見出し画像

妻との出会いエピソード⑤〜全ての記憶がリセットされたあの日のこと〜

「記憶がリセットされる」
これが指す意味は
最初の日記で書き記した通りですが、

彼女が話してくれたこと。
それは高校生の時、記憶が無くなった日に
自分の身に何があったのかということでした。

目が覚めた時、
自分はベッドで横になっていたそうです。

目覚めた自分の近くに
全く知らない人たちがいるけれど、
何かを繰り返し言っている。

この人たちは、誰なんだろう。
そして、何を言っているのだろう。

後日聴かされたこと。
それは、学校である出来事が自分の身に起こり
意識が戻るまでベッドで安静にしていたこと、
そして自分の近くにいた人が
「両親」という人たちで、
繰り返し言われているのが
「自分の名前」であったということでした。

その日を境に
周りにいる人たちが家族であっても、
学校の親しい友達であっても
自分にとってどういう関係の人たちなのか、
誰のことも分からなくなったそうです。

名前も、言葉の意味も、
その全てと一緒に。



そんな中、唯一自分に分かったこと。

それは、自分に会いにきた人たちが
とても悲しそうな表情をしていたり、
言葉の意味は分からないけれど、
気持ちがとても悲しくなるような
感覚がする言葉を自分に投げかけている
ということだったそうです。

何かの拍子で、記憶が元に戻るかな?

そんな一途の望みを抱いたこともあったけれど、
その記憶が元に戻ることは決してなかった。

記憶を無くす前の自分が書いてきたであろう
ノートや日記、写真…
自分のことや、友達のことが分かる
モノは手当たり次第全て見返して、
自分の周りにはどんな友達がいたのか、
どんな活動をしてきたのか、
そして、どんな過去を辿ってきたのかを
必死に頭に叩き込んだそうです。


学校のクラスメイトには
記憶が戻ったフリをして、
頭に叩き込んだ情報を手がかりに
最初は話を合わせていた。
けれど、次第に周りは自分との会話の端々に
違和感を感じるようになり、
きっと記憶がなくなる前は
親しい関係だったはずの友達も、
一人また一人と自分と距離を置くように
なっていったということでした。

この話を聴いた時、
私は何も言うことができませんでした。
ただただ、目の前の彼女が淡々と話す言葉の
一つ一つを聴いていました。
悲しい、ひどい、寂しかった、
辛かった、腹が立つ・・・
その時に感じていた彼女の気持ちに比べたら、
どの感情を表す言葉でも、
表現しきることはできない。
そんな気がしたのかもしれません。

(彼女)「まあ、そんなことがあったんだよね。
あ、これ美味しい!食べてみてよ!」

こんな壮絶な出来事があったのに
彼女は話し終えると、またニコニコしながら
目の前の料理を美味しそうに食べていました。

この屈託のない明るさはどこからくるのだろう。
彼女のことをもっと知っていきたいと
私は強く感じました。


〜つづく〜

妻の”初体験”を共に体験して、新しい物語を執筆していくために役立てたいと思います。観たことのない景色や食べたことのないグルメ、新しいモノとの出会いに活かします♪よろしくお願いします✨