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ドラマ『ムービング』大切な人を守るためなら怪物にもなる者たちの英雄譚

他の人にはない特殊能力を持っているからといって、幸せになれるわけでも、羨ましいと憧れられる存在になれるかも分からない。
その能力を恐れる者や自分の利益のために利用しようとする者が現れる、そうなれば、自分だけでなく大切な人にも危害が及んでしまうかもしれない。
だけど、ヒーローは絶対に屈してはいけないのだ、怪物と恐れられても、利用されそうになっても守りたいものは守り抜け。

Disney+で配信されている韓国ドラマ『ムービング』面白かった!!!
面白すぎた!!

見たいエンタメが全部詰まっていた!!!

『ムービング』は物語を通して異能力を持つ者たちの戦いや葛藤が描かれるアクションドラマ。ヒーロー作品のようなダイナミックなアクションも見どころだが韓国作品っぽいノワールな世界観のバイオレンスアクションも盛り込まれているので刺激が欲し人にも持ってこい!
さらにテーマとして恋愛、家族愛、青春、スパイ抗争、なども描かれており韓国エンタメ全部盛り。
韓国ドラマあるある、北朝鮮と南朝鮮の対立を描きがち。

どうやら韓国のウェブ漫画が原作らしい。
日本語版もあるので今読んでいる。
様々な能力者が登場してそれぞれの視点で話が語られる群像劇になっていて、現代編と過去編の2つが交錯する。
現代編では能力を持った高校生、過去編では能力を持った大人たちの話が展開される。

特にこのドラマが面白くなるのは6話からだ、6話くらいから伏線が回収され始め「あれ……このドラマもしかして大当たり!?」って興奮を抑えられなくなり、7話から話のスケールがありえないくらい広がり、そこからはもうご褒美タイム。ラスト4話の最終決戦はこれまでの話が大収束して、大円満を迎える。

現代編に登場するメインキャラクターはポスターにも登場するこの3人

割とダサいポーズだけど面白いから!

名前はキム・ボンソク、チャン・ヒス、イ・ガンフンで主人公はボンソクだ。
少しぽっちゃりとした能力者が主人公ってとにかく斬新だった。

彼は役作りのため何十キロも増量したそうだ

ボンソクは浮遊の能力を持っているがコントロールが出来ず、気持ちが昂ると、意思とは関係なしに体が浮き上がってしまう。
だから、太っているしさらに重りをつけている。
ヒロインのチャン・ヒスに恋をすることで彼女の事を想うと体が浮いてしまうという思春期の悩みを反映させた体質を持っていて純粋で可愛らしい。
母親には身の安全のために能力を使うな、知られるなと釘を刺されているため、コントロールの練習をしてこなかった。
しかし、そのせいである日ヒスの身に危険が及んだ時に自分の能力を使いこなせなかったことを後悔してしまう。
守りたい人を守れなかった、ヒーローの葛藤をストレートに描いている。

ヒスは不死身とも思える、驚異的な再生力を持っている。

めちゃくちゃ美少女

そのせいでいじめられっ子を助けようと不良集団相手に戦った際、喧嘩しても自分は傷一つつかなかったため、一方的に暴行したと学校側に勘違いをされて学校を退学させられてしまい、ボンソクのいる学校に転校してきた。
能力を持っているのに、そのせいで自分が不利益な立場に陥ってしまう、不死身ゆえのコンプレックスを持っている。
先程、ボンソクの説明の際に『ヒスの身に危険が及んだ時』と記載したが、彼女は再生能力を持っているし、ボンソクもそれを知っていた。
だけどボンソクはヒスを助けようとしたのだ、まさしくその想いこそがヒーローの証。
漫画『惑星のさみだれ』の日下部太郎を思い出さずにはいられない。
また、ヒスとボンソクの関係性は緑黄色社会の『Mela!』とすごくシンクロしていているのでドラマを見たらその曲も聞いて欲しい。

