神話と現代の境目へ(出雲旅その2)~神が死んだ場所「赤猪岩神社」
【前回までのあらすじ】
令和6年元旦に起きた震災で心に期するところがあった野郎二人。出雲を目指して旅することになった。しかし、時間は1月4日の夕方から5日の夜まで、ほぼ丸一日の28時間しかない。
「24 -TWENTY FOUR-」のように緊迫した「中国大回転」旅が今始まる。
まるで、綿あめのような濃さの霧に難渋しながらも、なんとか中国山地を超えた野郎二人。なんとか米子駅前のスーパーホテルにたどり着く。
【米子駅前スーパーホテル】
ここは大浴場・大山の湯があり、朝食付きでも安い。
遅く着いたので、地元の酒を買ってきて、早々に寝ることにする。
【神が死んだ現場・赤猪岩(あかいいわ)神社】
ホテルから車で15分程度の場所に「赤猪岩神社」が鎮座している。
ここは大己貴命(後の大国主命)が「赤い猪」(実は真っ赤に焼いた巨岩)を受け止めようとして焼き潰された場所なのだ。
なんでそんなことになってしまったのか。
【大己貴命殺神事件 前夜 「因幡の白兎」】
なんでそんなひどい目にあったのか。有名な「因幡の白兎」にその理由が語られている。
大己貴命は兄である八十神の荷物持ちとして八上比売命への求婚の旅に付き添うことになった。
途中で、皮を剥がれて赤裸となり、苦しみ泣きくウサギを目撃する。
皮を剥がれるなんて普通だったらショック状態で死んでしまう。神話のウサギとはいえ、泣くほどの苦しみだったのだろう。
なんでも隠岐の島から海を超えて気田岬まで渡りたかったウサギは、海を泳ぐワニザメに「私の一族と貴方の一族はどちらが多いか勝負しよう。並んでくれたら、上を飛びながら数えるから」と嘘の勝負を挑んだ。本気にしたワニザメは気田岬まで列になり、ウサギはその上を飛んでいった。
最後のワニザメの背中から地上に移ろうとする時に、油断したウサギは嘘だったとネタバレする。激怒したワニザメはウサギを捕らえて、皮を剥いでしまったのだ。
苦しみでのたうち回るウサギを見つけた八十神は意地悪なので、「海水で身体を洗って風に吹かれたら良い」と教える。
皮膚を失ってむき出しの状態で塩水を浴びて、風を浴びるなんて想像するだに地獄の苦しみである。嘘の代償としても可哀想すぎる。
皮を剥がれて海水でカピカピになった瀕死のウサギを見つけた大国主命は「川の水で身体を洗い、蒲の穂綿にくるまれば癒えるだろう」と治療法を教える。
蒲の穂で何故ウサギが回復するのだろうかと思われるかもしれないが、蒲の穂は白い綿が爆発的に出るのだ。(動画参照)
これをつけると、白ウサギに戻るのも納得できる。
ウサギは礼を言って、八上比売命が結婚するのは大国主命だと予言する。
この経緯を歌った童謡が「大黒様」となる。
(大己貴命は後に大国主大神となるが、これが「大黒天」と同一視され「大黒様」と呼ばれるようになった)
祖父が童謡好きで子供の頃、よく聞かされたが、神話らしいおおらかな曲調で好きな歌だ。皆さんにも聞いていただきたい。
因幡の白兎の予言は現実となり、大己貴命は八上比売命と結婚することが出来た。しかし、求婚を断られた八十神は逆恨みをして弟神を殺そうと企むのであった。
【大己貴命殺神事件 「赤い猪を受け止めろ」】
八十神は大己貴命に「これから赤い猪を山から追い立てるから、下で受け止めろ。受け止めないと殺すぞ」と脅迫する。
とんでもないパワハラである。
そして赤い猪と言いつつ、真っ赤に焼けた巨岩を投げ下ろしたのである。
受け止めた大己貴命はひとたまりもない。焼き潰れてしまったというから恐ろしい。
神が殺された現場が、この「赤猪岩神社」である。
【大国主大神御遭難地】
大己貴命は後に成長して大国主大神となる。
碑には「大国主大神御遭難地」と書かれている。
殺害現場のような表現でドキドキする。
神を焼き潰した赤猪岩は地中深くに埋められ、しめ縄がはられて封印されているという。
神話が現実にあったことなのだと感じさせる。
神話との現場と伝わるのも頷ける、神聖な空気が漂う空間だった。
そして焼けた巨岩に焼き潰されるという悲惨な死を迎えた大己貴命は、多くの手助けで蘇生することになる。
だから「神が死んだ地」でありつつ、「再生の地」となっている。
神が死に、再生した聖地、それが「赤猪岩神社」
再生の地は車で10分弱で行ける近くの「清水井」である。
では次回、神が蘇生した地「清水井」をご案内します。
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