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104 荒れた学年は異動してきた教師に

その年の新3年生は担当教師が12人いました。4人は他校からの転任者で、1人は前年度に卒業生を送り出したばかりで2年続けて3年生を担当することになった教師です。1年生の時からの持ち上がりは半分もいません。

この学年は1年生の時から逸脱行動が多く、生活指導面の問題をたくさん抱えていました。授業崩壊も見られ、いじめも多発していました。そんな学年だったせいか、年度末の人事では学年に所属していた教師の数名が他校への異動希望を出しました。一般に他校への異動は同一校での勤務3年以上となっていますが、中には「一身上の理由により」2年で異動した人もいます。学年主任は定年退職しました。

学年を代わることを希望した教師もいます。1年の時から担任をしてきた女性教師です。通常は1年、2年と学年を持ち上がればよほどの理由がなければそのまま3年まで持ち上がります。彼女の場合も3年まで続けて担当するとだれもが思っていました。しかし、実際は違いました。彼女は1年生の担任になりました。2年間の指導ですっかり疲弊し、「このままでは病気になってしまう」と校長に訴えたようです。そしてそれが聞き入れられたのです。

彼女に対しては非難の声がありました。大変な学年を見限って別の学年に移ったという非難です。「ずるい」「身勝手」という声もありました。でも校長が承認した以上教師たちは何も言えません。彼女の代わりは他校から異動してきた同じ教科の女性教師入り、担任となりました。他にも他校に異動した教師の入れ替わりで赴任した教師が担任となり、結局クラスの半分が新たに学年に配属された教師が担任することになりました。

他校から赴任した教師たちは憤慨しました。大変な学年を押し付けられたと思った人がいても不思議はありません。こうした教師の人事は生徒や保護者の間にも不信感を生みます。現に生徒たちの中には自分たちが「見捨てられた」という不満を口にする者もいました。

異動する教師の多くは赴任先の処遇について要望を出せることが少ないです。たとえ要望を聞かれてもその通りになるとは限りません。多くの場合赴任先に一任の状態で、結果も赴任直前に知らされることが多いです。教員の異動が年度末にならないとはっきりしないですし、校内人事がうまく行われないことも少なくないからです。

他にも校務分掌や部活動の顧問なども本人の希望を聞くことなく赴任先が決めてしまうことがあります。部活動などは前の顧問が異動したあとの「穴埋め」として一方的に顧問を任されることもあります。経験したことのない剣道部の顧問をやらされて、道場に通い始めた同僚がいました。もちろん本人の意思ではありません。

人事異動の季節を迎えた今、かつて疑問に思った出来事を思い出しました。


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