ガンフンは怪力能力を持っている。
メガネの真面目な学級院長キャラに怪力の能力を与えるとは……かなり珍しい設定だ。

彼の過去を話すと他の話もしなければならないのでドラマを見て。
実は『ヒスの身に危険が及んだ時』に彼女を助けたのがガンフンだった。しかし、そのその様子がSNSで公開され、人並み外れた能力を持った人がいるというのが世間に露わになってしまい、ここから物語のスケールが大きくなっていく。

能力を隠しながら学校生活を送る3人の物語が現代編では描かれており、アクションよりも能力に対する葛藤やボンソクとヒスの青春譚がメインになっているが、同時に話の裏では不穏な展開が進んでいる。

それがアメリカ政府による能力者抹殺計画だ。
フランクという能力者専門の殺し屋がボンソクの住む町に訪れ、次々と能力を持つ住民を葬っている。
その魔の手はついにボンソクにも襲い掛かるのだった。

能力をコントロールできないボンソクに勝ち目はない、ここでボンソクは殺されるのか……と思った矢先、その危機に立ち向かうのは驚きの人物達で、ここからストーリーはとんでもなく面白くなる。

危機に立ち向かう人物はなんとボンソクの母イ・ミヒョンとヒスの父チャン・ジュウォンの2人。
これまでボンソクやヒスが能力を持っていることを親はどう受け止めているのか、能力はどうやって授かったのかという違和感はあったが語られず、2人は子どもの成長を見守るという普通の親ポジションで登場も少なかった。

しかし、この謎は7話に突如に解消される。
親も能力者だったのだ!
そして、その能力は遺伝する!
ストーリーの捉え方を根本から変えてしまう事実が判明する。

ボンソクは母と二人暮らしで実家はとんかつ屋を営んでいる。ミヒョンの能力は五感が優れているという超感覚の持ち主、ジュウォンは彼女と同じ再生能力だ。

殺し屋のフランクはボンソクを殺すため警戒されないようにまずは客としてとんかつ屋に訪れるのだが、ミヒョンはフランクが殺し屋だと一瞬で察知する。優しい母親の顔つきはなくなり、聴覚と視覚を研ぎ澄ませフランクを警戒して息子を守ろうとするのだが、この駆け引きのシーンがとにかく最高。

ボンソクの抹消命令は上から取り消されたため、難を乗り越える。
しかし、フランクが次のターゲットとして選んだのはヒスの父親ジュウォンだった。
フランク自身も能力者であり、再生能力を持っていて、しかも殺し屋として米政府に育てられたため戦闘能力がずば抜けている。
そんな男にヒスの親父が再生能力を持っていたとしても勝てないと思うだろう。だが、肉弾戦をジュウォンが制してしまい、返り討ちにするのだ。

ジュウォンを演じたのは韓国映画『エクストリームジョブ』で麻薬捜査官リーダーを演じたリュ・スンヒョン、中年オヤジ感が堪らない。

でもドラマを見終わった時にはどんなキャラよりもかっこよく見える。

作中最強でラスボスになると思うほど絶望的な強さを誇っていたフランクを中年オヤジのジュウォンがぼこぼこにする。マジでこの展開は驚いたぜ。
そして、この展開に驚くと同時にある疑念を持ち始める。
親も能力を持っているということはその過去は壮絶なんじゃないか?

うわああああ、知りたい!

見る側がそんなフラストレーションを持つのを待っていたかのように次の回からは親を中心とした過去編が始まる。

先程のポスターとは雰囲気が全く違う

計算されたストーリー構成にただただ感服。
個人的には親の過去編の方が面白い。
ざっと紹介すると、ミヒョンやジュウォンらはかつて韓国政府の秘密行動部隊に所属していて、国の保安を目的に公安行動をしていた敏腕スパイでその活躍と政府に対する反抗が描かれる。

ミヒョンの過去編はいずれ夫となる同じ秘密行動部隊の同僚、キム・ドゥシクを上司から危険人物だと紹介されて、監視するという任務を描いている。その後、監視対象のドゥシクにハニトラを仕掛けるつもりが本当に恋をしてしまい、それから公安部隊を裏切り、2人で禁断の恋をする。

