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インド商人とダイヤモンド

こんばんは!
本日は、インドのダイヤモンドの話。
先日、日本に一時帰国の際に、機内でNetflixの「ラフ・ダイヤモンド」を視聴していた。
ベルギーのアントワープを舞台に、超正統派ユダヤ人ファミリーのさまざまな葛藤を描くクライム・ヒューマンドラマである。
超正統派ユダヤ人ということで、生活は非常に保守的、ただ彼らが従事するダイヤモンドビジネスは非常に国際的で開かれており、このコントラストが非常に面白かった。
その中で、「ダイヤモンドの首都」とも呼ばれるベルギーのアントワープで、やたらインド人ダイヤモンド業者が出てきており、びっくりした。
後ほど調べてみると、ダイヤモンドを含む宝石・宝飾品ビジネスはインドで最大の輸出品であり、一大ビジネスであることが分かった、
今回は、インドのダイヤモンドビジネスの強さとその歴史を取り上げていく。

他のメディアでは取り上げられないようなインドの「深い」ニュース記事を取り上げ、「リアルなインド」を皆さんに紹介していく。
皆さんの意見があったら、ぜひコメントで教えてほしい。


インドのダイヤモンドの歴史


インドにおけるダイヤモンド採掘の歴史は古く、紀元前4世紀まで遡ることができる。
古代インドのトラヴィダ人はダイヤモンドを護符として使った最初の人類とされている。
ダイヤモンドはインド全土に多くの産地を有しており、世界でほぼ唯一の産地であり、インドで取れたゴルコンダダイヤモンドはヨーロッパで高く評価されていた。
しかしブラジルで大規模なダイヤモンド鉱山が見つかった1726年に、国内での採掘は終焉を迎えることになった。
現代インドのダイヤモンド産業の復活は、ある偶然の出来事であった。
それがパランプーリー(Palanpuri)と呼ばれるジャイナ教徒の商人コミュニティの出現である。


ジャイナ教


ジャイナ教は、あらゆる生き物の殺傷を禁じる教えで、収穫時に虫を気づつける可能性があるため、根菜類を食べることを禁じている。
そんなジャイナ教徒は、農業に従事することができず、伝統的に商業に従事してきた。
また、相互扶助的な商業コミュニティーと家族経営を強みに、イギリスのインド植民地時代の現地エージェントとしてビジネスを拡大し、
インドではグジャラート商人と並んで金儲けがうまいと言われている。
二輪車・金融事業を軸とするバジャージ財閥、上場企業7社を配下に置くコングロマリットのビルラ財閥などが有名なジャイナ教徒が創業者の会社である。

虫を飲み込んで殺さないように口にガーゼのようなものを当てるジャイナ教徒



インド商人の繁栄


パランプーリー(Palanpuri)は、細々と研磨ダイヤモンドの輸入取引に従事していた。
彼らは、ムンバイで活動していたベルギー商人から研磨ダイヤモンドを購入する業者であった。
それからしばらくして、1960年代になると、より利益を求め、「ダイヤモンドの首都」アントワープに向かう。
しかし、アントワープのダイヤモンド取引は、ユダヤ人のコミュニティによって完全に支配されており、ユダヤ人と競争できる力もない。
そのため、ダイヤモンドダストと呼ばれる、カットや研磨が難しい割に取引額が低い、非常に小さなダイヤモンドの取引に参入することになる。
それはいわゆる「くずダイヤ」としてダイヤモンド業者からは、工業用ダイヤとして処理されるものであった。
そんな中、パランプーリーはアントワープで手に入れたダイヤモンドを、インドに送り加工を施し、またアントワープに戻し、そこからヨーロッパの都市に売るというシステムを確立する。
これは当時のダイヤモンド研磨の一大拠点であった、イスラエルのテルアビブよりも、はるかに安い賃金でダイヤモンドの加工ができたため、繁栄し始める。
また、彼らのコミュニティは、緊密な家族関係と協力を維持し、コミュニティ間での見合い結婚率が高いこともあり、多くの彼らの兄弟やいとこたちがアントワープへ行き、大規模な移民コミュニティを形成していく。


アーガイル鉱山の発見


そして、1979年のオーストラリア西部におけるアーガイル鉱山の発見され、インドのダイヤモンド研磨拠点のシフトは鮮明になっていく。
その理由は、アーガイル鉱山から得られる原石の大半は小粒な、ダイヤモンドダストであったためである。
つまり、それはパランプーリーが得意とする分野であり、インドはこのダイヤモンドを切削・研磨できる唯一の国であった。
同じころ、アメリカで低価格の大衆市場向けダイヤモンド・ジュエリーに対する需要が急速に拡大しつつあった。
この出来事を機に、インドはダイヤモンド研磨産業の一大産地へと飛躍を遂げた。


ダイヤモンド・シティー


研磨をする場所として選択されたのは、国際貿易センターであるムンバイにほど近いスーラートという街であった。
現在では、世界で流通しているダイヤモンドのうち、9割を加工しているのがインドの中心地となっており、「ダイヤモンド・シティー」と呼ばれている。
2023年には、世界最大の取引所である、スーラト・ダイヤモンド取引所を開設されるなど勢いに乗る街である。

1,004 億ドルの市場


ナチュラル ダイヤモンド評議会 (NDC) は、世界のダイヤモンド市場を 1,004 億ドルと予測しており、2024年のダイヤモンド消費量は前年比較20%増加すると予想している。
また、インドは、経済成長による潜在顧客の増加により、2024 年には世界のダイヤモンド市場の主要プレーヤーとなることが、予想される。


さいごに


今回はドラマからの切り口で、インドのダイヤモンドについて解説させてもらった。
歴史は個人的にも調べていて面白いので、好評であれば、ぜひ今後も続けていきたい。
番外であるが、ダークな空気感の中で、リアルな人間の葛藤が見えるNetflixの「ラフ・ダイヤモンド」。
宣伝ではないが、もし興味があればぜひ。

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