通貨スワップや為替スワップについて

スワップ取引には様々なものがあるが、今回通貨スワップや為替スワップについて考えてみる。

リーマンショック以降、これらのスワップの交換レートは内外金利差のみでは説明できなくなっており、ドルの需要が強いということを理由にクロスカレンシーベーシスと呼ばれるスプレッドがマイナスになる状況が続いている。これは以下の一般論に示すαであるが要すればドルを持つ主体はより有利に円などの通貨を獲得することができるということだ。
尚、1998年ごろは日本の金融機関のみドルの調達において追加のプレミアムを受けていた(ジャパンプレミアム)ことからαがマイナスとなっていたが、消失して以降はほぼゼロで推移していた。

需給要因としては、期末の資金需要、リスクからの逃避、銀行規制などが挙げられる。
期末の資金需要という点では期末払いの資金により活用されている通貨の需要が増えることが多い(幅広く活用されているドルやユーロの需要増など)。リスクからの退避は何らかのショックが及んだ際に逃避先となる通貨が強くなる傾向がある。これは2008年ごろのベーシス拡大要因とされている。銀行規制という理由は2010年ごろ以降の拡大要因と思われるが、金融危機以降に金融機関に課せられた自己資本規制を始めとする規制は金融機関が無限にバランスシートを使えなくなくさせている。
要すればデリバティブを使ってドルを欲しがるプレイヤーがいたとしても米金融機関が無尽蔵にドルを供給できなくなっているということでもある。

日銀の研究などでは金融政策分岐と金融規制改革の影響とも言われる。日銀が金融緩和を長年に亘り継続してきたことは周知の事実であるが、これにより日本の機関投資家にとってドル資産の投資妙味が増している状況がある。これがドル需要を増やしていると言われる原因の一つ。ただし2000年から2007年ごろまでもその前提はある一方でベーシスは0付近にあったという事実からこれだけでは正当化できない。
これに加えてやはりレバレッジ比率規制などのバランスシート制約が各金融機関のドル出し渋りを促しているという言説となっている。

加えてMMF規制もこれを後押ししている。米国においてプライムMMF(CPなども投資対象とする)からガバメントMMF(ほぼ国債のみを投資対象とする)への資金シフトもCPやCDでの資金調達を従前よりは困難にしているという指摘がある。
コロナショックを受けた規制改革がどの程度の影響を及ぼすか(短期資金市場の安定性は可能となれどMMF市場の縮小は懸念されている)。


【一般論】
通貨スワップは元本に加え、その金利についても交換する取引である。

例えばドルを持っているAさんと円を持っているBさんが通貨を交換するスワップを組むとする。
Aさんがドルを渡し、円を受け取る。Bさんは円を渡してドルを受け取る。

Aさんはドルの無リスクレートであるSOFRを受け取り、円の無リスクレートであるTONA+クロスカレンシーベーシススプレッドであるαを支払う。

円を調達した人は円のレートであるTONAを支払い、ドル調達主体はSOFRを支払うというものである。

本来的にはこれで終わりなのだがαが存在することとなる。これは足許マイナスとなっており、ドルを担保に円を調達した主体はTONAよりも安く円を調達できる様になっている。

例えば5年もののスワップではドルの調達主はSOFRを支払う一方、円の調達主はTONA−60bpsで済むといったところだ。

他方、為替スワップは元本のみを交換する取引である。
為替スワップについてはその時のスポットレートで交換し、契約満了のタイミングで先物レートで払い戻すという形になっている。

先物レートの決まり方はスポットレート×「内外金利差+α」×期間といった形である。

例えばドルを円に換える際には例えば期間を一年、ドル金利4%、円金利0%、αを0.5%とすると
1ドルを渡し、ドル円レート130円で受け取る。
一年後には124円でドルを買い戻せるといった形になる(130円×(4%+0.5%))※

ドルを担保に円を調達する人にとってはキャリーとなるし、円を担保にドルを調達する人にとってはコストとなる。

※本来的には1ドルを4%で運用することと、130円を0%で運用することを等価として計算する形だが簡略化。

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