175 理不尽な指導は何年たっても記憶に残る。 でも...
小学校6年生の時でした。学級活動の時間に校庭のあちこちで分かれて作業活動をしていた私たちクラス全員を担任の男性教師が突然呼び集めました。そして何か話を始めました。複数の男子生徒がよくないことをしたようで、先生はそのことを全員に伝えて注意しようとしたらしいです。でも私には男子の行為がそれほど問題に思えませんでした。先生の話していることもよくわかりませんでした。「先生は何を言いたいのだろう」と思っていると、先生は全員を2列に並べて向き合うように言いました。そしてお互いの頬を「ビンタ」するように言ったのです。私は信じられませんでした。私は人にビンタされたこともなければ人をビンタしたこともありません。親からでさえされたことはありません。でもみんなは先生に言われるままにビンタし合いました。中には泣いている子もいました。私も泣きそうになりました。それほど衝撃的な出来事でした。
口頭で注意するだけでなく児童同士にビンタさせる先生の意図はいったい何だったのでしょう。それも関わった児童だけでなくクラス全員に。先生は普段は優しく生徒にも慕われていました。それまで不本意な指導はありませんでした。でもその時だけは理不尽さを強く感じました。私は先生がなぜそのようなことを私たちに強いたのか理由がわかりません、口頭注意だけでは不十分だと思ったのでしょうか。連帯責任を取らせたかったのでしょうか。自分の手を汚さず体罰を加えようとしたのでしょうか。ビンタをさせ合うことが効果的な指導だと思ったのでしょうか。私には今も不明です。
理不尽な思いは60年近くたった今も消えることがありません。でも… ふしぎなことに先生個人を恨む気持ちはあまりありません。むしろ教師の指導のあり方について考えさせてくれル貴重な体験として受け止めています。それは私が教師を経験してきたからだと思います。
そして、今改めてその時のことを振り返って思います。先生には先生なりの考えがあってしたのかもしれないと。また、先生が間違っていたとしてもそれをに対して意見を言う人間関係がなかったのかもしれないし、理不尽な指導を容認する空気が学校という組織の中にあったのかもしれないと。さらに、私自身も気づかぬうちに理不尽な指導をしていたのではないかと。