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8 深まる秋に生と死を考える 

1989年の秋に俳優の松田優作さんが亡くなったとき学級通信に次のように記しました。私は彼のファンというわけでもなければ、彼が出演した映画やドラマを好んで見ていたわけでもありません。でも彼の死は私に生と死について考える時間をもたらしました。生徒の中に彼のファンはたくさんいて教室のあちこちで彼の死について話していました。

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松田優作さんが癌で亡くなりました。妻と二人の子供を残して。39歳でした。私は彼のファンというわけではありません。でも彼の死は厳粛に受け止めたいと思います。人が亡くなるのはとても悲しいことです。二度と会うことはできないのですから。みんなの中にも身近な人の死を体験した人はいるでしょう。私もここ数年で親しい人を何人か亡くしました。そして生と死について深く考えるようになりました。

子どものころ「死」は遠いところにあり自分とは関係ないことのように思っていました。でも年を重ねるにつれてだんだん「死」を意識するようになりました。それは同時に「生」を考えることでもあります。生と死はつながっているからです。

私は死後の世界があるとは考えていません。生まれ変わりというのも信じていません。死んだら無になると思っています。だから生きている現在(いま)を大切にしたいと思います。人生はたった一度きりでやり直しができないからです。「現在を一生懸命生きる」口で言うのは簡単ですが実践するのは難しいです。ともすれば楽な方に流されたり、私利私欲に走り打算的な生き方をしてみたり、つまらないことにくよくよしてみたり… 目先の欲求に振り回されて刹那的に行動してしまうということもあります。こうした生き方は決して現在をしっかり生きているとは言えません。

みんなはどんな生き方をしたいですか?満足できる生き方というのは人によって違うでしょう。どう生きるかは一人一人が考えて決めればよいと思います。平均寿命がどんどん延びている今「人はどこまで生きられるか」に目が向けられています。長生きできることは素晴らしいことですし、私もできれば元気に長生きしたいです。でも「どこまで生きるか」ということ以上に「どう生きるか」に目を向けて生活していきたいと思います。

松田さんが亡くなった数日後、島根県の病院で1歳の男の子が父親の生体肝移植を受けたそうです。小さなからだで一生懸命生きようとしている様子がニュースで伝えられました。男の子はまさに「命を懸けて」生きているのだと思います。

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