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自殺と暗殺 第一話

高校の屋上で今日も牛乳を飲んでいた。入学してから毎日がこんな感じだ。誰とも関わることなく、一人で生活をしていた。昨日までは。

「久しぶり」
懐かしい声がした。振り返ると女性がいた。
「ああ、希か」
彼女は昔の同級生。最近、転校してきたばかりだ。子供らしさは抜け落ち、大人な女性へと変わっていた。その美しさとは裏腹に、寂しげな表情があった。それがより綺麗さを引き出していた。
「まだ死んでなかったんだ」
「うん」
自殺。それは昔の約束事。幼い頃から彼女とは自殺願望があった。しかし、現実では死ぬことが出来ないでいた。理由は死に対する恐怖。その一言に尽きた。
「あのさ」
「なに?」
「私、今月で消えることになったから」
「どうして?」
「暗殺されるから」
「暗殺?」
自殺ではなく、殺される。頭の中で疑問がどんどん浮かぶ。
「サイトにあったの。これを見て」
スマホの画面に情報が載っていた。「自殺の代わりに安らかな暗殺を」そんなキャッチコピーが書かれていた。しかし、住所などの情報が殆どなかった。あるのは電話番号だけだった。
「大丈夫なのか?」
「たぶん。あなたもやってみたくない」
「自分は別に……」
「逃げるの?」
「いや、ただ僕は……」
「そのままじゃあ死ぬのは無理だね」
希は呆れた表情になり、そのまま屋上を後にした。
「ダサいな、自分は……」
今の自分にムカつき、持っていた牛乳パックを握りつぶした。

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