見出し画像

17年間冷める事のない12歳の時の決意


もう17年も前なのか、と感じるくらいに私にとって小6は特別に濃い1年だった。だから今も結構な頻度で思い出す。ふとした考え方のルーツが、いつも小6の時の自分の体験や思いに通ずるのだ。

そんな強烈な小6で、最も衝撃的だったと言っても過言ではないこと、それが「憧れの人ランキング」だ。 

第1位 憧れの人ランキング1位
第2位 陸上で全国大会
第3位 ダンスで世界大会
第4位 視力がガタ落ち
小6衝撃的ランキング


卒業アルバムの後ろの方、クラス毎に自由に彩って良いページ群のその中に、なんでもランキングのコーナーがあった。ランキングの種類は10個くらいあっただろうか。その中のおそらく1番の目玉ランキング”あこがれの人”。

事前にアンケートが配られた。将来有名になっていそうな人は?面白い人は?などなど、子どもならではの無邪気な質問が並ぶ。
当時流行っていたプロフィール帳でその手の質問に慣れていた私はスラスラと、回答という名の無記名投票をしていく。

無邪気な質問には無邪気に答えられる。なにも悩むことなくスペースを埋めていく私。でもひとつだけ、無邪気に答えられらない質問があった。それが”あこがれの人は?”という問いだった。


....あこがれの人?


他の問いとは遥かに桁が違う難解な質問。当時の(今もだが)私にとって、あこがれの人はクラスに1人いるようなそんなレベルのものではなかった。

この世に1人いれば奇跡、それくらい真剣に吟味したい存在だった。そんな考え方を持っている12歳だから、もちろんその欄は埋められない。尊敬できる子はたくさんいたが、憧れとは違った。

尊敬は点
...何かひとつでも自分より優れていると感じる

憧れは面
...存在そのものが自分より優れていると感じる
尊敬と憧れの定義

この質問を作ったクラスメイトに嫌悪感に似た感情を抱く。このクラスに、そんな至高な存在の人間がいると、本気で思っているのか?

...なんていう12歳。強気超えてクルエラ。小6でヴィランズ。

今思えば大層理不尽に苛立ちながら、無回答のあるアンケートを返却する。

とまあ、この時のことは割と鮮明に覚えている。小学校、そう、テストで100点は当たり前のあの頃、配られた紙を無回答で返すなど、絶対にあり得ない行為だった。何がなんでも埋めなきゃいけないもの、そう思っていたのに、できなかった。初めて答えがわからなかった、そんな体験でもあったから覚えているのだろう。悪い子デビューのタトゥーのように。(事実、性格はヴィランズなのだが)

そして卒業式がやってきた。配られた卒業アルバムには例のランキングページ。手書きでかわいいページ。なるほどなるほどと読み進めていく。そしてあのランキング。私が唯一無記入で提出したあの難解な問い。1位のところには.....


1位 吉井さん


私の名前が書かれていた。

ーえ....私?

心地良さと心地悪さが同時に押し寄せる。実はあのアンケートを提出した後、真剣に考えすぎたのではないかと少しばかり悔いたのだ。

みんなの評価基準は知らない。私みたいに大真面目に答えた人はいないと思う。だからこの1位に重さはないかもしれない。だけど....40人のクラスの中で、少なくとも数人の誰かにとっては、私は憧れにふさわしいと思ってもらえたということ。その事実に、涙が出そうになった。

嬉しいとかそんな単純な感情ではなく、慈しみに対する感謝とか、なんだか経験した事のないような、複雑で柔らかくてちょっぴり冷たい感情。温度も形も色も素材も変わり続ける感情を胸に、クラスメイトの純真さと優しさが、自分の頑なな信念と対比され、誰になんと伝えたらこの気持ちが収まるのかわからない、プチパニック状態になった。

そしてこの時、私は決意した。

ー私は絶対に輝く.そして それ以上にみんなを輝かせる.ー

これは今でも最も大事にしている決意のひとつだ。みんなに貰った優しさは、無駄にしない。自信を持って私らしく生きて輝く。そしていつかその輝きを、みんなを照らす力に変える。それが私にできる唯一のお返しだと。

...

足が速い。それだけでスターになれるのが小学生だ。わかりやすい賞賛を得ることが出来ていた私は”クラスの憧れの人”として、とても書きやすかったに違いない。正直、1位になったことは驚きではなかった。なんとなく、そんな空気を感じていたから。日頃から、そんな言葉を掛けられていたから。

でもそれが、私には悔しかった。

私は足が少し速いだけ。少しラッキーなだけ。みんなと同じ。私だけが特別な存在ではない。そんな思いを幾度となくクラスメイトに伝えても、誰も相手にはしてくれなかった。謙遜だと、また称えてくれた。

その度に思った。

みんな特別で最高な存在だってことを、私が証明するから!!
わからないなら教えてあげるから!!

その場ですぐに言語化できない自分が悔しかった。価値を伝えられない自分に腹が立った。

なんだかすごい正義感を持った子なんだなと、そう思ったかもしれない。本当にそうだ。熱い。なんでも燃やせそうだ。こうやって文字にして客観的にみつめると、当の本人もそう感じる。でも、これが私。

そしてこの体験が今の私を形作っている。17年間変わらない芯のひとつだ。

自分を輝かすための努力。いつかの誰かを輝かせるための努力。それが今、MKというひとつの形になって燃えている。

Fin.
麻裕

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?