第12話 逆転の発想

李さんの親戚が実際に実践した話。その親戚のおじさんは不動産屋を営んでいて金持ち。アパート・マンションの売買や賃貸、新築マンションの建設など、不動産関連の事業は何でも手掛けているやり手ビジネスパーソンだ。そんな剃刀のように頭の切れる人なので、問題解決の方法も他の人では思い浮かばないような斬新なものが多い。ここで紹介するのは、その中の1つ。

そのおじさんが運営するものの中に、学生寮がある。男子学生用と女子学生用があるのだが、これは男子学生寮の話。学生寮の中には異性を連れ込むのを禁止しているところが多い。その理由は当然、若気の至りが行き過ぎないようにすること、行き過ぎて犯罪行為に発展しないようにすることだ。そのおじさんは将来ある若者の健全な成長ために、寮内の雰囲気、特に寮生の素行には注意を払っていた。しかしそれでも隙はできてしまうもの。ある日、寮生が彼女を連れ込むという事件が発生した。これに頭を悩ませたおじさんは解決策を考えるものの、一向に効果的な方法を考案できずにいた。そんな折だった、おじさんが奥さんからある噂話を聞いたのは。
「近所に事故物件がある。その物件には、婚約者に不倫された挙句、婚約破棄された女性がいた。その女性は自殺した。以来その物件では、自殺したその女性の霊が出現するようになった。その霊は女性の住人の元に現れ、最終的にその住人を追い出すまで苦しめる」
普通なら怖い話で終わっていたであろうその話も、おじさんにとっては天の助けに聞こえた。

翌日、おじさんは早速懇意にしている霊媒師のところへと向かった。その霊媒師はおじさんの相談を聞き、最初は驚き、当惑したそうだ。
「幽霊を、ある場所から別の場所に移したい」
それが、おじさんの相談内容だった。具体的な案は、
「近所で噂になっている事故物件に住む、その自殺した女性の幽霊を、おじさんが運営する男子学生寮に移す」
というもの。おじさんの家族は寮とは別に所有する自宅(豪邸)に住んでおり、その女性の幽霊は男性に対しては危害を加えない。つまり、寮生の男子学生が女子を連れ込んだときにその女性の幽霊が女子を追い返すことが期待できる。これにより、男子学生たちは自然と女子を連れ込めなくなるという仕掛けだ。霊媒師は逡巡した結果、おじさんの提案を受け入れることにした。

数日後、おじさんと霊媒師は件の物件へと足を運んだ。霊との交渉は、霊媒師が担当した。これを読んでいる読者の皆様の多くが、その女性の霊もおじさんの案に当惑したものと想像していると思います。それでも交渉の結果、その霊はおじさんの提案を承諾したそうです。

以来、その男子学生寮では異性を連れ込む寮生がいなくなったとのこと。今もその寮は存続しているそう。


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