このドゥシクが浮遊能力を持っていて、ボンソクに遺伝している。

東出に似ている

ちなみにボンソクも超感覚を持っているのでまさに能力者のサラブレッドである。
ドゥシクは浮遊能力を使いこなしていて、銃を得意としているため飛行しながら銃を撃つ。
そのアクションシーンは本当にかっこいい、中二病になってしまう!
めちゃくちゃクールに飛び回るのだが、ミヒョンと初めてキスするシーンでは体が自然と浮き上がってしまったりと、ボンソクと同じ体質を持っていて、そういうピュアな演出も憎い!面白い!!
ドゥシクは行方不明になっているのだがその行方も注目して欲しい。

そして何と言ってもドラマの回で個人的に圧倒的神回だったのがジュウォンの過去編だ。
ジュウォンはドゥシクの相棒的な立ち位置で、空から華麗に攻撃するドゥシクと地上から諸突猛進な暴れっぷりを見せるジュウォンのコンビネーションが素晴らしい。

そんなジュウォンは公安部隊に入隊する前は韓国の任侠組織に入っていて、持ち前の不死身能力で刃物で刺されても鈍器で殴られても食い下がらないことから任侠界隈では『怪物』と恐れられていた。

そんなジュウォンはある日、水商売をしているジヒという女性に恋をしてしまう。ジヒが暴力団に乱暴されそうになった際、ジュウォンは怒り狂い何十人も襲い掛かる暴力団員と対峙するのだが、そのアクションシーンが本当にやばい、韓国のバイオレンスアクション最高!

敵に取り囲まれて体を掴まれても、強引に振り払い。刃物で体を刺されたら、体に刺さったその刃物を無理やり抜き取り、刺し返す。
何度ミニバンで轢かれようともとも立ち上がり、前後から車に追突されても、体がぺちゃんこになりながら運転席に座っている敵を掴み車が止まるまでぼこぼこに殴り続ける。
(このシーンは本当に衝撃的なので3回くらい見直した)

不死身の能力を持った人が傷つきながらも、肉弾戦で戦い抜くというのはストレートな戦い方だけどあまりないヒーロー像だった。
最近のマーベル作品はほぼ不死身みたいな能力を持っているくせによくわからんビームとか、衝撃波みたいなの出しすぎだったので熱くなった。

また、この回のラストは恋愛ドラマのような純情ロマンスのオチが待っていて本当に神回だった。

実はジュウォンは再生能力を持っているものの痛みは普通の人と同じで感じるため、すべての痛みを我慢して戦っていている。
根性が凄いというか完全に頭のねじが外れているのだ。

このドラマでどんなキャラクターよりも圧倒的にかっこいいんだ。
アイアンマンよりも情熱的で、キャプテンアメリカより勇敢で、ハルクよりも凶暴で、ソーよりも熱い男、それがチャン・ジュウォン。

ドラマはボンソク中心の現代編から始まり、徐々に親の過去が明らかになる過去編になっていくため、最初は能力を持った少年少女がどう未来を見つめるかという話になるのかと思いきや、実は能力が遺伝した子ども達をどのように守り、育てていったかという展開になっていく。
そして終盤では、北朝鮮が能力者を育成していて、ボンソクが通う学校へ能力者のファイルを盗むために襲撃を仕掛けてくる。
最終決戦の舞台が学校になるのだが、親と子ども、そして能力に振り回された様々な超常人物が集結するド級に熱い展開が待っている。

このドラマの悪役は純粋に悪いことをする奴らではなく、安全圏にいながら人に犠牲を強いる者が悪という描き方で、権力者が過去から現代にかけて能力者を監視して、弱みに漬け込んで利用しようとして、個人の自由よりも国の安寧のために尽くさせようとさせる。

能力者は人助けをしたくても目立ってしまえば政府から目をつけられて、人助けの方法が政府に属して利用されることでしか成しえないと気づき始める。そして、もし自分が利用されたとしても自分の愛する人や子ども達にはそうなって欲しくはない。
そんな能力者が大切な人を守るために必死に生きて、それでも時には犠牲を払って、ヒーローに、また怪物になっていったのか、その結末を刮目して見て欲しい。

久々に熱いヒーロー作品を観た気がする。
ディズニー+のヒーローコンテンツといったらマーベル作品だけど、こちらもチェックして欲しい。







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