2の副題は「審判の日」であった。私はスポーツや裁判に関連するもの以外の「審判」の使い方を知らなかったから、はじめ見たときからこの言葉の使い方には違和感を覚えていたが、それがミケランジェロの壁画『最後の審判』に拠るものであるとふと思い付いて一瞬で解決したのだった。それからターミネーターは聖書に拠っているのかもしれないと考えるようになった。現時点で、私が持っている数少ない聖書の知識からターミネーターには2つの聖書名場面に拠って描かれていることを発見した。

受胎告知

 受胎告知とはキリスト受難伝のうちの一つで、天使ガブリエルが神の子即ちキリストをお腹に授かったことを聖母マリアに通達する場面のことをいう。宗教画として頻繁に描かれ、例えばレオナルド・ダ・ヴィンチ、エル・グレゴが描いた作品がよく知られている。(図1,2)

図1 レオナルド・ダ・ヴィンチ『受胎告知』
(Wikipediaより拝借)
図2 エル・グレゴ『受胎告知』
(Wikipediaより拝借)

受胎告知は第一作目『ターミネーター』に登場する。未来から派遣されたカイル・リースがサラ・コナーに抵抗軍の指導者ジョン・コナーを将来生むことを伝えるシーンである(図3)。

図3 受胎告知

従ってこれを受胎告知の登場人物と対応させると、次のようになる。

天使ガブリエル=カイル・リース
聖母マリア=サラ・コナー
神の子キリスト=ジョン・コナー

最後の審判

 冒頭を繰り返すが、『ターミネーター2』の副題は「審判の日」である。作中でこの「審判」は未来は天国か地獄かが決まるという意味で使われている。これはまさに『最後の審判』だと言えるだろう。最後の審判は世界の終末論であり、その際にイエス(審判)が人間を天国か地獄かに分けることを言う。上述より、ジョン・コナー=イエスであることがわかったからこれを加味すると抵抗軍のリーダーが人間の未来を決めるという作品の設定に対応させることができる。また、T-800を熔鉱炉に沈める有名なラストシーンは人間が作った機械を地獄を導くものの象徴として見れば、コナー親子が神という立場で機械を地獄に落とす構図に変貌するだろう(図4)。

図4 ターミネーターが熔鉱炉に沈むシーン。
後に述べる図5と比較してほしい。絵画中央にいる聖母マリアとイエス・キリストの左右の立ち位置から、二人と地獄へ沈む者との細かい位置関係は映画と見事に同じ。それをジェームズ・キャメロン監督は明確にしている。バッチリのラストシーン。

これについても宗教画が有名であり、ミケランジェロが施したシスティーナ礼拝堂の壁画で知られる(図5)。

図5 ミケランジェロ・ブオナルローティ『最後の審判』
(Wikipediaより拝借)

おわりに

 ターミネーターは聖母マリアが神を授かり、世界が終焉するまでを描いていることがわかった。つまり、ターミネーターは聖書に始まり聖書に終わるのだ。(もっと言うと、この聖書物語にチャペックの『ロボット』や核戦争というテーマを混ぜた作品なのだ。)
 そして、ターミネーター3以降がつまらないという意見が出る理由も聖書をかじったことで何となく分かった。ターミネーター3以降は世界の終末を回避したというターミネーター2の整った終わり方にわざとケチをつけて無理やり付け足したように感じるからだ。


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