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出会うべくして出会ったトレーニングジム


数ヶ月前からトレーニングジムに通っている。信じられないかもしれないが、初期費用は0円かつ1時間毎に1,100円が貰えるトレーニングジムで、早朝7:00〜10:00までの限定オープン。私は今、手の先から足の先まで万遍なく鍛えることのできるこの超お得なジムの虜になっている。

怪しすぎるって?ふふふ、心配ご無用。このジムには別名があるのだ。その名も

ー”掃除のおねえさん”

ん?ちょっとしっくりこないな。

29歳のペーペーさんよ、この歴史ある肩書きを上手に使いこなせるとでも言うのか?生意気な。君にはそう、世界三大おねえさんのひとつ”掃除のおねえさん”の称号を授けよう。

①歌のおねえさん
②体操のおねえさん
③掃除のおねえさん
世界三大おねえさん

そう。何を隠そう私は清掃のお仕事を始めたのだ。始めた理由はただひとつ。

ー健康体を取り戻すため

彩の国さいたま県に引っ越してきて2年。なぜかこの2年、非常によく体調を崩すようになった。原因ははっきりしないが懸念事項としてずっと払拭されずにいたこと、それが”運動不足”だ。

子供の頃からずーっと運動漬けだった。高校生の時、建築家になるかディズニーのダンサーになるか本気で悩んでいたくらい体を動かすことが大好きだった私のここ数年の暮らしは、運動からかけ離れていた。体質が変わったのはこのせいなのではないか、そう考えた私は運動するきっかけを探した。

候補1:トレーニングジム
ボツ理由
・なんかめんどくさい

候補2:ランニング
ボツ理由
・長距離走嫌い(100Mハードルしか勝たん)

候補3:ダンス
ボツ理由
・目的が見つからない(目指すステージがないとモチベ上がらん)

わがまま女王、なかなか答えに辿り着かない。そんなある日のネットサーフィン中、情報の波の上でブイブイ言わせていた私の目に、とある求人情報が入る。

早朝7:00〜10:00/時給1,100円/大型ショッピングモールの清掃/シニア層活躍中

私の目は輝く。突然の出会いに胸が高鳴る。

本業に支障をきたさない時間帯、割と高い時給、3時間身体を動かし続けること必至の清掃業務、大好きなおじいちゃん達と交流できそうなシニア層厚めの職場、アパートから自転車で10分の好立地。

これだ...これこそ私が求めていた運動するきっかけ...私にぴったりのトレーニングジム...!!!

すぐに応募。有難いことにすぐに入社。1週間後、おじいちゃんおばあちゃん達とお揃いの派手な衣装を身に纏い、私は喜びの汗を流していた。久しぶりの全身筋肉痛。求めていた痛み...青春の軋み...

めでたく”脱・運動不足”の環境を手に入れた私は、他にもこんなものを手に入れた。

○普段は全く関わることができない世代との交流

○本業のデザイナー業、格段に効率アップ

健康体を取り戻しつつ、本業のMKにも良い影響が出始めたのだ。棚から美味なぼたもち。

そしてもうひとつ、最高に醜い社会の現実も知ることができた。

ショッピングモールで働く人達の、清掃員に対する明らかに軽んじられた態度である。敬意のない話し方、気分で左右される挨拶の有無。他にも細かい不愉快がたくさん。

私は驚いた。こんな目線や態度は向けられたことがない。ジムを終えた30分後には、1人のデザイナーとして大人達と真剣に顔を突き合わせている。烏滸がましくも、大学に行けば先生と呼ばれる。互いを対等に敬い合う環境では絶対に経験できないことである。

自分のこれまでの境遇に感謝しつつ、少し立ち止まって考える。自分はこれまで清掃員という職業の方にどんな態度をとっていただろうか。加害者になっていなかっただろうか。

つくづく私はラッキーガールだと思った。好んで掴みに行く経験ではない。でも知ることができてよかった。心底そう思っている。これが社会の現実なのだ。知っている人と知らない人、創り出すものは大きく違ってくるだろう。

私がモノコト設計事務所を名乗っているのには意味がある。物のデザインだけじゃなく、こういう理不尽を、世の中に蔓延る理不尽を、デザインの力でなんとかしたいからだ。事のデザイン。今はそう呼んでいる。

ーラッキー!!!

この経験はもちろんエネルギーになっている。さあどうしてやろうか。理不尽は絶対に許さない。

運動不足を解消したくて始めたことが、様々な出会いに繋がった。

Fin.
麻裕

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