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「私学助成金」から見る私立大学の収入・先行き

今回は私立大学の収入源の一つである「私学助成金」にスポットを当ててお話ししていきます。私立大学の収入源が学生の授業料や受験料ということは想像しやすいですが、他にも収入源となるものがあります。そのうちの一つがこれからお話しする「私学助成金」です。
※正確には私学助成金の中でも経常費と施設設備費用に分かれるのですが、ここでは分かりやすくお伝えするために経常費について私学助成金とお伝えします。



①「私学助成金」とは?

まず、私学助成金とは一体なんなのか。これは日本私立学校振興・共済事業団(通称:私学事業団)という文科省管轄の特殊法人が私立大学の

①私立大学等(私立の大学・短期大学・高等専門学校)の教育研究条件の維持向上
②学生の修学上の経済的負担の軽減
③私立大学等の経営の健全性向上

のために補助金を与えますよ、というものです。その中でも、各学校における教職員数や学生数等に所定の単価を乗じて得た基準額を 教育研究条件の状況に応じ傾斜配分する「一般補助」と、教育研究に関する特色ある取組に 応じ配分する「特別補助」があります。
つまり、私立大学でも文科省管轄の法人から補助金を頂いている、ということです。

②私学助成金はどれくらい貰えるの?

さて、補助金が貰えるといってもちっぽけな額ではこんな記事は書きません。気になる私学助成金のその額ですが、以下の表をご覧ください。

これは令和3年度の私学助成金の補助額の多い順に並べられた表です。581校のうち1~44位を載せています。1位の早稲田大学でなんと”約85億円”も貰っているのです。ん~、なんて額。表を見て何となくお分かりかと思いますが、医学部のある大学が上位を占めています。これは①でも書いているように学生数や教員数だけでなく研究内容で助成額が変わってくるので、こうした研究分野だとより多くの助成金を獲得することができます。
ちなみに日本大学はこの前年に理事長が逮捕されたため、令和3年度の私学事業団からの補助金は全額カットになっています。日本大学もそれまではこのランキングの上位の常連でした。
小規模の私立大学でも数億という補助金が貰え、更には短期大学でも数千万という補助金が貰えます。一般企業でそれだけの額を稼ごうとなると、どれだけのマンパワーが必要になるのか、他業界と比べ大学はかなり恵まれた環境にあると思います。

③大学のビジネスモデルについて考える

先ほど挙げた早稲田大学ですが、学生や生徒の授業料や入学金などの納付金(学生生徒等納付金)だけで約640億円あります。恐ろしい額です。他にも寄付金や事業収入もあります。つまり、他の一般企業にとって大きな額に見える補助金も、こうした大学からしたらメインの収入ではなく、あくまで補助金といった立ち位置になります。令和3年度の補助金が全額カットされた日本大学でも、学生生徒等納付金でも大きな額になるので、正直全額カットされたからと言って経営が傾くことはありません。

大学の収入源はやはり学生の納付金です。一般企業では営業活動によって顧客を獲得して契約し売り上げをあげていきます。大学でももちろん高校訪問や合同説明会で高校に営業を仕掛けていきますが、あくまで大学のメインは学生教育だったり研究です。そうした積み重ねが大学のPRになり、生徒に選ばれる大学となっていきます。とまあある程度の大学であればゴリゴリ営業活動しなくてもどんどん受験生は増えていきます。しかし、やはり有名大学ほどどんどん新しい仕掛けをしていくものです。そうして小規模大学や遅れを取っている大学はしりすぼみになっていきます。
一般企業よりは営業面では恵まれてある程度の数は見込めますが、それでも大学間競争だったり、今の給与水準を維持するためには大学側ももっと積極的な学生確保について向き合わないといけません。

④これからの大学の収入・先行きについて

私学事業団からの補助金ですが、実は年々その助成額が減ってきています。また、少子化による18歳人口低下によって学生生徒等納付金の獲得も厳しくなっていくことが予想されます。今まではそれで良かった大学運営も、時代や社会情勢に合わせてモデルチェンジが求められてきています。
では、そんな収入について先行きの暗い大学業界に未来は無いのか?いえいえ、そんなことはありません。企業に勤めている親世代が子どもには大学には行かせたい、と言っている限りは大学の需要はあります。少し古いですが、2013年の内閣府の調査では60%以上の保護者が大学まで行ってもらいたいと思っています。

更には国も大学進学に向けて金銭的な補助(国の高等教育の修学支援新制度)を令和2年4月から始めました。
(この対応について大学職員はとても大変でした(笑))

このようにやはり少子化と言っても大学の需要はありますし、何なら大学進学率については緩やかに上昇しています(専門学校は横ばい、短期大学はとても下がっています)。結局企業が大卒の基準を持った採用をやめない限りいくらでもニーズはあるような気がします。
世の中の需要はあるので、あとは大学間で選ばれる大学になる、または需要を生み出すような大学となっていけば、今後も大学として生き残っていけるでしょう。


まとめ・おわりに

いかがでしたでしょうか?
今回は私学助成金から大学の収入や先行きについてお話してきました。元々私学助成金のお話しだけしようとしていたのですが、結局収入や先行きまで話が広がってしましました(笑)
何かと大学業界はしりすぼみだのお先真っ暗だの言われます。しかし、そんな暗い話は他の業界だっていくらだってあるし、その課題を解決するのが大学だろ、って私は言い返してやりたいです。社会の需要はあるわけですし、親世代は子供を大学に行かせたく、大学進学率は上昇している。地方の人口低下は確かに激しいが、都市部の低下率はまだゆるやか。本当にお先真っ暗になる時は、社会に求められなくなった時だと思います
今回の記事が大学職員を目指す人のためになれば幸いです。

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