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ブータンの学校訪問 その3

2017年3月ににブータンの学校を訪問しました。その時のことを3回に分けて紹介しています。最終回はパロにある私立のヨゼリング高等学校(Yoezerling Higher Secondary School)です。

同校は2003年に小学校として創設されましたが、2009年に後期中等学校(11年生から13年生)を開校しました。前期中等学校はありません。ですから小学校を終えた生徒はいったん他の中学校に行き、そのあと同校にもどるか別の高校に行くかします。途中の学年がないのは何とも不思議な感じがします。いずれ設置するのかもしれませんが、尋ねてもはっきりした回答はありませんでした。

学校は政府からの補助金を得ていますが、私立なので生徒は学費に年間36000ヌルタム(約6万円)かかります。

学校の正門です。

訪問時の生徒数は360人で男子が170人、女子が190人でした。教員は18人です。ちなみに初等学校の児童数は260人で教員は14人でした。2010年に寄宿舎が設置され、80人の生徒が生活していました。寄宿舎の費用は年間25000ヌルタム(4万円)かかります。学費に比べると寮費は割高な気がします。

通学生はスクールバスや徒歩で登下校します。通学生用のスクールバスが何台か停まっていました。小学生の利用が多いようです。

スクールバス

校舎に向かいます。前方が教室棟。右に行くと食堂、左に行くと寄宿舎があります。

メイン校舎とグランド。

小学部校舎とグランド。

メイン校舎は窓のデザインなどにブータンの文化が感じました。

授業は年間180日あり、教育省のカリキュラムに則って行われます。文系とビジネスコースに分かれ、文系コースでは英語、ソンカ語、歴史、経済、ビジネス数学の科目を履修し、ビジネスコースでは英語、ゾンカ語、ビジネス数学、経済、経営、会計の科目を履修します。翌年(2018年)からは理系コースの導入が予定されており、英語、ゾンカ語、物理、化学、生物、数学、ICTが履修されることになっていました。

情報化への対応は必須だとのことで、2000年以降はICT技術が積極的に取り入れられています。補習授業にも力を入れ、始業前の8時から(詩行は8時45分)から毎日行われています。

経営の授業を参観しました。生徒は男女別のグループごとに着席しており、机の上には教科書や資料がたくさん置かれていました。教師は板書しながら生徒に質問を投げかけますが、生徒はよく答えます。教師が全員に確認する際は、"Yes, sir."と声を揃えて答えているのが印象的でした。教師への敬意を感じます。

校地は自然豊かで、きちんと整備されています。

参観のあと校長との懇談が応接室で行われました。壁には国王一家の写真が飾ってあり、国王夫妻訪問時の写真もありました。訪問はきわめて名誉なことのようです。

懇談で得た情報
・質の高い教育ときめ細かな指導を重視して教育活動を行っている。
・国のカリキュラムに則ってすべての授業を行っている。
・毎年国の視察がある。
・卒業後は大学や専門学校に進学する生徒もいるが、社会に出る生徒も多い。
・経済的困難を抱える生徒の中から毎年2名の枠で学費無償の生徒を選んでいる。
・インクルーシブ教育を推進しており、特別ニーズのある生徒も在籍している。
・月に2回教員カレッジから講師を招いて教員研修を実施している。
・政府の奨学金を得て卒業後は海外に留学する生徒もいる。留学先はインド、スリランカ、アメリカ、オーストラリア、マレーシア、デンマークなど。国王が直接面接して選ぶこともある。

最後に校長が「皆さんのような教育関係者が海外から視察に来られるのは大歓迎です。でも観光目的で訪問するのは固くお断りしています」と強くおっしゃっていました。興味本位で学校を訪れる観光客がいるということなのでしょうか。


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