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認知症になった海外の友

コロナ禍が起きる少し前にオーストラリアの友人を訪ねたときのことです。友人が食後に薬を飲んでいたで「何の薬?」と私が尋ねました。すると彼は「アルツハイマー病の薬だよ」と笑いながら答えました。

物忘れが多くなり始めた彼のことを妻が「認知症なのよ」と言っていたのを思い出しました。その時は冗談だと私は思っていました。

夫妻は私の20年来の友人です。生徒の研修に付き添ってオーストラリアに行ったとき、私が彼らの家にホームステイさせてもらったのがきっかけで、それ以後家族ぐるみで親しくしています。渡豪の際はいつも泊めてもらい、家族のように生活させてもらっています。野生動物の観察やアウトバックの体験、気の合う仲間とのバーベキューなども一緒に楽しみました。何があっても「ノー・ウォリーズ(No Worries)!」と言って笑顔で切り抜けます。何事もポジティブに考える彼からは前向きに生きる術をたくさん学びました。

社交的な彼は誰にでも親しく接し、手助けを必要とする人がいればさっと手を差し伸べます。私が面倒なことを頼んでも「ノー・ウォリーズ」と言って引き受けてくれます。そんな彼が自分のこともだんだんできなくなっていると聞きます。頻繁にやり取りしていたメールも最近はほとんど来くなりました。私のこともいつかわからなくなってしまうかもしれません。でも友達であることは変わりません。彼ならきっとこう言うに違いありません。「ノー・ウォリーズ!」

もうすぐ彼の誕生日です。彼にお祝いのカードを送ろうと思います。この先もずっと友だちだよという思いを込めて。


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