小説『二つの顔』 第二章

二 – 裏から表へ

窓から差し込む暖かい陽の光、茶色やベージュを基調とした、控えめな内装、落ち着いた曲が流れる静かな空間。そこが、和葉がこの喫茶店を気に入っている理由だ。一人一人が思い思いの時間を過ごす店内で、和葉もまた、読書や勉強をし、贅沢な時間を楽しんでいた。
今日も彼女は週末をこの喫茶店「黒薔薇」で過ごし、書店で買った話題の本を楽しんでいる。彼女が聴いているのはこの前手に入れた、最新の「音楽」。贅沢なひと時に、この「音楽」はぴったりだ。音楽を聴き、本を読みながら、彼女は龍治との時間を回想していた。

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