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ショートショート: ジュリエット釣り

「3組の戸倉俊を知ってるな」
美咲の部屋にあがり込むと、僕は切り出した。

「同い年の従兄弟として忠告する。あのサッカー野郎には近づくな」

美咲は迷惑そうに何なのよと言う。僕は続けた。
「家は遠くてチャリで1時間かかるし、金がないからマシな服も持ってない。しかもあいつは……」

「あいつは?」
美咲が先を促した。

「お前んとこの商売敵の息子さ。隣町にスーパーができて売り上げ激減だって、叔父さん嘆いてたろ」

「パパの店の……」
うつむく美咲に畳み掛ける。
「好きになるなよ。特にあの目、あの目は絶対に見ちゃダメだ。見るな!」
    

「スーパーで母親はパートしてるけどな」
戸倉俊が首を傾げた。切れ長の目がBTSのあのメンバーに似ている。
「やっぱその目はかっけえわ」
おごらせたバーガーにかぶりついて言うと、俊が身を乗り出す。
「で、脈はあるか?」
僕は微笑む。
「カリギュラ効果だ。暗示はかけた。美咲と目が合ったら一気に釣り上げろ」
次はビッグマックな、と僕は加えた。


※たらはかにさんの企画に参加します

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