オーストラリアの教育制度(概要)
オーストラリアは6つの州と1つの準州、首都直轄区(以下、州)から構成される連邦制の国で多くの権限が州にあります。教育も州の管轄です。だから州ごとに制度が違います。しかし近年はそうした州ごとの違いをできるだけ少なくてし全国的に教育の質を向上させようという動きが活発になっており、制度の共通化も進んでいます。
学校教育は5、6歳から始まります。けれども就学開始年齢の基準は州ごとに異なります。ニューサウスウェールズ州は7月31日、タスマニア州は1月1日、ビクトリア州と首都直轄区は4月30日、クイーンズランド州と西オーストラリア州と北部準州は6月30日、南オーストラリア州は5月1日です。就学開始年齢になったらすぐに入学しなければならないわけではなく入学には早過ぎると保護者が判断したら、入学を遅らせることもできます。
小学校に入学する前に1年間の就学準備教育が実施されています。義務とする州とそうでない州がありますが、就学する子どもは多く義務教育に近い状態です。名称は キンダーガーテン(キンディ)、プレパラトリー(プレップ)、 プレ・プライマリー、 レセプション、 トランジション とこれも州ごとに異なります。
学校 の7割が公立(州立)で男女共学です。 特別支援学校はありますが数は少ないです。また、日本のような工業や商業などの専門教育を行う高等学校はなく、専門教育は通常学校の中で行われています。 私立学校はカトリック系 と その他の独立学校系 があります。
小学校は6年間、中等学校(日本の中学校と高等学校を合わせたもの)は6年間の計12年間で、学年は1年生から12年生まで通して数えます。かつては小学校と中等学校の区切りが州によって異なりましたが現在は共通です。中等学校は10年生までの前期中等段階と11~12年生の後期中等段階に分かれています。10年生までが義務教育で、修了すると前期中等教育修了の資格が得られます。公立学校は高校入試がなく12年生まで無試験で進級できます。学費は無償です。後期中等教育は高等教育への準備教育という位置づけで、希望する専攻分野に合わせて科目を選択します。12年生の終わりに州統一の卒業認定試験を受け、合格すると証明書が発行されます。証明書の名称は州によって異なりますが大学に進学する場合は必ず取得しなければなりません。
就学前教育は日本と同じように幼稚園や保育所などで行われています。教育と福祉の両面を併せ持ち、仕事をしていない親でも子どもを保育所に入れることができます。日本のような待機児童の問題を耳にすることはありません。
教育制度に関する情報(連邦教育省のサイト)↓
https://www.education.gov.au/
10年ごとに全国学校教育目標が示されています。1989年のホバート宣言で示されたものが最初で、1999年のアデレード宣言、2009年のメルボルン宣言と続き、最新のものは2019年のアリススプリングス宣言で示されました。 「卓越性と公正さ」を追求し、「自信に満ちた創造的な個人、成果を収めた学習者、活動的で知識豊かなコミュニティの一員」を育成することが目標として掲げられています。
最新の学校教育目標↓
出所:file:///C:/Users/tomik/Downloads/final_-alice_springs_declaration-_17_february_2020_security_removed.pdf
カリキュラムは全国共通化されていますが、日本の学習指導要領のような「縛り」はありません。カリキュラムは、① 汎用的能力 ②教科学習領域 ③学際的優先事項の3つの要素から構成されています。
カリキュラムに関する情報は以下のサイトで↓
学校は4学期制(タスマニア州は3学期制) で学期はターム(term)と呼ばれています。授業は年齢別のクラスで行われますが 異年齢で実施されることも珍しくありません。 クラスのサイズは 平均20名 前後です。 制服は公立・私立共にほとんどの学校にあります。 日課は午前8時半頃から午後3時ころまでで、授業が終わると生徒はすぐに下校します。
履修科目は小学校は英語、数学・算数、科学、人文・社会科学、芸術、言語、保健体育、ICTの 8科目を中心に履修します。 前期中等段階はそれ以外に選択科目があります。後期中等段階教育は 進路に合わせた科目を選択して履修します。検定教科書などはなく、各学校で教員が選定した教科書が使われています。教科書を使わず自作の教材で授業が行われることも一般的です。
大学は全国に40校あります。ほとんどが公立で、私立はほんのわずかです。公立大学は予算を連邦政府が負担し、設立と運営は州政府が担うので、国立と州立の要素を兼ね備えています。
大学の多くは都市部に設置されており地方の大学は少ないです。シドニー大学やメルボルン大学のように植民地時代からの歴史を持つ伝統大学と、1980年代の高等教育改革以降につくられた新大学があります。特に8大学 (Group of Eight )と呼ばれるオーストラリア国立大学、シドニー大学、 メルボルン大学 、クイーンズランド大学、アデレード大学、 西オーストラリア大学、ニューサウスウェールズ大学、 モナシュ大学は有名です。学士号は通常3年間で取得できます。学士課程を優秀な成績で修了した人は1年間の研究コースに進み「オナーズ」という優等学位を取得することができます。大学院では修士、博士の学位の他、グラデュエートディプロマやグラデュエートサーティフィケートなど大学院レベルの資格を取得できます。
大学に入するには 州ごとの大学志願センターを通して出願し、 大学入学資格ランキング(ATAR)の得点で選抜されます。個別の入 試は実施せされません。 大学には留学生が多く在籍しています。
大学以外の高等教育機関として職業教育を行うテイフ (Technical and Further Education: TAFE)があります。テイフは州政府が管轄しています。多様な職業専門コースが設定され実社会で役立つ様々な資格を取得することができます。
TAFEの情報(NSW州の例)↓
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